台湾の大手メーカーAsusは、最新のミニPC「NUC 14 Pro AI」を発表した。このモデルは、Intelの最新Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)とMicrosoftのCopilot+を搭載した初のミニPCとして注目を集めている。最上位モデルには、Intel Core Ultra 9 288Vプロセッサと32GBのLPDDR5Xメモリが搭載されており、ユーザーはM.2 2280サイズのPCIe Gen4x4 SSDを追加してストレージをカスタマイズできる。
豊富なポート構成や指紋認証センサーの搭載など、利便性とセキュリティ面でも優れた設計が施されている。価格は約1100ドル(約16万円)とされているが、正式なメーカー希望小売価格は未定である。
Asusは、この製品が軍用グレードのMIL-STD-810H規格に準拠した耐久性を備えていると主張しており、デザイン面でも洗練された印象を与える。この新しいミニPCは、コンパクトながら高性能を求めるユーザーにとって魅力的な選択肢となりそうだ。
最新Intel Core Ultra 9 288Vの実力とは ミニPCでも十分なパフォーマンスを発揮できるのか
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Asus NUC 14 Pro AIの最大の特徴の一つは、Intelの最新プロセッサ「Core Ultra 9 288V」を搭載している点だ。このプロセッサは、PコアとEコアのハイブリッド設計を採用し、さらにAI処理に特化したNPUも備えている。特にNPUは48TOPSの処理能力を持ち、Copilot+を活用したAIタスクの処理を高速化する役割を担う。
一方で、シングルスレッド性能ではMac miniのM4に劣る結果が出ており、マルチスレッド処理でも最大43%の性能差がある。CinebenchやGeekbenchのスコアを見ると、動画編集や3Dレンダリングのような負荷の高い作業ではM4の方が有利なことが分かる。
しかし、Windows環境での互換性の高さは強みであり、特にゲーム用途ではMac miniを上回る実力を持つ。Cyberpunk 2077やShadow of the Tomb Raiderのようなタイトルでも、1080p低設定で実用的なフレームレートを確保できている。
また、最新のIntel Arcグラフィックスを搭載しており、従来の統合GPUと比べて大幅に強化されている。ただし、独立したdGPUと比較すると、AAAタイトルを快適にプレイするには性能が不足する場面も多い。したがって、ゲーミングPCとしての利用を考えるなら、外部GPUを追加できるeGPUの活用を検討するのも選択肢の一つとなる。
豊富なポートと高い拡張性が魅力 ストレージの自由度と設置環境への適応力
Asus NUC 14 Pro AIのもう一つの大きな特徴は、充実したポートと拡張性の高さにある。特にThunderbolt 4を2基搭載しており、外部ディスプレイや高速ストレージとの接続が容易に行える点が大きな強みだ。さらに、USB-A(10Gbps)が背面に2つ、前面にはUSB-A(5Gbps)が2つと、一般的な周辺機器との接続にも困らない設計になっている。
また、HDMI 2.1とDisplayPort 2.1(Thunderbolt経由)にも対応しているため、4Kや8Kモニターへの出力も可能だ。特にクリエイティブ用途で複数のモニターを活用する場合、この拡張性の高さは大きなメリットとなる。一方で、前面のポートが密集しており、大型のUSBデバイスを使用する際には隣のポートが干渉する可能性がある点は注意が必要だ。
ストレージ面では、M.2 2280サイズのPCIe Gen4x4 SSDを自由に追加できる仕様となっている。ただし、メモリはLPDDR5XがCPUに統合されているため、増設や交換は不可である。
デスクトップPCと比べてメモリのカスタマイズ性は低いが、その分コンパクトな筐体を実現しているとも言える。加えて、本体の底面パネルはワンタッチで取り外せる設計になっており、ストレージの増設やメンテナンスのしやすさも考慮されている。
外付け電源アダプターを採用しているため、設置環境によってはスペースの確保が必要となる点も見逃せない。コンパクトなミニPCながら、十分な拡張性と接続性を備えているものの、設置環境や用途によっては慎重に選ぶ必要があるだろう。
Windows PCとしての魅力と課題 Mac miniと比較して選ぶべきポイント
Asus NUC 14 Pro AIは、その性能や機能からMac miniの競合として比較されることが多い。特に、Windows PCとしての汎用性の高さは本機の大きな魅力であり、ゲームやソフトウェアの互換性を重視するユーザーには適した選択肢となる。DirectX対応のゲームや、Windows専用のクリエイティブツールを使う場合、Mac miniではなく本機を選ぶメリットは大きい。
しかし、価格とパフォーマンスのバランスを考慮すると、Mac miniの方が優れた選択肢となる場面もある。例えば、M4チップとの比較ではCPU・GPUともに性能差があり、特に電力効率の面ではMac miniが大きくリードしている。バッテリー駆動のノートPCとは異なり、電力消費が直接の問題にはならないが、発熱や冷却性能の面での違いはユーザー体験に影響を与える可能性がある。
また、NUC 14 Pro AIの価格設定も課題の一つだ。レビュー機の価格は約1100ドル(約16万円)とされているが、正式なメーカー希望小売価格は明示されておらず、購入のハードルが高い。特に、ストレージが付属しないベアボーン仕様でこの価格であることを考えると、ユーザーが追加でSSDを購入する必要がある点はコスト面でのデメリットとなる。
総合的に見ると、Windows環境を求めるユーザーにとっては有力な選択肢となるが、価格がもう少し抑えられればより魅力的な製品になるだろう。特に、ゲーム用途やカスタマイズ性を重視する場合には、本機の拡張性を活かした使い方が可能だ。一方で、コストパフォーマンスを重視するならば、Mac miniとの比較検討が必要になる。
Source:GSMArena