Qualcommが新たに投入したSnapdragon XシリーズSoCが、PC市場でIntelとAMDに挑む新勢力として注目された。しかし、発売後初四半期の出荷台数は72万台と低調に終わり、全世界のPC市場シェアはわずか0.8%にとどまる。マイクロソフトの全製品ラインを中心に一定の支持を得るものの、DellやHPなど他メーカーの採用は限定的で、市場での存在感向上には至っていない。
一方、AI対応PCの売上は堅調だが、これはWindows 10のサポート終了に伴う買い替え需要が後押ししている側面が強い。IntelやAMDが長年培った互換性の壁や、バッテリー性能での追い上げが、Qualcommにとって依然として大きな障害となっている。ARMベースのプラットフォーム開発を加速できなければ、PC市場での突破口を見つけるのは容易ではないだろう。
Snapdragon Xシリーズにおける市場投入の背景と初動の失敗
Snapdragon Xシリーズは、QualcommがPC市場での競争を本格化させるために投入した意欲作である。このSoCは、Windows 11の新機能と密接に連携する設計を採用し、Microsoftによる独占的なサポートを背景に市場投入された。
しかし、発売初期の出荷台数は72万台と期待を大きく下回り、Canalysの報告によれば、全世界のPC市場におけるシェアはわずか0.8%に留まった。この初動の失敗には、IntelとAMDの長年の市場支配に加え、アプリケーションの互換性や性能面での不安が影響していると考えられる。
また、DellやHPといった主要なPCメーカーによる採用が広がらなかったことも、結果に影を落とした。これに対しMicrosoftは、自社製品のほぼ全ラインをSnapdragon Xシリーズに移行するという果敢な戦略を取ったが、その効果は依然限定的である。市場の信頼を築くためには、Qualcommがさらなる技術的飛躍と明確な差別化を実現する必要があるだろう。
AI対応PCの拡大とSnapdragon Xシリーズが直面する競争環境
AI対応PCは、ニューラルプロセッシングユニット(NPU)の搭載を特徴とし、特にバッテリー効率や生成AIを活用した機能で注目を集めている。直近の四半期にはPC市場全体の20%を占めるまでに成長しており、Snapdragon Xシリーズもその一翼を担う形で市場に参入した。
しかし、この成長の背景にはWindows 10サポート終了に伴うアップグレード需要があることが指摘されており、新機能の魅力そのものが需要を牽引しているとは言い難い。
一方で、IntelとAMDはAI機能を持つプロセッサを次々と発表し、性能面での追い上げを図っている。これにより、Qualcommが誇るバッテリー寿命や処理能力が相対的に目立たなくなりつつある。独自のAI技術を市場に浸透させるためには、単なるハードウェア性能だけでなく、エコシステム全体を巻き込む革新的な提案が求められる。
ARMベースプラットフォームの課題と未来への展望
ARMベースのプラットフォームは、モバイルデバイス市場では圧倒的な地位を築いた一方で、PC市場では依然として厳しい状況にある。QualcommのSnapdragon Xシリーズもその例外ではなく、ARM用アプリの開発が進まない現状が障壁となっている。
IntelとAMDが築いてきた長年のエコシステムは、互換性やソフトウェアサポートの面で大きな優位性を持つ。この現実は、ARMベースのPCが採用を拡大する上での大きな課題となっている。
Appleは独自のMacOSとMシリーズチップでARMベースPCの可能性を示したが、Qualcommには同等の影響力がない。TechRadarは、現在の技術だけでは消費者を十分に引き付ける説得力が不足していると指摘しており、独自のエコシステムを構築する努力が不可欠である。Snapdragon XシリーズがPC市場での存在感を高めるためには、ハードウェア性能だけでなく、開発者コミュニティを動員する力が問われるだろう。