インテルの次世代モバイルCPU「Arrow Lake-HX」シリーズの一部である「Core Ultra 9 275HX」がGeekbenchで確認され、その詳細仕様が明らかとなった。24コア/24スレッドの構成を採用し、最大クロックは5.3GHzに到達する。これに加え、36MBのL3キャッシュと強力な内蔵グラフィックス機能を搭載し、高性能ラップトップ市場での覇権を狙う設計が特徴である。
今回のベンチマークテストは、Razer Blade 18ノートPC上で実施され、NVIDIA GeForce RTX 4090 GPUとの組み合わせが確認された。性能面では同シリーズの最上位モデルである「Core Ultra 9 285HX」に迫るスペックを持ち、次世代ゲーミングPCやクリエイター向けラップトップへの採用が期待されている。
正式発表は2025年1月に予定されており、Arrow Lake-HXシリーズが今後のモバイルプロセッサ市場にどのような影響を与えるのか注目されている。
Core Ultra 9 275HXの24コア構成と効率的な設計の狙い
Core Ultra 9 275HXは、8つのパフォーマンスコアと16の効率コアを組み合わせた24コア構成を採用している。この設計は高性能と省電力のバランスを追求したものであり、単一タスクではパフォーマンスコアが、複数タスクでは効率コアが主に活用される仕組みだ。クロック速度はベースで2.7GHz、ブースト時には最大5.3GHzに達し、次世代の高性能ラップトップに必要な処理能力を提供する。
Arrow Lake-HXシリーズではハイパースレッディングを採用していない点が特徴であり、これによりスレッド数がコア数に一致するシンプルな設計となっている。これに対しては「スレッド数の削減が特定のアプリケーションでの性能向上をもたらす可能性がある」といった見方が専門家からも出ている。一方で、この設計が広範な用途にどこまで適合するかは議論の余地があるといえる。
インテルの設計の狙いは、最新のNVIDIA GPUと組み合わせた際に最適なパフォーマンスを引き出すことにある。例えば、今回のベンチマークテストではRazer Blade 18に搭載されたGeForce RTX 4090との連携が確認されており、これはゲームやグラフィック作業において強力な相乗効果を生み出す。
内蔵グラフィックスXe-LPGとディスクリートGPUの競演
Core Ultra 9 275HXには、Xe-LPGアーキテクチャに基づいた64EUの統合グラフィックスが搭載されている。この内蔵GPUはクロックスピード2000MHzを持ち、日常的な作業や軽量なアプリケーションに適した性能を提供する設計である。しかし、真に注目すべきは、この内蔵グラフィックスがNVIDIAの最新ディスクリートGPUとの組み合わせにおいてどのように補完し合うかである。
インテルはモバイルデバイス市場での競争力を高めるため、内蔵グラフィックスとディスクリートGPUの両方が最大限活用できるアーキテクチャを追求してきた。例えば、GeForce RTX 4090とのペアリングは高負荷作業でディスクリートGPUが活躍する一方、Xe-LPGが軽負荷時に電力効率を向上させる可能性が高い。このようなハイブリッドな利用シナリオは、インテルが次世代ラップトップにおいて顧客の多様なニーズに応える姿勢を示している。
ただし、統合グラフィックスが本当に革新的といえるかは議論の余地がある。従来の世代と比較して劇的な性能向上がないことや、競合他社との直接比較が不透明な点は注意すべきだ。だが、全体としてこの設計は、未来のラップトップ環境を考慮したバランスの良いアプローチといえるだろう。
発表間近のArrow Lake-HXがもたらす市場への影響
Arrow Lake-HXシリーズは2025年1月6日に開催予定のCES 2025で正式発表される見通しである。この発表はインテルのハイエンドモバイルCPU市場における存在感を再定義する重要な場となるだろう。Core Ultra 9 275HXはその中核を成す製品の一つとして、特にゲーミングPCやクリエイター向けノートPC市場での活躍が期待されている。
市場関係者によれば、Arrow Lake-HXシリーズはAMDのRyzenシリーズやAppleのMシリーズといった競合製品に対抗するための強力な布石であるとされている。このシリーズは性能と効率の両立に注力した製品ラインアップを提供しており、特にノートPCにおいて次世代の標準となる可能性を秘めている。また、CES 2025での発表は、モバイル向けCPU市場の技術革新が新たな段階に進む契機となるだろう。
一方で、市場での成功には価格設定や製品供給能力が大きな影響を与えると考えられる。競合製品に対する優位性を確保しつつ、コストパフォーマンスの高いモデルを展開できるかが今後の課題である。インテルが今後どのような戦略を展開するのか、業界全体が注目している。