レノボは10月15日、米国ワシントン州ベルビューで開催された年次イベント「Tech World 2024」にて、最新のハイブリッドAIポートフォリオを発表した。この新しいAIソリューション群は、個人から企業、さらには産業全体にわたり、AIの活用と投資利益の最大化を目指すものである。
今回の発表では、パブリッククラウドとプライベートクラウドを統合し、エッジからクラウドまでを結ぶハイブリッドAIが大きな焦点となった。ThinkPadの新モデルをはじめ、AI搭載の教育プラットフォームやPCアシスタント機能など、幅広いAI製品群が披露された。また、環境に配慮したサーバー向けの水冷システム「Neptune」や、アルツハイマー患者を支援するAIアバターなど、社会的価値を持つAIの可能性も提示された。
ハイブリッドAIの全貌と「Smarter AI for All」ビジョンの進化
レノボは「Tech World 2024」で「Smarter AI for All」というビジョンをさらに深化させ、ハイブリッドAIが未来の鍵となることを強調した。ハイブリッドAIとは、パブリッククラウドとプライベートクラウド、そしてエッジデバイスといった異なる環境を一体化し、さまざまな用途に対応するAI基盤を提供するものである。
このビジョンの根底には、企業や個人がAIの恩恵を最大限に享受できるよう支援するという目的がある。イベントでは、レノボのCEOであるヤン・ユアンチン氏が登壇し、AIがすでに生活やビジネスの各分野で革新をもたらしていることを示しながら、ハイブリッドAIがより高速かつ効率的に成果を出すことを強調した。
また、AIのカスタマイズとモジュール化によって、顧客の多様なニーズに迅速に対応する方針も示された。これにより、AIは単なる技術的な要素にとどまらず、人間の創造力を引き出し、非構造化データから実用的なインサイトを提供するための重要な手段として位置づけられる。
ThinkPadからクラウドまで:広がるAIデバイスとソリューション
レノボは「Tech World 2024」で、ハイブリッドAIに対応する幅広いデバイスとソリューションを発表した。特に注目を集めたのが、AI機能を搭載した新型ThinkPad X1 2-in-1 Gen 10 Aura Editionである。このラップトップは、ハイブリッドワーク環境に最適化されており、PC上でのAI支援が高度に進化していることを示している。
また、ローカルAIエージェントである「Lenovo AI Now」により、個々のPCを高度なパーソナルアシスタントとして活用することが可能となった。さらに、教育分野向けの「Lenovo Learning Zone」では、AIを活用した学習体験を提供し、学習者一人ひとりにパーソナライズされた教育を実現する。
これらのデバイスとサービスは、PCやクラウド、さらにはストレージやモバイルデバイスに至るまで、レノボが構築する多様なエコシステムの一部を成している。AIが組み込まれた製品群は、データ保護と生産性の向上を両立し、ビジネスと個人の両面での利便性を高めることが期待される。
サステナブルAIの実現へ:次世代Neptune水冷技術を導入
レノボはAI運用における持続可能性の向上を目指し、新世代の「Neptune」水冷システムを導入した。これにより、企業はデータセンターの消費電力を最大40%削減しつつ、高性能なAI運用を維持できる。この水冷システムは、エッジからクラウドまでのハイブリッドインフラを支え、レノボの次世代ThinkSystemソリューションに統合されている。
特に、AIモデルの学習や推論に必要な高負荷計算において、効率的な冷却が可能となるため、エネルギーコストを抑えながら持続的なAI活用が実現される。また、NVIDIAとのパートナーシップを通じて、最新のGPUプラットフォームであるBlackwellをサポートし、最適なAIコンピューティング環境を提供することが可能である。Neptuneは、AI運用のエネルギー効率向上と同時に、サステナビリティの目標達成に貢献する重要な技術基盤となる。
社会課題解決と共生を目指す「AI for Good」の取り組み
レノボは、「AI for Good」をテーマに、AI技術がもたらす社会的価値の拡大にも注力している。その一環として発表されたのが、アルツハイマー患者を支援するためのAIアバターである。このアバターは、実際の生活データをもとに患者に寄り添い、認知症の進行を抑えるための対話とサポートを提供する。また、運動ニューロン疾患(ALS)患者向けには、AIアバターと視線追跡技術を組み合わせた意思疎通支援システムが紹介された。
これにより、コミュニケーションが困難な人々に新たな表現の手段を提供することが可能となる。さらに、レノボはラテンアメリカ最大の心臓病院であるInCorとの共同開発によって、AIを活用した不整脈検出プラットフォームを発表した。このIoTデバイスは、リアルタイムで患者の心拍を監視し、医療現場での即時対応を可能にする。レノボの「AI for Good」は、単なる技術革新にとどまらず、社会課題の解決や人々の暮らしを豊かにするための取り組みとして展開されている。