Argon40が開発を進める「Upton One」は、Raspberry Pi Compute Module 5(CM5)を搭載した新型ラップトップだ。公式フォーラムでプリント基板(PCB)の画像が公開されたほか、KickstarterページやYouTube動画も確認されており、徐々にその詳細が明らかになってきた。

Upton Oneの最大の特徴は、CM5の交換によってメモリやストレージの構成を変更できる点だ。従来のラップトップとは異なり、モジュール単位でのアップグレードが可能となる。この設計によって、ユーザーはハードウェアの進化に柔軟に対応できると考えられる。

また、GPIO(汎用入出力ピン)の活用方法も注目されており、ハードウェア制御を重視するユーザーにとって重要なポイントとなるだろう。

さらに、YouTube動画では本体デザインやインターフェースの一部が確認されている。USB Type-Cポートを3基搭載し、HDMI出力やmicroSDカードスロットも備えている点が明らかになった。冷却システムにはアルミ製のヒートパイプが採用されている可能性があり、高い放熱性能が期待できる。一方で、発売時期や価格についてはまだ公表されておらず、今後の続報が待たれる。

Raspberry Pi Compute Module 5がもたらす柔軟なアップグレードの可能性

Upton Oneは、Raspberry Pi Compute Module 5(CM5)を採用することで、ラップトップに新たなカスタマイズ性をもたらす。CM5は、メモリやeMMCストレージの構成を変更できるモジュール型の設計が特徴だ。これにより、従来のラップトップのように内部ストレージやRAMの固定仕様に縛られることなく、用途に応じた最適な構成が可能となる。

特に、Raspberry Piの開発環境やエッジコンピューティング向けの用途では、処理性能とストレージ容量のカスタマイズ性が求められる。CM5は、Compute Module 4(CM4)と比較して処理能力の向上が期待されるため、同様の用途でより快適な動作を実現できる可能性がある。

また、デュアル100ピンの高密度コネクターが継続して採用される場合、将来的にCompute Module 6へのアップグレードも視野に入るかもしれない。

このようなモジュール型の設計は、長期間の運用を想定するユーザーにとって魅力的だ。一般的なノートPCでは、プロセッサの進化に伴い買い替えが必要となるケースが多い。

しかし、Upton OneではCM5の交換だけで性能を更新できる可能性があり、長期的なコスト削減にもつながるだろう。ただし、モジュール単体の入手性や互換性の問題が課題となる可能性もあり、公式の対応がどのようになるかが注目される。

冷却機構とストレージ拡張が示唆するパフォーマンスの向上

Upton Oneの内部設計に関する情報では、冷却機構としてアルミ製のヒートパイプが採用される可能性が示唆されている。これまでのArgon40製品でもアルミ素材を用いた放熱設計が採用されており、今回も同様のアプローチが取られると考えられる。

特に、Raspberry Pi 5やCompute Module 5は発熱が大きいため、パッシブ冷却だけではなく、アクティブクーリング(冷却ファン)が搭載される可能性もある。動画内ではCM5の横に通気口のようなものが確認されており、内部の温度管理に配慮した設計になっていることが推測される。

また、ストレージに関してはM.2 NVMeスロットが搭載される可能性が高い。PCB上にNVMe用のネジ穴が映っており、通常のSATA SSDよりも高速なNVMeストレージの搭載が期待できる。これにより、OSやデータの読み書き速度が向上し、特に複数のプロセスを同時に処理する用途でのパフォーマンス向上が見込まれる。

冷却機構とストレージ拡張の両方が強化されることで、Upton Oneは一般的なRaspberry Pi搭載デバイスよりも高負荷な作業に対応できる可能性がある。例えば、プログラミングやエッジAI、ローカルサーバー用途など、一定の処理性能が求められる環境でも快適に動作する設計になっているかもしれない。

ただし、発熱の影響による性能低下(サーマルスロットリング)がどの程度抑えられるかは、今後の詳細な情報が待たれるところだ。

拡張性とインターフェースが示す新たな用途の可能性

Upton Oneのインターフェースは、一般的なラップトップと異なる特徴を持つ。左側にはUSB Type-Cが3基、USB Type-Aが1基、HDMIポートが搭載されており、映像出力やデータ転送に幅広く対応できる設計になっている。

一方、右側にはAVジャック、microSDカードスロット、Kensingtonロックポイントが配置されており、周辺機器との接続性が考慮されていることが分かる。特にmicroSDスロットは、eMMC非搭載のCM5を使用する際にストレージ拡張として重要な役割を果たすと考えられる。

また、GPIO(汎用入出力ピン)の扱いも注目ポイントの一つだ。従来のArgon40製品ではGPIOをフル活用できる設計が多かったが、Upton Oneではどのような形で実装されるのかが気になるところだ。もしラップトップとしてもGPIOが自由にアクセスできる仕様になっていれば、ハードウェア制御を行うプロジェクトや、電子工作を伴う開発環境としての利用が広がる可能性がある。

さらに、キーボードとトラックパッドの設計も興味深い。動画内では、一般的なチクレットスタイルのキーボードが確認されており、スペースバーの下には大型のトラックパッドが配置されている。特に、Windowsキーの位置にRaspberry Piのロゴがプリントされている点は、Raspberry Piデバイスとしてのアイデンティティを強調するデザインとなっている。

これらの特徴を踏まえると、Upton Oneは単なるRaspberry Piラップトップではなく、拡張性を重視した新たな開発プラットフォームとしての可能性を秘めているといえる。

特に、エンジニアや開発者向けの用途では、インターフェースの豊富さやモジュール交換によるカスタマイズ性が大きな魅力となるだろう。今後、GPIOの扱いや対応するCompute Moduleのバリエーションがどのように展開されるのかが注目される。

Source:Tom’s Hardware