AMDの次世代3D V-Cache搭載プロセッサであるRyzen 9 9950X3Dおよび9900X3Dが、Geekbenchのベンチマークデータベースに登場した。今回の結果によると、特にシングルコア性能が前世代比で平均15%向上しており、Zen 5アーキテクチャの進化が確認できる。

マルチコア性能の向上幅は7%程度とやや控えめだが、全体的なパフォーマンスの底上げが期待される。AMDはこれらの新型CPUをCES 2025で正式に発表済みで、RDNA 4 GPUとの同時発売も噂されている。

Ryzen 9 9950X3Dと9900X3Dの詳細スペックと3D V-Cacheの進化

AMDが発表したRyzen 9 9950X3Dと9900X3Dは、Zen 5アーキテクチャを採用し、前世代からの大幅な性能向上を果たした。最大の特徴は、3D V-Cacheの搭載によるキャッシュ容量の増強であり、これがゲーミングや特定のワークロードにおけるパフォーマンスを大きく向上させる要因となっている。

まず、Ryzen 9 9950X3Dは16コア32スレッド構成で、合計144MBのキャッシュを搭載。これに対し、Ryzen 9 9900X3Dは12コア24スレッドで、キャッシュ合計140MBとなる。いずれもX3Dモデルの特徴である3D V-Cacheが組み込まれており、従来のL3キャッシュに追加される形で大容量化されている。

この3D V-Cacheの強化により、キャッシュ依存度の高いアプリケーションでは大幅な性能向上が期待される。特に、ゲームやデータベース処理など、大容量のキャッシュを活かせる環境で恩恵を受けやすい。しかし、マルチスレッド性能の向上幅は7%程度と抑えられており、キャッシュの増加が必ずしもすべての処理で最大の効果を発揮するわけではない点も注目すべきだろう。

また、これらの新型CPUはTDP(熱設計電力)の最適化も進められており、発熱と消費電力のバランスが取られている。AMDの従来の3D V-Cache搭載モデルでは、クロック周波数の抑制が見られたが、今回のZen 5世代ではどの程度のチューニングが施されているのかが今後の焦点となる。

ベンチマーク結果の考察 シングルコア性能向上の背景とは

Geekbenchの結果によると、Ryzen 9 9950X3Dと9900X3Dのシングルコア性能は前世代比で平均15%向上している。この数値の背景には、Zen 5アーキテクチャによるIPC(クロックあたりの命令処理数)の向上や、クロック周波数の最適化があると考えられる。

AMDはこれまで、3D V-Cache搭載モデルではクロック周波数を通常モデルよりも抑制する傾向にあった。しかし、今回のベンチマークデータを見る限り、Zen 5世代ではこれまで以上に高い動作クロックを維持しつつ、キャッシュの強みを活かせる設計になっている可能性がある。特に、シングルコア性能が重要視されるゲーム環境では、これまでのRyzen 7 7800X3Dなどと比較しても大きな進化が期待される。

一方で、マルチコア性能の向上は7%程度にとどまっている。これは、キャッシュの強化が直接的に影響するのは一部のワークロードに限られるためと考えられる。シングルコア性能の向上が顕著なのに対し、マルチスレッド処理ではそれほど大きな差が出ていない点からも、キャッシュとアーキテクチャの最適化が今回の進化の鍵となっていることがうかがえる。

加えて、Zen 5世代の改良点として、メモリレイテンシの低減やフロントエンドの強化も指摘されている。これらがシングルスレッドのパフォーマンス向上に貢献しており、結果としてゲームや日常的なアプリケーションの応答速度が向上することにつながっている。

新型X3D CPUの今後 ゲーミング性能と市場への影響

Ryzen 9 9950X3Dと9900X3Dの登場により、ゲーミング市場では再びAMDの「X3D」シリーズが注目を集めることになるだろう。過去のRyzen 7 5800X3Dや7800X3Dがゲーム用途で圧倒的な強みを見せたように、今回のZen 5世代でも同様のポジションを確立する可能性が高い。

特に、キャッシュ依存度の高いゲームタイトルでは、従来のハイエンドCPUを超えるパフォーマンスを発揮することが期待されている。例えば、FPSゲームやRTS(リアルタイムストラテジー)などでは、CPUのキャッシュが重要な役割を果たすため、これらのタイトルをプレイするユーザーにとっては最適な選択肢となるかもしれない。

また、AMDはこれらの新型X3D CPUを、RDNA 4アーキテクチャを採用した次世代GPUと同時に発表する可能性があると噂されている。これにより、AMDのエコシステム全体がさらに強化されることになり、特にハイエンドPC市場においては、AMD製CPUとGPUの組み合わせが主流となる展開も考えられる。

ただし、価格や供給状況によっては、特定のユーザー層にとっては選択肢が限られる可能性もある。特に、Ryzen 7 7800X3DのようなシングルCCD構成のモデルが登場しない場合、コストパフォーマンスを重視するユーザーにとっては、より手頃な選択肢が求められるかもしれない。

いずれにせよ、Ryzen 9 9950X3Dと9900X3Dの登場は、ゲーミングPC市場において新たなスタンダードを確立する可能性を秘めており、今後の動向に注目が集まることは間違いない。

Source:Wccftech