QualcommのSnapdragon XシリーズがCopilot+ PCで示した性能は、ゲーミングハンドヘルド市場にとっても無視できないものだ。高いパフォーマンスと優れた電力効率を兼ね備えたこのチップは、携帯型ゲーム機に最適な可能性を秘めている。
特に、Acer Swift 14 AIを用いたテストでは、Steam Deckと肩を並べるほどのゲーム性能を発揮し、バッテリー駆動時でも安定したフレームレートを維持できることが確認された。
しかし、ドライバの最適化やAuto SR対応タイトルの少なさ、Microsoft Store経由でのゲームインストールの制限など、課題は山積している。このままでは、Snapdragon Xがゲーミング用途に活用される道は険しい。
だが、Steam DeckがLinuxゲーミングの環境を一変させたように、新たなSnapdragon X搭載ハンドヘルドが市場に登場すれば、Windowsベースの携帯型ゲーム機に革新をもたらす可能性がある。果たして、Microsoftや他メーカーがこの市場に挑戦する日は来るのだろうか。
Snapdragon X搭載のゲーミングハンドヘルドがもたらす新たな可能性
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Snapdragon X Plusを搭載したAcer Swift 14 AIによるゲームテストでは、Steam Deckに匹敵するパフォーマンスが確認された。特に、Windows 11のAuto SRを活用することで、CPUやGPUの負荷を抑えつつ、高いフレームレートを維持できた点が注目される。
実際に「Shadow of the Tomb Raider」や「Kingdom Come: Deliverance」などのゲームでは、Snapdragon X PlusがSteam Deckと同等のパフォーマンスを発揮し、特に軽量なタイトルではバッテリー駆動時でも安定した動作が確認された。
一方で、現時点では全てのゲームがスムーズに動作するわけではない。Snapdragon XシリーズのWindows環境における最適化が十分に進んでいないため、一部のタイトルではパフォーマンスのばらつきが見られる。
QualcommのBeta版ドライバを適用することで、「Shadow of the Tomb Raider」のフレームレートが約20FPS向上するなど、改善の余地が大きいことも明らかになった。これは、ソフトウェア側の最適化が進めば、今後さらに安定したゲーミング環境が実現できる可能性を示している。
重要なのは、Snapdragon Xシリーズが持つ省電力性能が、ゲーミングハンドヘルドにとっての大きな利点になり得る点だ。現行のWindowsベースの携帯型PCは、電力消費が激しく、バッテリー持続時間に課題を抱えている。
Snapdragon X Plusは、バッテリー駆動時でもパフォーマンスの低下が少ないという特性を持つため、携帯ゲーム機としての実用性を大きく向上させる可能性がある。これまでx86アーキテクチャが主流だったゲーミングハンドヘルド市場に、ARMベースの選択肢が加わることで、新たな技術革新が生まれるかもしれない。
Auto SRが生み出す新たなゲーム体験とその課題
Snapdragon X Plusのゲーミング性能を語る上で、Windows 11の新機能「Auto SR(Auto Super Resolution)」の存在は欠かせない。この技術は、AIを活用したアップスケーリングにより、低解像度のゲームでも高精細な映像を実現する。AMDのFidelityFX Super Resolution(FSR)やIntelのXeSSと同様の仕組みだが、MicrosoftとQualcommが共同で最適化を進めている点が特徴的である。
テストでは、Auto SR対応のゲームではSnapdragon X PlusがSteam Deckと遜色ないパフォーマンスを発揮した。しかし、現時点でAuto SRに対応しているタイトルはわずか14本と少なく、幅広いゲームで恩恵を受けるには時間がかかる可能性がある。
加えて、DX11やDX12のゲームに限定されており、Vulkanや古いAPIのゲームには対応していない。この制限が、ゲーミング用途での普及を妨げる要因の一つとなるかもしれない。
それでも、Auto SRが持つ可能性は大きい。ハードウェアの負荷を抑えつつ、グラフィックの品質を向上させる技術は、特にバッテリー駆動の携帯型デバイスには有効だ。今後、対応タイトルが増え、最適化が進めば、Snapdragon Xシリーズを搭載したゲーミングハンドヘルドの価値はさらに高まるだろう。
Steam DeckがLinuxゲーミングの環境を大きく改善したように、Auto SRの進化がWindowsハンドヘルドの可能性を広げることになるかもしれない。
Snapdragon X搭載のゲーミングハンドヘルドは現実となるか?
現状、Snapdragon Xシリーズがゲーミングハンドヘルド向けに最適化されているとは言い難い。Microsoft Storeからのゲームインストールの制限や、Xbox Game Passの一部タイトルが動作しない問題など、ARM64アーキテクチャならではの制約が存在する。しかし、それらの課題が解決されれば、新たな市場の可能性が開けるだろう。
Snapdragon X Plusの省電力性能は、既存のWindowsベースのゲーミングハンドヘルドが抱えるバッテリーの問題を解決する鍵になり得る。現在、ROG AllyやLenovo Legion GoといったWindows搭載ハンドヘルドは、AMD Z1シリーズを採用しているが、高い消費電力と発熱が課題となっている。
Snapdragon X Plusがこれらの弱点を克服できるのであれば、ゲーム用途に適したARMベースのハンドヘルドという新たな選択肢が生まれることになる。
MicrosoftがSnapdragon X搭載のゲーミングハンドヘルドを公式に開発する可能性は未知数だが、Steam Deckの成功を考えれば、市場の需要は十分にある。過去にASUSがAMD Z1を採用したように、他メーカーがSnapdragon Xを活用したデバイスを開発する可能性も考えられる。今後の技術革新次第では、Snapdragon X搭載のゲーミングハンドヘルドが、新たなトレンドとなる日が来るかもしれない。
Source:Windows Central