AMDは2024年の第4四半期および通年の財務結果を発表し、ゲーム部門の収益が前年比で58%減少したことを明らかにした。この主な要因として、ゲームコンソール向けのセミカスタム製品の出荷台数の減少が挙げられる。一方、Ryzen 7 9800X3DなどのX3Dチップは高い需要を示し、予想を上回る売上を記録している。

AMDは、2025年3月上旬に最新のRX 9070シリーズのグラフィックカードを発売予定であり、これによりゲーム部門の収益回復が期待される。しかし、現時点で新製品の性能に関する詳細は明らかにされておらず、発売の遅れが戦略の見直しを示唆している可能性もある。

さらに、AMDは今四半期内に新しいRyzen 9 X3Dチップである「9950X3D」と「9900X3D」をリリースする予定であり、これらの新製品が市場でどのように受け入れられるかが注目される。

AMDのゲーム部門はなぜ苦戦しているのか セミカスタム事業の落ち込みとその背景

AMDのゲーム部門の収益減少の主な要因として挙げられるのが「セミカスタム収益の減少」だ。これは、ゲームコンソールやハンドヘルド機器向けのカスタムSoC(システムオンチップ)の販売が落ち込んでいることを意味する。具体的には、PlayStation 5やXbox Series X|S向けのプロセッサ出荷が減少した影響が大きいと考えられる。

家庭用ゲーム機市場は、新ハードの発売直後に販売台数が急増し、その後徐々に落ち着く傾向がある。すでにPS5やXbox Series X|Sの販売がピークを過ぎ、次世代機の噂も出始めている中で、AMDのセミカスタム事業が落ち込むのは当然の流れとも言える。また、ポータブルゲーミングPC市場においてもSteam DeckやROG AllyといったAMD製APUを採用した機種が人気を集めたが、市場の成長が一段落しつつある可能性もある。

一方で、競合であるNVIDIAは、ゲーム向けのディスクリートGPU(単体グラフィックカード)市場で依然として強い影響力を持っている。AMDはセミカスタム製品の売上低下を補うために新たな施策が必要となる。特に、2025年3月に発売予定のRX 9070シリーズがどこまで市場にインパクトを与えられるかが鍵となるだろう。

X3Dシリーズの成功と今後のRyzen 9 X3Dチップの期待

AMDのゲーム部門の収益は落ち込んだものの、RyzenのX3DシリーズCPUは好調を維持している。特に、Ryzen 7 9800X3Dは、前世代の成功を引き継ぎながら更なるパフォーマンス向上を果たし、多くのゲーマーから支持を得た。大容量L3キャッシュによるゲーム向け最適化は、Intelの競合製品と比較しても強みとなっており、特にCPU負荷が大きいゲームタイトルではその効果が顕著に表れる。

AMDは今後、さらに上位モデルのRyzen 9 X3Dシリーズとして「9950X3D」と「9900X3D」を投入する予定だ。これにより、より多くのコアを必要とするゲームやマルチタスクを重視するユーザー層にもアピールすることができる。特に、最近のゲームではCPUのスレッド数がパフォーマンスに影響を与えるケースが増えており、Ryzen 9 X3Dの登場はそのニーズを満たすものとなるだろう。

また、Intelの最新世代プロセッサとの比較も注目される。Intelは近年、ゲーム向け最適化に力を入れ、ハイブリッドアーキテクチャを採用することでパフォーマンスを向上させている。しかし、AMDのX3Dシリーズは、キャッシュ容量の強化と電力効率の高さが強みとなり、消費電力とパフォーマンスのバランスに優れる点で優位性を維持している。

今後の市場動向として、Ryzen 9 X3Dシリーズが登場することでAMDのCPUラインナップはさらに充実し、ゲーマーやクリエイターの選択肢が増えることになるだろう。特に、新世代GPUとの組み合わせによって、どこまでパフォーマンスを引き上げられるかが注目される。

RX 9070シリーズはNVIDIAのRTX 5070シリーズと競争できるのか

AMDは2025年3月上旬に最新のRX 9070シリーズを発表予定で、これが同社のゲーム部門の収益回復の鍵を握ると考えられている。しかし、NVIDIAのRTX 5070シリーズの登場が控えている中で、RX 9070シリーズが十分な競争力を発揮できるかどうかが焦点となる。

RX 9070シリーズはAMDの最新RDNA 4アーキテクチャを採用し、FSR 4を独占サポートすることが発表されている。これにより、AMDのアップスケーリング技術を活かしたパフォーマンス向上が期待される。しかし、NVIDIAのDLSS技術はすでに市場で高い評価を得ており、FSR 4がどの程度それに匹敵できるかは不透明な部分も多い。

また、AMDのグラフィックカードは消費電力やコストパフォーマンスの面で強みを持つが、ソフトウェアの最適化やドライバの安定性が課題とされてきた。特に、競争が激化するミドルレンジGPU市場では、単純な性能だけでなく、安定性や機能面での優位性が求められる。RX 9070シリーズがこれらの課題をどこまで克服できるかが重要となるだろう。

さらに、価格設定も市場での競争力を左右する要素だ。NVIDIAはRTX 5070シリーズで競争力のある価格を設定する可能性があり、AMDとしても価格面での戦略が求められる。現時点ではRX 9070シリーズの具体的な性能や価格に関する情報は少なく、今後の正式発表が待たれる。

RX 9070シリーズがNVIDIAのRTX 5070シリーズと真正面から競争できる性能を備えているかどうかは、発売後のベンチマーク結果次第となる。しかし、AMDがFSR 4の強化や新しいアーキテクチャを武器にどのような市場展開をするのかは、今後のPCゲーミング市場において大きな関心事となることは間違いない。

Source:PC Guide