AMDがRyzen CPU向けに提供するAGESA 1.2.0.2bパッチが、ゲーム性能の向上を実現することがベンチマークで確認された。特に平均フレームレートと「1% Lows」の改善が顕著で、『Cyberpunk 2077』や『Starfield』など多くのゲームでスムーズなプレイ体験を実現している。
このパッチでは、新機能「Core Tune Config」が導入され、Legacyモード設定により最大6.52%の性能向上を達成。メモリレイテンシも改善され、前回のバージョンで問題視された遅延が64nsに低下した。
性能評価には、Ryzen 7 9800X3DやRTX 4090を搭載した高性能なテスト環境が使用された。この新パッチは数日以内に公式リリース予定で、AM5マザーボードユーザーにとって大きな注目を集めている。
AGESA 1.2.0.2bの「Core Tune Config」が生む性能改善の仕組み
AMDが導入した新機能「Core Tune Config」は、従来の設定に加えて「Legacyモード」を搭載し、これが性能向上の鍵を握っている。Legacyモードは、インターコア通信やメモリレイテンシの効率化を図ることで、特に「1% Lows」と呼ばれるフレームレートの底上げに貢献している。これにより、ゲームの負荷が高い場面でもフレームドロップが軽減され、プレイの安定性が向上した。
Compusembleが公開したベンチマークデータでは、Ryzen 7 9800X3DとRTX 4090を組み合わせた環境で、『Spider-Man Remastered』や『Starfield』など複数のタイトルでの改善が確認された。この設定はシステムの基本的な動作を最適化するもので、単なるクロック数の上昇ではなく、プロセッサの全体的な効率性を高めることに成功している。
これに対して、より細かい調整が可能なことから、今後ゲーミングPCのチューニングを好むユーザー間で広く利用される可能性がある。ただし、この改善がすべてのRyzenプロセッサやAM5マザーボードで均一に適用されるかどうかは、さらなる検証が必要である。
メモリレイテンシ改善が生む実用的恩恵
AGESA 1.2.0.2bパッチでは、特にメモリレイテンシの改善が顕著で、AIDA64 Extremeを用いたテスト結果では64nsまで低下している。これは、従来のバージョンに比べ約6%の改善に相当し、ゲーム中の反応速度やロード時間の短縮につながる。
特筆すべきは、この改善がRyzen 9000シリーズの性能を最大限引き出す要因となる点である。特に、リアルタイムでのデータ処理が重要なタイトルでは、フレームレートだけでなく、全体的なゲームプレイの体感向上が見られる。このような低レイテンシ環境は、対戦ゲームや高度なAIを搭載したゲームで顕著な利点をもたらす。
一方で、今回のテスト環境におけるDDR5メモリの高性能が結果に寄与している可能性も否定できない。メモリ速度が低い構成で同様の効果が得られるかは未知数であり、幅広いハードウェア環境での実証が求められるだろう。
AGESA 1.2.0.2bが示すAMDの方向性と今後の課題
AGESA 1.2.0.2bは、AMDがユーザーのフィードバックを積極的に取り入れて改善を重ねている姿勢を象徴する成果である。特に、メモリレイテンシや「1% Lows」への対策は、単なる性能向上を超えてユーザー体験の質を重視した取り組みとして評価できる。
ただし、今回のベータ版BIOSでは特定の環境下でのみ改善が顕著である点も課題といえる。AM5マザーボード全体への最適化や、他のRyzenシリーズプロセッサでのパフォーマンス変動など、解決すべき課題は残されている。
今後、AMDがこの改善を公式リリースでさらに拡張し、幅広いユーザー層に恩恵を提供できるかが注目される。同時に、競合するIntelや他社製品に対抗する新たなアップデートや最適化も期待される。技術革新を継続するAMDの動向は、ゲーミングPC市場全体に影響を与えるだろう。