Microsoftが広告付きの無料デスクトップ版Word、Excel、PowerPointのテストを進めていることが明らかになった。これにより、サブスクリプションや一括購入なしでOfficeアプリを利用できる可能性がある。

この無料版では、文書の作成や編集が可能だが、すべてのアプリの右側に広告が表示されるほか、数時間ごとに15秒の動画広告が再生される仕様となっている。また、ローカル保存は不可で、OneDriveを利用する必要がある点も特徴的だ。

Microsoftはこの無料版のテストを認めているが、正式リリースの計画は未定。とはいえ、サブスクリプション不要でOfficeを利用できる選択肢として、多くのユーザーにとって注目すべき動向といえる。

Microsoftが無料版Officeをテスト中 その仕様と制約とは

Microsoftは広告付きの無料デスクトップ版Word、Excel、PowerPointのテストを進めている。この無料版では、Microsoft 365のサブスクリプションなしにOfficeアプリを利用できるが、いくつかの重要な制約がある。

まず、無料版には広告が常時表示される仕様となっている。具体的には、各アプリの右側に広告バナーが配置され、さらに数時間ごとに15秒間の動画広告が再生される仕組みだ。動画広告はミュート可能だが、プレミアムサブスクリプションに加入しない限りスキップはできない。これにより、作業の集中を妨げる要素になる可能性がある。

さらに、この無料版ではローカルへの保存ができず、すべてのファイルはMicrosoftのクラウドストレージであるOneDriveに保存される仕様となる。OneDriveの無料プランでは5GBまでのストレージが提供されるが、それ以上の容量を利用する場合は有料プランへの移行が必要となる。ローカル保存を多用するユーザーにとっては大きな制約となるだろう。

また、高度な機能の利用も制限される。例えば、アドインのインストール、詳細な書式設定、音声入力機能などが使用できない。基本的な文書作成や編集は可能だが、Microsoft 365のフル機能と比べると機能面では大幅に制約がある。

Microsoft 365と無料版の違い どちらを選ぶべきか

Microsoft 365のサブスクリプションは、月額9.99ドル(約1,500円)、年間99ドル(約15,000円)と決して安くはない。一方で、Google DocsやLibreOfficeなどの無料オフィスソフトがある中で、Microsoftが無料版を提供する意義はどこにあるのか。

まず、無料版Officeの最大の利点は「サブスクリプション不要で純正Officeアプリが使えること」だ。特に、仕事や学校でExcelやPowerPointのファイルを開く必要があるユーザーにとっては、無料でアクセスできることは大きなメリットとなる。Microsoft Officeと互換性のある他社製ソフトも存在するが、レイアウトの崩れや機能制限がある場合が多く、純正のOfficeを使えることは価値が高い。

しかし、制約も無視できない。特にOneDrive限定の保存仕様は、クラウドストレージを活用するユーザーには問題ないが、ローカル保存を重視するユーザーにとっては使い勝手が悪い。また、広告の多さも気になるポイントで、特に集中して作業を行う環境では不便に感じる可能性がある。

結果として、無料版は「簡単な編集や閲覧用」としては有用だが、「本格的な業務や学習には向かない」といえる。本格的にOfficeを使うならMicrosoft 365の契約が必要になりそうだ。

Microsoftの無料版Officeは普及するのか

Microsoftが無料版のテストを行っているという事実は、同社が新たなユーザー層を取り込もうとしていることを示している。Google Docsの普及や、Microsoft 365の価格上昇に対する対策の一環とも考えられるが、実際に広く普及するかどうかは不透明だ。

広告付き無料版の導入により、Microsoftはより多くのユーザーをMicrosoft 365のエコシステムに取り込むことができるかもしれない。特に、サブスクリプションに抵抗があるユーザーや、簡単な編集作業をするだけのユーザーには一定の需要があると考えられる。ただし、広告の多さやクラウド保存の制約がネックとなり、本格的な利用者がどれほど増えるかは未知数だ。

また、Microsoftがこの無料版を正式にリリースするかどうかも現時点では決まっていない。企業向けには現行のMicrosoft 365が引き続き主力となる可能性が高く、無料版は個人向けに限られるかもしれない。もし正式リリースされたとしても、広告を排除するために最終的に有料プランへ誘導する仕組みになることも考えられる。

無料版Officeは、一定の層には歓迎される可能性があるものの、フル機能を求めるユーザーにとっては制約の多い選択肢となる。Microsoftがどのような形で正式提供するかが今後の注目ポイントとなるだろう。

Source:Tom’s Guide