スペイン・バルセロナで開催された「VMware Explore 2024」において、Broadcom傘下でのVMwareが新たな進化を遂げる姿が披露された。初日のキーノートでは、CEOホック・タン氏ら幹部が「クラウド&AI革新の未来」をテーマに掲げ、VMwareの最新戦略と革新的技術が発表された。
プライベートAIの新機能や専用ネットワーク「VeloRAIN」など、データ処理の効率向上を目指した取り組みが注目を集め、企業が直面する「コスト、複雑さ、コンプライアンス」への対策が提示された。また、VMware Cloud Foundationの主権クラウド対応により、クラウド技術の進化が加速する可能性も示唆された。
Broadcom買収後の変革を示すVMwareの新戦略
VMware Explore 2024で注目されたのは、Broadcomによる買収後初の大規模イベントとしての同社の新たな方向性である。キーノートではBroadcomのCEOホック・タン氏が、VMwareがテクノロジー業界でいかに変革を続け、企業におけるクラウドの導入とAIの活用を推進していくかを強調した。
タン氏は「コスト、複雑さ、コンプライアンス」という企業の課題に対し、VMwareが提供するソリューションとしてプライベートクラウドとプライベートAIの活用を提案している。これにより企業はインフラの柔軟性を確保しつつ、ITリソースの効率的な運用を目指すことが可能となる。
さらに、今回のイベントではVMware Cloud Foundation(VCF)を主権クラウド市場に適応させる方針が発表され、クラウド基盤の進化が加速することが期待される。VCFの強化は、データとサービスを一元管理し、複雑なマルチクラウド環境を最適化するためのものである。この方針には、将来的なクラウド市場においてVMwareが持続的に価値を提供するための狙いがあると考えられる。
AIネットワーク「VeloRAIN」とスマートデバイスの未来
VMware Explore 2024で発表された「VeloRAIN」は、AIネットワークを最適化する新技術である。このネットワークは、AI処理を含む複雑なデータをスムーズに処理することを目的に開発されている。
実際の例として、スマートグラスを通じた製品の購入体験が紹介され、AIの応答速度とデバイス間のデータ処理の効率がいかに向上しているかが強調された。この技術は、特にスマートデバイスの普及が進む現代において、その適用範囲を広げるポテンシャルを持つ。
また、「VeloRAIN」は、AIソリューションがより低遅延で利用できる環境を提供し、スマートデバイス間の相互運用性を向上させるための基盤となる。VMwareのCTOであるジョー・バグリー氏は、こうした新技術がデバイスのインテリジェンスをさらに高め、ユーザー体験の質を向上させると指摘する。
これにより、IoTデバイスやエッジコンピューティングの分野で、AIを用いた効率的なデータ処理がさらに発展する可能性がある。
VMwareプライベートAIの新機能と企業向けの導入メリット
今回の発表で強調されたもう一つの要素は、VMwareの「プライベートAI」ソリューションである。BroadcomのAI部門責任者であるクリス・ウルフ氏によれば、VMwareのプライベートAIは、ポリシー管理、リソース共有、コスト削減などの利点を提供し、企業がAIを安心して導入できる環境を構築している。
また、パフォーマンス面でもベアメタルシステムに匹敵する能力を持ち、VMwareの仮想環境で効率的に運用できる点が魅力であるとされる。
さらに、新たに追加されたモデルストアシステムや展開ガイダンスツール、GPU予約ツールによって、企業はAI導入に関する細かな管理が可能となり、より効率的かつ効果的な運用が実現される見込みである。このように、VMwareのプライベートAIは、今後の企業IT戦略において不可欠な存在となる可能性を秘めており、AI導入のハードルを大きく引き下げるものとして期待されている。