Nvidiaが開発中とされるARMベースのPC向けチップ「N1X」がGeekbenchに登場した。2025年の本格展開が見込まれるこのチップだが、ベンチマークスコアは予想を大きく下回るものとなった。
シングルコアスコアは1,169ポイント、マルチコアスコアは2,417ポイントと、Apple M4の数値と比較すると大幅に劣る。Nvidiaはこのチップを「ハイエンド」と位置付けているが、Geekbenchのデータでは4コア構成とされ、最終仕様とは異なる可能性がある。
また、TSMCのN3プロセスを採用し、Mediatekと提携して設計されている点も注目される。NvidiaのARM PC戦略が成功するのか、今後の動向がカギとなるだろう。
Nvidia N1XのGeekbenchスコアは本当に低いのか?試作段階の可能性

NvidiaのARMベースPC向けチップ「N1X」がGeekbenchに登場し、シングルコア1,169ポイント、マルチコア2,417ポイントという低いスコアを記録した。Apple M4のスコアがそれぞれ3,831ポイント、15,044ポイントであることを考えると、その差は歴然としている。さらに、M4 Maxを搭載したMacBookは25,000ポイントを超えるスコアを持ち、NvidiaのN1Xとは桁違いの性能差がある。
しかし、Geekbenchのリストには「4コア」との記載があり、これは「ハイエンド」CPUとしては異例の仕様である。実際、Nvidiaが2025年に投入するARM PC向けチップはハイエンドとされており、最終的な製品が4コアのみとは考えにくい。今回のスコアが試作機のものであり、最適化が進んでいない可能性が高い。
さらに、動作クロックは3.2GHzと記録されているが、電力制限やファームウェアの影響で本来の性能が発揮されていない可能性もある。ARMアーキテクチャのPC向けCPUは、最適化やドライバの調整によって大幅に性能が向上することがある。今回のスコアは現時点でのものであり、最終的なN1Xの性能とは限らない。
NvidiaのARM PC戦略はゲーミング市場に対応できるのか
NvidiaのARM PCチップがx86市場に本格参入する中、ゲーミングへの対応が大きな課題となる。AppleのMシリーズは優れたCPU性能を持つが、Mac上のゲーム環境は依然として制限が多い。Windows PC市場ではQualcommがSnapdragon XシリーズでARM化を進めているが、ゲームのエミュレーションには課題が残る。
ARMアーキテクチャのCPUでは、従来のWindows向けゲームの多くがネイティブ動作せず、x86エミュレーションが必要となる。しかし、エミュレーションにはパフォーマンスの低下が避けられず、Nvidiaがこれをどのように克服するかが鍵となる。NvidiaはGPUに関して圧倒的な強みを持つが、CPU単体でのゲーミング性能を向上させるには、ソフトウェアの最適化やゲーム開発者の協力が不可欠だ。
NvidiaがARM PC向けチップでゲーミング市場を狙うなら、CUDAやDLSSを活用したエミュレーション高速化や、ゲーム開発者向けのARMネイティブ最適化ツールの提供が求められる。また、GeForce Nowのようなクラウドゲーミングサービスとの統合によって、ゲーミングPC市場での競争力を高める可能性もある。
Mediatekとの提携が意味するもの Nvidiaは5G対応を視野に?
NvidiaのN1XおよびN1チップはTSMCのN3プロセスで製造され、Mediatekとの共同開発が進められているとされる。しかし、なぜNvidiaがMediatekと提携したのか、その狙いは明確ではない。ARMベースのチップ設計を得意とする企業は他にも存在するが、Mediatekはスマートフォン向けSoC市場で確固たる地位を築いており、特に5G通信技術に強みを持つ。
PC市場では5G対応がまだ一般的ではないが、企業向けモバイルワークステーションやビジネス用途では5Gの導入が進む可能性がある。AppleのMシリーズ搭載Macにも5Gモデルは存在せず、Snapdragon XシリーズのWindows PCも主にWi-Fiを前提としている。しかし、NvidiaがARM PC市場で差別化を図るなら、5Gモジュールの標準搭載や、クラウドゲーミング向けの最適化を視野に入れることも考えられる。
一方、MediatekがCPU設計にどこまで関与しているかは不明だ。NvidiaはGPU設計に関しては独自のノウハウを持つが、PC向けCPUの開発経験は限られている。Mediatekの技術協力がチップ全体の設計に及ぶのか、それとも通信関連のみなのかによって、N1XおよびN1の将来像は大きく変わるだろう。
Source:PC Gamer