Nvidiaの最新GPU「GeForce RTX 5090」と「RTX 5080」のFounders Edition(FE)が、ヨーロッパで販売開始と同時に市場から姿を消した。これは通常の売り切れではなく、転売ボットによる大量購入が原因とされている。小売業者Proshopでは、販売開始前にすでにほぼすべての在庫が転売業者の手に渡っていたことが判明し、多くのゲーマーが新GPUを入手できなかった。

PC Games Hardware(PCGH)によると、問題のボット「Nvidia KSB Test v1.1」は、一般公開前の販売ページを解析し、解禁前に即座に購入を完了させる仕組みだったという。

このボットはドイツのDiscordサーバーで配布され、購入に成功したユーザーたちは転売行為の倫理性を気にすることなく、むしろ成功を誇っている。さらに、一住所一台の購入制限も簡単に回避され、Proshop側は実質的に対策を講じていなかった。

PCGHは購入履歴や請求書のリストを入手し、Proshopへ提供する意向を示しているが、Proshop側は特に関心を示していないという。この事態を受け、Nvidiaや小売業者の対策が求められるが、今後の対応次第では次回の新製品発売時も同様の混乱が繰り返される可能性が高い。

転売ボット「Nvidia KSB Test v1.1」が果たした役割とは

今回のNvidia RTX 50シリーズの買い占めを主導したのは、「Nvidia KSB Test v1.1」と呼ばれる転売ボットだった。このボットは、一般公開前の販売ページを解析し、正式な販売開始前に購入を完了させる仕組みを持っていた。PC Games Hardware(PCGH)の調査によると、このボットはドイツのDiscordサーバーを通じて配布され、使用したユーザーは自動化されたプロセスで複数のGPUを手に入れることができたという。

このボットが特に効果的だった理由の一つは、Proshop側が販売時に十分なアクセス制御を行っていなかった点にある。一般的に、転売ボットによる買い占めを防ぐためには、CAPTCHA認証や購入ページへのアクセス制限、販売前のリンク非公開といった対策が必要となる。しかし、Proshopでは事前の対策が不十分であったため、転売業者にとって容易に買い占めが可能な状況だったと考えられる。

さらに、ボットの利用者は、一住所一台という購入制限を簡単に回避していた。異なる住所を登録した複数のアカウントを使用することで、一人のユーザーが複数枚のGPUを確保することが可能になった。

これにより、一般のゲーマーはほぼ購入機会を得られず、転売市場で高額な価格で購入するしかないという状況が生まれた。こうした転売行為は、過去のGPU発売時にも問題視されてきたが、今回の事例は特に顕著なものとなっている。

小売業者Proshopの対応とNvidiaの責任

今回の事態を受けて、Proshopの対応が大きな注目を集めている。PCGHがProshopにこの問題について問い合わせた際、Proshop側は「発売およびその実施についてはNvidiaに直接問い合わせてほしい」と回答している。

この発言からも、Proshop自身が問題への関与を最小限に抑えようとしていることがうかがえる。しかし、実際に販売を担当したのはProshopであり、事前の対策が不十分だった責任を完全に免れることはできない。

また、Nvidia自身も、公式のFounders Edition(FE)を販売する際に、こうした転売ボットへの対策をどの程度検討していたのかが問われている。過去にもGeForce RTX 30シリーズや40シリーズの発売時に同様の問題が発生しており、そのたびに一部のユーザーが購入できず、転売市場での高額取引が横行する事態となっていた。

にもかかわらず、今回も同様の手法で買い占めが行われたことから、メーカー側の対応が十分でなかったことは明らかだ。

ProshopがPCGHの提供する購入リストに興味を示していない点も、転売問題への関心の低さを示している。通常、小売業者が顧客の公平な購入機会を確保する意識を持っていれば、不正な購入履歴を精査し、次回の販売時には対策を講じるのが自然な流れだ。しかし、現時点ではProshopが積極的な措置を取る姿勢は見られず、今後も転売業者にとって都合の良い環境が続く可能性がある。

転売問題の解決策と今後の展望

転売ボットによる買い占めを防ぐには、販売プラットフォーム側が技術的な対策を強化することが不可欠である。例えば、販売ページへのアクセス制限を強化し、販売開始前のリンクを外部から見つけられないようにする、購入時に身分証明書を用いた本人確認を導入する、販売履歴を分析して不審な購入パターンを検出する、といった手法が考えられる。

また、メーカー側も、特定の小売業者への販売を独占的に任せるのではなく、より広範な販売経路を確保し、特定の業者に依存しすぎない体制を構築することが求められる。Nvidiaが過去の事例から学び、次世代のGPU販売に向けて適切な販売戦略を採ることができるかが、今後の大きな課題となるだろう。

一方で、ユーザー側の意識も重要である。転売市場での高額購入を避け、正規のルートでの購入を徹底することで、転売業者のビジネスモデルを成立しにくくすることが可能となる。今回のケースでは、転売ボットを使用したユーザーが堂々と成功を誇っていたが、そうした行為に対する批判の声が強まれば、市場全体の意識改革につながるかもしれない。

この問題は一朝一夕で解決するものではないが、メーカー、小売業者、そして消費者がそれぞれの立場で対策を講じることで、今後の状況改善が期待できる。次世代のハイエンドGPUの発売時には、今回の問題を教訓として、新たな販売方式や転売対策が導入されることが求められる。

Source:NotebookCheck