ゲーミングPCの選択において、自作か既製品のどちらを選ぶべきかは古くからの議論である。今回注目するのは、Lenovoが提供する「Legion Tower 7i」と「Legion Tower 5」という2つのモデルだ。それぞれ異なるCPUと冷却システムを搭載し、ゲーム体験に与える影響が興味深い。

この記事では、両モデルの性能や冷却効果の違いに焦点を当て、最適な選択を支援するための比較を行う。

ゲーム性能を左右するスペックの違い

Legion Tower 7iは第14世代のIntel Core i9-14900KFを搭載し、NVIDIAのRTX 4070 Ti SUPERを採用することで高いゲーミング性能を発揮する。一方で、Tower 5はAMD Ryzen 7 7700をCPUとして採用しており、同じくRTX 4070 Ti SUPERを搭載しているが、システム全体のアーキテクチャが異なるため、異なるゲーム体験を提供する。

両モデルとも32GBのDDR5メモリと1TBの高速SSDを標準搭載し、最新のゲームや作業環境でも遅延を感じさせない。Intel i9は24コアの多コア設計であるのに対し、Ryzen 7は8コアを有し、シングルスレッド性能での差異が特に1080p以下の解像度で影響する。

1440p以上の高解像度においては、GPUの影響が大きくなるため、両モデル間のCPU性能の差は顕著ではないとされる。ユーザーの求めるゲーム用途や解像度に応じた選択が求められる。価格差は約600ドルで、これは冷却システムやCPU性能の違いを反映している。

冷却システムの重要性とユーザーによる改善策

Tower 7iには水冷式の冷却システムが搭載され、効率的な温度管理が可能である。これにより、高負荷のゲーム環境でも安定した性能を維持できる。一方で、Tower 5は空冷式を採用しているため、長時間の使用で内部の温度が上昇しやすい。

筆者はTower 5の冷却性能を改善するために、Thermaltake製の120mmファンを追加で設置した。このアップグレードにより、ゲーム内のFPSが約17%向上し、温度管理も大幅に改善されたという。また、ファンの騒音もほとんど感じられず、静音性を保ちながらの性能向上が実現できた。

このように、冷却システムの違いは性能の安定性に直接影響を及ぼすため、ゲーム環境に応じた選択と適切な改善が重要となる。水冷にはメンテナンスや故障リスクが伴うため、初めてのユーザーはTower 5のような空冷システムから始めるのも一案である。

デザインと拡張性:未来のアップグレードを見据えて

両モデルとも、アルミと高品質プラスチックを用いた堅牢なシャーシを持ち、モダンなデザインが特徴的である。RGBライティングも搭載されており、「Legion Vantage」アプリで自由に設定可能である。内部設計にもこだわりが見られ、Tower 7iは液体冷却システムを搭載しているため、広い内部空間が確保されている。

一方、Tower 5はややコンパクトなデザインのため、GPUがM.2 SSDの取り付け位置を一部妨げることがあるが、基本的な拡張性は十分に備えている。どちらのモデルも将来的なアップグレードを見据え、標準的な部品が使用されているため、マザーボードやGPUの交換が容易である。

特に、Tower 7iは上部に搭載された冷却ラジエーターが効果的に熱を排出し、長時間の使用に適している。重さはややあるため、頻繁に移動させるには不向きだが、設置後の安定性は抜群である。

誰に適しているのか:用途に合わせた選択のポイント

Lenovo Legion Tower 7iは、最新のAAAゲームを最高のグラフィック設定で楽しみたいユーザーや、静音性を重視するプロフェッショナル向けのPCである。一方で、Tower 5はコストパフォーマンスを重視するゲーマーや、ある程度のカスタマイズを楽しみたいユーザーに最適な選択肢である。

筆者は、Tower 5を購入後、簡単なファンの取り付けで性能を向上させたが、初期の段階で高い冷却性能を求める場合はTower 7iが理想的だ。Tower 5の小型化されたデザインは、省スペースを求めるユーザーにも魅力的であるが、冷却性能がやや劣るため、負荷の高いゲームを長時間プレイする場合は注意が必要だ。

両モデルとも最新のWi-Fi 6Eを搭載し、ネットワーク環境の面でも安心して使用できる。予算や用途に応じたバランスの取れた選択が求められる。最終的に、ハイエンド志向のユーザーにはTower 7i、コストと性能のバランスを重視するユーザーにはTower 5がそれぞれ適しているといえる。