MSIの最新GPU「GeForce RTX 5090」の米国公式ストアでの販売が当初の予定より遅れ、2月6日からの発送となることが明らかになった。
MSIの米国支社は公式Discordにて、1月30日に予定されていたRTX 5090の発売日に十分な在庫を確保できないことを発表した。ただし、予約注文は同日午前6時(PST)から可能で、確保済みの在庫分のみが対象となる。一方、RTX 5080は同日同時刻に販売開始され、即日発送される予定である。
MSIの担当者によると、今回の延期はあくまで公式ストアに限定されており、他の小売業者では通常通りの在庫確保が見込まれている。しかし、カスタムPCメーカー「StinceBuilt」もMSIのRTX 5090の在庫を2月6日まで受け取ることができないと報告しており、市場全体での供給不足が懸念される状況だ。
RTX 5090の供給不足はなぜ起こったのか 製造・流通の課題
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RTX 5090の販売延期は、単なる一部ストアの問題ではなく、業界全体の供給網に深く関係している。まず、NVIDIAの最新GPUアーキテクチャ「Blackwell」を採用したRTX 50シリーズは、高性能化に伴い製造難易度が大幅に上昇している。
特に、RTX 5090は最先端のプロセス技術と高密度のトランジスタ設計を採用しており、歩留まり(製造成功率)の問題が発生しやすい。これにより、初期生産分の供給量が限られてしまっている。
また、半導体業界全体の需要増加も影響している。AI向けGPU市場が急成長する中、NVIDIAの製造能力の一部はデータセンター向け製品に優先的に割り当てられている可能性がある。そのため、ゲーミング向けGPUの供給が相対的に後回しになり、RTX 5090の一般販売に影響を与えていると考えられる。
流通面でも課題がある。MSIの米国支社が在庫確保に苦戦している背景には、中国や台湾からの物流遅延が影響している可能性が高い。特に旧正月前後の時期は、アジア圏の生産・出荷スケジュールが変則的になりやすい。加えて、北米地域の通関や流通センターの処理能力にも制約があり、MSIの公式ストアに入荷するタイミングが遅れてしまったと考えられる。
RTX 5080は通常販売なのに5090は遅れる理由 ミドルレンジとハイエンドの違い
RTX 5090の出荷が遅れる一方で、RTX 5080は予定通り販売され、即日発送が可能となっている。この違いは、製造難易度とターゲット市場の違いに起因している。
RTX 5090はフラッグシップモデルとして、最高レベルのパフォーマンスを提供するため、特に高品質なチップが求められる。NVIDIAのチップ製造では、性能ごとにランク分けが行われ、最も優れたチップがRTX 5090向けに割り当てられる。
しかし、先端プロセスの成熟度が低い初期段階では、高品質なチップの歩留まりが安定せず、十分な数量を確保できないケースが多い。そのため、RTX 5090の供給量がRTX 5080よりも少なくなってしまう。
一方、RTX 5080は高性能ながらもミドルハイレンジの位置づけであり、RTX 5090よりも品質の制約が緩い。その結果、比較的生産しやすく、安定した供給が可能となる。また、NVIDIAはRTX 5080の販売数を優先し、大量出荷することで市場の需要を満たす方針を取っていると考えられる。
さらに、MSIの公式ストアでの遅延がRTX 5090に限定されている点も重要だ。MSIが公式ストア用に確保できる在庫がそもそも限られているため、最上位モデルのRTX 5090は一部の大手小売業者に優先的に割り振られた可能性がある。その結果、MSIの独自販売分では発売日当日に対応できなかったと推測される。
今後のRTX 5090供給は安定するのか 買うべきタイミングとは
RTX 5090の供給が今後どのように変化するかは、多くの購入希望者にとって重要なポイントとなる。現在の状況を見る限り、2月6日以降も即座に潤沢な在庫が確保されるとは限らない。特に、MSI以外の小売業者でも入荷数量が限定的であれば、争奪戦が続く可能性が高い。
NVIDIAは追加の在庫を「毎日出荷する」と発表しているものの、出荷規模や各地域への配分は明確に示されていない。過去のハイエンドGPUの販売傾向を考えると、発売直後の品薄はしばらく続くと予想される。特に、転売市場で価格が高騰しやすいため、定価での購入を希望する場合は公式ストアや正規販売店の入荷情報をこまめにチェックする必要がある。
RTX 5090の購入タイミングを考える際には、NVIDIAが数カ月後に行う可能性がある在庫増強の動きにも注目したい。過去の世代では、発売から2〜3カ月後に出荷量が安定し、価格が落ち着いた例もある。そのため、急ぎでなければ春以降の動向を見極めるのも一つの選択肢となる。
また、MSIはRadeonやArc BattlemageのGPUを扱っていないため、RTX 5090の供給が不足した場合でも、代替GPUの販売にはつながらない。そのため、MSI製品を希望するユーザーは、RTX 50シリーズの在庫状況を慎重に見極めながら購入を検討する必要がある。
Source:VideoCardz.com