ラスベガスで開催されたCES 2025にて、Lenovoの新型ノートパソコン「ThinkBook Plus Gen 6」が披露された。同機種は巻き取り可能なディスプレイを搭載し、約10秒で縦長の16.7インチ画面へと変形する。世界初の巻き取り式ディスプレイ搭載AI PCとして注目を浴び、インテルCore Ultra 7シリーズ2プロセッサや32GB RAMなど高性能スペックを搭載している。

販売価格は3,499ドル(約46万円)と高価で、英国市場での発売は未定。巻き取り機構とAI機能を備えたこの革新デバイスは、技術的進化を示すものの、対応ソフトウェア不足や縦型画面の活用性に課題が残る。価格と実用性を考慮すると、消費者が慎重な判断を求められる製品と言えるだろう。

Lenovoが提案する次世代ディスプレイ技術の真価とは

LenovoがCES 2025で披露した「ThinkBook Plus Gen 6」は、巻き取り可能なディスプレイという革新性が注目を集めた。このディスプレイは、ボタン操作やハンドジェスチャーで縦長16.7インチのポートレートモードに展開することが可能である。この技術は、デザイン性と機能性を両立させた画期的なものであり、従来のノートパソコンの枠を超える新たな利用シーンを提供する可能性を秘めている。

この巻き取り機構は、内部にモーターを搭載し、耐久性や動作精度に配慮した設計となっている。柔軟な素材を使用したディスプレイは、展開時においても均一な画面品質を保つことが可能とされているが、長期的な使用で劣化がどの程度発生するのかは未知数である。

一方で、巻き取りディスプレイは従来のディスプレイ技術と比較し、製造コストや修理の難易度が高いと考えられるため、一般市場でどれだけ受け入れられるかが課題となるだろう。

Lenovoの公式発表によれば、この技術は今後も進化を続け、より多くのプロダクトラインに展開する計画があるという。これにより、同社は他社との差別化を図り、新たな市場の可能性を模索しているとみられる。

高価格帯が示す課題と高性能スペックのジレンマ

ThinkBook Plus Gen 6の販売価格は3,499ドル(約46万円)に設定されており、この価格帯は一般消費者にとって非常に高いハードルとなる。この価格設定は、巻き取りディスプレイという革新技術や、32GB RAMや1TBストレージ、インテルCore Ultra 7シリーズ2プロセッサなどのハイエンドスペックに起因していると考えられる。こうしたスペックは、クリエイティブな作業や複雑なデータ処理を求める専門ユーザーにとって魅力的である。

しかし、このデバイスは一般消費者向けというよりも、特定のプロフェッショナル層やエンタープライズ市場に向けられている可能性が高い。さらに、価格に見合ったソフトウェアサポートが求められる中で、PhotoshopやCADソフトなどが巻き取りディスプレイをどのように活用するのかが鍵となる。一方で、縦型モードのゲームプレイには限界があることから、エンターテイメント用途には適していないとの見方もある。

この価格設定が市場に与える影響については意見が分かれる。先行者利益を狙う一部のユーザーが購入する可能性があるが、普及モデルが登場するまで大衆市場での支持は限定的と予測される。このデバイスは高価格と高性能の両立がもたらすジレンマを象徴していると言えるだろう。

ソフトウェア対応と市場での実用性が鍵を握る

巻き取りディスプレイというハードウェアの革新性に対し、ソフトウェア対応がこのデバイスの実用性を左右する重要な要素となる。MicrosoftのCoPilot AIテクノロジーを搭載している点は、ユーザーの作業効率化を目指した一歩と言えるが、具体的なアプリケーションとの連携がなければその価値は半減する。特に、クリエイティブなアプリケーションやビジネス用ツールが縦型ディスプレイに最適化されるかが重要な焦点となる。

また、ソフトウェア開発者がこの独特なディスプレイ形態に対応したアプリケーションをどの程度提供できるかが課題である。これまでにないユーザーエクスペリエンスを提供する可能性がある一方で、互換性が欠如すれば、使い勝手に影響を与え、購入者の満足度を下げるリスクがある。

Lenovoはこの問題を認識していると考えられ、開発者向けにSDK(ソフトウェア開発キット)を公開するなどの対策を講じる可能性がある。ただし、それが市場での広範な採用に繋がるかは未知数である。巻き取り式ディスプレイという先進技術が真の価値を発揮するためには、ハードとソフトのバランスが欠かせないと言える。