AMDの次世代GPU「RDNA 4」に関するパフォーマンスデータがリークされた。報じたのはテック系サイトVideocardzで、AMDの公式ブリーフィングで発表されたとされる内容を独自に入手したという。

リークによれば、RX 9070 XTは4K解像度でRX 7900 GRE比42%、RX 6900 XT比51%の性能向上を記録。さらに、レイトレーシング性能は53%向上するとされている。この情報が事実なら、RDNA 4は前世代に比べて大幅な進化を遂げる可能性が高い。

しかし、このデータには疑問点もある。特に、RX 9070 XTの比較対象がRX 7900 XTではなくRX 7900 GREである点は不可解だ。また、RX 9070とRX 9070 XTの性能差が大きすぎる点も議論を呼ぶ。これがAMDの意図的な戦略なのか、あるいはリーク情報自体に誤りがあるのかは不明だ。

公式発表は今月末に予定されており、3月初旬の販売開始が見込まれている。正式なスペックと実際のパフォーマンスがどのようなものになるのか、注目が集まっている。

RDNA 4の設計変更がもたらす影響とは GPUアーキテクチャの進化

AMDのRDNA 4は、従来のRDNA 3から大きな改良が施されているとされるが、どのような変化が性能向上につながっているのか。その鍵を握るのが、コンピュートユニット(CU)の最適化やクロック周波数の向上、メモリ帯域幅の改良などの要素だ。

特に、RX 9070 XTはRX 7900 GREよりも42%高速とされており、4K環境でのフレームレート向上が期待される。しかし、単なるCU数の増加やクロック向上だけでこの数値を達成できるのかという疑問も残る。

また、AMDは新しいRDNA 4世代でキャッシュ構造の改良を加えている可能性がある。Infinity Cacheの強化やメモリアクセスの最適化によって、特定のゲームや解像度での性能向上が実現されていると考えられる。

特に、4K解像度におけるGPU負荷は大きく、従来のRDNA 3アーキテクチャでは帯域幅の制限がボトルネックになることもあった。AMDがこの問題をどう解決しているのか、正式な技術仕様の発表が待たれる。

一方で、RDNA 4ではAI関連の処理能力がどこまで向上しているのかも気になる点だ。現在、NVIDIAはDLSS(ディープラーニングスーパーサンプリング)を強化し、AIによるアップスケーリング技術を積極的に展開している。

AMDはこれに対抗する形で、FSR(FidelityFX Super Resolution)の改良を進めているが、RDNA 4がどの程度のAI処理能力を持つのかは不明だ。仮に大幅な改良がなされていれば、競争力は大きく向上するだろう。

RX 9070 XTとRX 9070の差異 価格帯によるパフォーマンスの分断か

RX 9070 XTのリークされた性能データと比較すると、RX 9070(無印)はRX 7900 GRE比で21%の性能向上にとどまっているとされる。これはXTモデルの42%という数字と比べて半分程度の向上率であり、同じアーキテクチャを採用しているにもかかわらず、この差が生じる理由について疑問が残る。単純なクロックの違いだけでは、ここまで大きな性能差を生むとは考えにくい。

考えられる可能性の一つとして、AMDが意図的にRX 9070の性能を制限しているという点がある。たとえば、メモリ帯域の制限や消費電力の最適化などにより、XTモデルとの差別化を図っている可能性がある。

近年のGPU市場では、NVIDIAもRTX 4070とRTX 4070 Tiの間に明確な性能の違いを設け、価格差を正当化している。AMDも同様の手法を取ることで、ハイエンドとミドルレンジの製品ラインを明確に分けようとしているのかもしれない。

また、RX 9070 XTがRX 7900 GREと比較されているのに対し、RX 9070がRX 7900 XTと直接比較されていない点も興味深い。これは、RX 9070 XTが実際にはRX 7900 XTに匹敵する性能を持つ可能性があり、AMDが市場における位置づけを慎重に調整しようとしているのではないかと推測できる。

AMDはこれまでも価格と性能のバランスを取るために、特定のモデルを市場に合わせて調整してきた。今回のRX 9000シリーズもその流れを踏襲しているのかもしれない。

レイトレーシングの強化とFSRの進化 NVIDIAとの差は縮まるのか

RDNA 3世代では、NVIDIAのRTXシリーズに比べてレイトレーシング性能が劣ると指摘されていたが、RDNA 4ではこの弱点が大幅に改善されている可能性がある。

リークされたデータによると、RX 9070 XTはRX 7900 GRE比で通常のレンダリング性能が37%向上しているのに対し、レイトレーシングに関しては53%もの向上を見せている。これは、AMDがRTコアの改良や、より効率的なレイトレーシングアルゴリズムを採用したことを示唆している。

AMDは以前からレイトレーシングの強化に取り組んでおり、FSR(FidelityFX Super Resolution)との組み合わせによって、実際のフレームレートを向上させるアプローチを取ってきた。特にFSR 3では、フレーム生成技術が採用され、低いフレームレートでもスムーズな映像表現が可能になっている。

RDNA 4ではこの技術がさらに最適化され、レイトレーシングの負荷を軽減しながら、実質的なパフォーマンスを向上させる戦略を取っているのかもしれない。

一方で、NVIDIAのDLSS 3.5と比較すると、AMDのレイトレーシング性能がどこまで肉薄しているのかは不明だ。NVIDIAはAIによるノイズリダクションや、専用のTensorコアを活用した超解像技術を武器にしているため、AMDが同じアプローチを取らない限り、根本的な差は埋まりにくい。

とはいえ、RDNA 4が53%の向上を果たしたという点は大きな進歩であり、レイトレーシング対応ゲームでの選択肢が広がることは間違いない。

AMDはこれまで「純粋なレンダリング性能」に重点を置いてきたが、今後の展開次第では、レイトレーシング技術にもより積極的に力を入れていく可能性がある。RX 9000シリーズが実際のゲーム環境でどのようなパフォーマンスを発揮するのか、正式なレビューが待ち遠しいところだ。

Source:PC Gamer