Intelは、最新のCore Ultra 200SシリーズにAI機能を組み込んだArrow Lakeアーキテクチャを発表した。だが、AI機能は簡素化され、Windows 11の2024年更新版で提供される生成AIや高度な機能はサポートされていない。Intelは、ゲーマーの性能重視のニーズに応えるため、高度なAI機能を犠牲にし、既存の設計を活かす方針を取った。
Arrow LakeアーキテクチャがもたらすAIの新機能
Intelの新しいCore Ultra 200Sシリーズは、Arrow LakeアーキテクチャによってAI機能を強化した。しかし、このAI機能は、Intelが提供するモバイル向けのLunar Lakeチップに搭載されているCopilot+機能には及ばない。Arrow Lakeでは、旧型のNPU(ニューロン処理ユニット)が搭載されており、最大で13TOPS(兆回の演算能力)を実現する。これは、Windows 11の2024年アップデートで必要とされる40TOPSのCopilot+機能には届かないが、Intelはこれで十分だと判断した。
Arrow Lakeは、AMDのRyzen 8000シリーズと同様に、AI機能を搭載したデスクトッププロセッサとして登場した。しかし、Ryzen 8000シリーズは一部の高度なAI機能をサポートしていたものの、すぐに後継機となるRyzen 9000に取って代わられた点で違いがある。Intelは、AI機能を拡充するよりも、ゲーマーやエンスージアスト向けの性能を優先するため、既存のNPUを最適化する道を選んだ。これにより、AI機能を搭載しながらも、CPUやGPUの基本性能を犠牲にせずに済んでいる。
ゲーマーのニーズに応えた設計とNPUの選択
IntelのArrow Lakeは、AI機能を搭載しつつも、ゲーマーに最適化された設計が特徴である。多くのゲーマーが求めるのは、AI処理能力よりも、グラフィックやパフォーマンスの向上だ。Intelの調査によると、AI機能に対して懐疑的なユーザーが多いことから、NPUに大きな投資を行うよりも、GPUやCPUの性能を維持することが重要視された。
Arrow Lakeに搭載されたNPU 3は、前世代のMeteor Lakeから改良されたもので、13TOPSの処理能力を持つ。しかし、Intelは50TOPSや40TOPSのNPUを搭載することも可能であったと認めている。だが、その場合はコア数を減らすなど、他の重要な性能に妥協が必要だった。これに対し、Intelはバランスを重視し、ユーザーが求めるCPUとGPUの強力な性能を維持しつつ、必要十分なAI機能を搭載するという設計方針を取った。
他社との比較:AMD Ryzenとの違い
Arrow Lakeは、AMDのRyzenシリーズとの競争の中で生まれたが、両者のアプローチには大きな違いがある。AMDは、Ryzen 8000シリーズでAI機能を大幅に強化し、39TOPSのNPUを搭載して市場に登場した。しかし、このRyzen 8000シリーズは短期間で姿を消し、AI機能を持たないRyzen 9000シリーズに置き換わった。一方で、IntelはAI機能を引き続き搭載しながらも、性能面での妥協を避ける方針を取っている。
AMDのZen 5アーキテクチャは、前世代に比べて16%の性能向上を達成し、NPUを搭載していないにもかかわらず高い評価を得た。これに対して、IntelはAIと従来のCPU・GPU性能のバランスを取り、Arrow Lakeに36TOPSのプラットフォーム処理能力を持たせた。これにより、AI処理能力が必須でないユーザーにも高いパフォーマンスを提供しつつ、AIの導入も視野に入れている。
AI時代におけるIntelの戦略的バランス
AI技術が急速に進化する中で、Intelはその対応において慎重なバランスを取っている。Arrow Lakeでは、CPU、GPU、NPUの全体的な性能が均衡する設計が採用されており、AI機能を強化しすぎることなく、従来のコンピューティングパワーを維持している。Intelは、AIハードウェアが必ずしもすべての場面で最適に活用されていないと分析し、AI処理を支援するためのNPUを最低限に抑えることで、全体のパフォーマンスを向上させる戦略を取っている。
Intelのエグゼクティブによれば、ソフトウェア開発者がAIハードウェアのフル機能を活かせていない現状があるため、NPUの性能を過剰に追求することは時期尚早だと考えられている。そのため、Arrow LakeのNPUはあえて13TOPSに抑えられており、将来的なAIモデルの最適化に備える形となっている。この戦略により、Intelは現在の市場ニーズに応えつつ、今後のAI技術の発展にも柔軟に対応できる製品ラインを維持している。