NvidiaのRTX 50シリーズGPUの価格が定価(MSRP)から大幅に上昇している。MSIは一時的にMSRPでの販売を完全に停止し、特定モデルを数十ドルから数百ドル値上げしたが、その後一部の価格を元に戻した。しかし、RTX 5080や5090の価格は依然として公式MSRPを大きく超えており、最安モデルでもそれぞれ1,139ドル、2,399ドルからとなっている。
市場では依然としてMSRPで販売されるモデルも存在するが、MSI以外のボードパートナーも値上げに踏み切る動きが見られる。背景には高価なGDDR7 VRAMの採用やサプライチェーンの影響があり、RTX 50シリーズのコスト上昇が価格転嫁されていると考えられる。一方、AMDのRadeon RX 9070シリーズの登場が近づいており、価格と性能のバランスがどのように影響するかが注目される。
MSIの価格改定とその影響 市場に広がる混乱

MSIはRTX 50シリーズの一部モデルについて、MSRPでの販売を撤回し、価格を引き上げる動きを見せた。特にRTX 5070 Tiの「Shadow 3X」は一時819ドル、「Shadow 3X OC」は839ドルでリストアップされ、元の749ドルから70ドル以上の値上げが確認された。さらに「Ventus 3X OC」と「Inspire 3X OC」も、それぞれ70~80ドルの価格上昇が発生した。
しかし、こうした動きは短期間で撤回され、現在はMSRPに戻されている。ただし、RTX 5080とRTX 5090に関しては、依然としてMSRPを超える価格設定が維持されており、RTX 5080の最安モデルは1,139ドル、RTX 5090の最安モデルは2,399ドルからとなっている。
この価格変動は、ユーザーにとって混乱を招く結果となった。一時的に価格が上昇しながらも、すぐにMSRPに戻されたことで、市場の価格設定に対する不信感が高まっている。さらに、RTX 5080やRTX 5090の価格はMSRPと大きく乖離したままであり、ユーザーが望む「適正価格」での購入が難しい状況が続いている。
特に、RTX 50シリーズの発売初期には在庫不足も報告されており、需要の高さに対して供給が追いつかないことが、価格の変動をさらに複雑にしている。
GPUの価格高騰の背景 GDDR7の採用と供給問題
RTX 50シリーズの価格が上昇している背景には、複数の要因が絡んでいる。最も大きな要因のひとつは、NvidiaがすべてのRTX 50シリーズに高価なGDDR7 VRAMを採用したことだ。
GDDR7は前世代のGDDR6よりも転送速度が向上しているものの、製造コストが高いため、GPUの価格にそのコストが上乗せされている。ボードパートナーがMSRPを維持することが難しくなったのは、このコスト上昇の影響が大きいと考えられる。
さらに、台湾で発生した地震も、サプライチェーンに影響を与えた可能性がある。台湾は半導体製造の中心地であり、GPUに必要なチップやメモリの供給において重要な役割を果たしている。そのため、工場の稼働状況が変化すれば、RTX 50シリーズの生産や流通に影響が及ぶ可能性がある。
また、MSIに限らず、他のボードパートナーもMSRPを維持するモデルと、価格を引き上げるモデルを混在させており、どのGPUが適正価格で購入できるのかを見極めるのが難しくなっている。
市場全体で見れば、現在の価格高騰は一時的なものではなく、長期的な傾向となる可能性もある。特に、MSI以外のメーカーも価格を引き上げる傾向が強まれば、RTX 50シリーズ全体の価格が高止まりすることは避けられないだろう。
AMDの新GPUは巻き返せるのか 価格と性能のバランスに注目
この状況の中で、AMDの新型GPU「Radeon RX 9070」シリーズの動向が注目されている。RX 9070は549ドル、上位モデルのRX 9070 XTは599ドルで販売される予定で、価格面ではRTX 5070および5070 Tiに対抗できる水準となっている。AMDの新型GPUは、ラスタライズ性能ではNvidiaの同クラスのGPUと互角とされており、特にコストパフォーマンスを重視するユーザーにとって魅力的な選択肢になり得る。
しかし、AMDのGPUにはNvidiaのDLSSや独自のレイトレーシング技術に匹敵する強みが必要となる。特に、RTX 50シリーズがAI技術を活用した新機能を強化していることを考えると、AMDがどこまでこれに対抗できるかが鍵となる。また、現時点ではRX 9070シリーズのボードパートナーのラインナップが明らかになっておらず、供給体制がどの程度整っているのか不透明だ。
Nvidiaの価格高騰が続く中で、AMDが競争力のある価格設定と十分な供給を実現できれば、多くのユーザーがRadeon GPUを選択する可能性がある。今後の市場動向次第では、RTX 50シリーズの価格にも影響を与えるかもしれないが、それにはAMDが確実に製品を市場に供給し、十分な在庫を確保することが前提となるだろう。
Source:TechSpot