TSMCの次世代2nmノードが複数の主要企業に採用される予定である。Apple、AMD、Intel、Nvidia、MediaTekなどが名を連ねる一方で、Qualcommの不在が注目される。N2プロセスはTSMC初の「ゲートオールアラウンド」設計を採用し、2024年末の試作開始、2025年以降の量産を目指している。

AppleはA20 ProやM5で先行利用し、AMDもZen 6やAIアクセラレータに活用する見通し。競合するQualcommがSamsung Foundryに注力する可能性が浮上しており、スマートフォンやAIチップ市場での影響が予想される。

TSMCのゲートオールアラウンド技術が変える半導体業界の常識

TSMCの2nmノード(N2)は、同社初の「ゲートオールアラウンド(GAA)」設計を採用する点で注目されている。この技術は「ナノシート」と呼ばれ、従来のFinFET構造に比べて電力効率を大幅に向上させることが期待される。

これにより、スマートフォンやデータセンター向けのデバイスでの省電力性と性能向上が両立できるとされる。特に高負荷のAI処理や暗号通貨採掘においては、消費電力の低減が重要な競争力の一因となるだろう。

これに対し、IntelやSamsungも独自のGAA技術を開発しているが、TSMCの市場シェアと顧客基盤の広さがその優位性を裏付けているといえる。TSMCが量産計画に成功すれば、この新技術が世界の半導体市場で標準となる可能性が高い。ただし、導入コストの高さや製造プロセスの複雑さから、他の製造ノードとのバランスが課題となるだろう。

Appleが示す最先端技術活用のロードマップ

AppleはTSMCの2nmプロセスを採用する先陣を切る企業の一つとして注目される。Apple A20 ProとM5にこの技術が使用される計画は、2024年末の試作開始と2025年以降の量産開始という具体的なスケジュールで裏付けられている。A20 ProはiPhone 18シリーズに、M5は次世代iPadに搭載される予定であり、これによりAppleが他社製品との差別化を図ることは明白である。

Appleは一貫してTSMCの最先端ノードを採用しており、同社の独自設計とのシナジーを活用する姿勢を示している。特に、Mシリーズの高性能と電力効率は、ノートPCやタブレット市場での地位をさらに強固なものにするだろう。

一方で、競合するQualcommやMediaTekが新技術の適用で遅れを取る場合、Appleの市場支配力がさらに強まる可能性がある。ただし、新たな技術の導入には供給不足のリスクも伴うため、慎重な在庫管理が必要となるだろう。

Qualcommの不在が示す競争環境の変化

今回のTSMC 2nmノードにおいて、Qualcommが顧客リストに名を連ねていない点は業界内で大きな議論を呼んでいる。同社がSamsung Foundryへの依存を深めるという観測が現実化すれば、Snapdragonシリーズの将来に影響を及ぼす可能性がある。特に、同社の次世代SoCが市場で競争力を維持できるかどうかが焦点となる。

これまで、Qualcommはスマートフォン市場において高いシェアを誇っていたが、TSMC製チップとの差が広がれば、AppleやMediaTekとの競争が厳しくなることは避けられない。さらに、Samsung製プロセスの性能や歩留まりがTSMCに劣るという評価がある中で、Qualcommの決定がどのような成果を生むかは未知数である。ただし、これによりSamsungが市場での存在感を高める可能性も否定できない。

Qualcommの動向は、スマートフォンだけでなくAIやIoT分野における戦略とも密接に関連しており、同社の判断が業界全体の動きに影響を与えることが予想される。