DynabookとNECが、最新のノートPCシリーズとしてTシリーズとLavie N16を発表した。どちらのモデルも16インチディスプレイを搭載し、注目すべきは光学ドライブを標準装備している点だ。
近年、ノートPC市場では軽量・薄型化が進み、物理メディアを再生できる機種は激減している。しかし、Dynabook Tシリーズの上位モデルではBlu-rayドライブ、Lavie N16シリーズではDVDスーパーマルチドライブを採用し、デジタルコンテンツの物理保存やディスク再生の需要に応える形となった。
2025年に入り、クラウドやストリーミングが主流となる中でのこの動きは異例とも言えるが、依然としてディスクを活用したいユーザーにとっては数少ない貴重な選択肢となるだろう。
光学ドライブを搭載する意義 なぜ今ノートPCに復活したのか

かつて主流だった光学ドライブは、近年ノートPC市場から姿を消していた。デジタル化の進展により、OSのインストールやソフトウェアの配布、映像コンテンツの視聴はダウンロードやストリーミングが中心となり、ディスクを使用する機会は減少した。そのため、メーカーは軽量化や薄型化を優先し、光学ドライブを廃止する流れが一般的となっていた。
しかし、DynabookとNECが今回のモデルに光学ドライブを搭載した背景には、依然として一定の需要が存在することが挙げられる。特にBlu-rayやDVDは、映像のコレクションを所有する層や、ネットワーク環境に左右されずにコンテンツを楽しみたい人々にとって重要なメディアだ。また、ビジネス用途でも、物理メディアによるデータアーカイブや互換性を重視するケースがある。
加えて、日本市場ではCDやDVDに親しんできたユーザー層が多く、光学ドライブの存在は購入の決め手になり得る。特に大学や研究機関などでは、過去の資料がディスクメディアで保管されていることもあり、引き続き光学ドライブを必要とする場面が少なくない。こうした要因が重なり、Dynabook TシリーズやLavie N16シリーズでは、現代的なスペックとともに光学ドライブを搭載するという選択がなされたのだ。
最新スペックとレガシー機能の融合 進化するノートPCの形
今回のDynabook TシリーズとNEC Lavie N16シリーズは、光学ドライブを備えながらも最新のハードウェアを搭載している点が特徴的だ。例えば、Dynabook T9/YとT7/Yモデルは、第13世代Intel Core i7プロセッサを採用し、高負荷な作業にも対応できる性能を持つ。一方、NECのLavie N1675/JAはAMD Ryzen 7 7735Uを搭載し、バランスの取れたパフォーマンスを提供している。
さらに、ディスプレイにはいずれも16インチWUXGA(1920×1200)の高解像度パネルを採用し、作業効率を高める工夫が施されている。アスペクト比16:10は、一般的な16:9よりも縦方向の表示領域が広く、文書作成やウェブ閲覧時の視認性が向上する。加えて、USB 3.2やThunderbolt 4などの最新インターフェースも搭載され、外部デバイスとの接続性にも優れている。
光学ドライブと最新スペックの組み合わせは、これまでのノートPCの常識を覆すものだ。従来、光学ドライブ搭載機はエントリー向けであることが多く、ハイエンドモデルでは省かれる傾向にあった。
しかし、今回のモデルは高性能なCPU、十分なメモリ容量、拡張性の高いストレージを備え、性能面でも妥協がない。これは、ノートPCにおける「レガシー機能と最新技術の共存」という新たな方向性を示しているのかもしれない。
クラウド全盛の時代に物理メディアは生き残れるのか
近年、クラウドストレージやストリーミングサービスの普及により、物理メディアの役割は変化してきた。動画や音楽はサブスクリプションで提供され、データのバックアップもオンラインで行われることが一般的になった。しかし、それでもディスクメディアには一定の強みがある。
第一に、所有権が明確である点が挙げられる。サブスクリプション型のサービスは、契約が終了すればアクセスできなくなるが、DVDやBlu-rayは手元に残り、ネット環境に左右されずに利用できる。特に映画や音楽をコレクションするユーザーにとって、所有する安心感は大きなメリットだ。
また、長期保存の観点からも物理メディアは有利だ。クラウドストレージのデータはサーバーの維持コストやサービス終了のリスクが伴うが、適切に保管されたディスクは数十年単位でのデータ保存が可能とされる。特に企業や研究機関では、特定のフォーマットで記録されたデータを保持する必要があり、光学メディアの存在意義は依然として大きい。
とはいえ、クラウドとの共存も今後の課題となるだろう。例えば、光学ドライブ搭載ノートPCが、ディスクのデータをすぐにクラウドへバックアップできる機能を強化すれば、利便性がさらに向上する可能性がある。クラウドと物理メディア、それぞれの利点を活かすことで、新たな活用の形が生まれるかもしれない。
Source:TechRadar