AMDが公開したRX 9070シリーズの「ToyShop」テクニカルデモは、最新のパストレーシング技術をアピールする狙いだった。しかし、視聴者からは画質の乱れやアーティファクトの多さが指摘され、Nvidia RTX 50シリーズとの差が依然として大きいことが浮き彫りになった。
価格面ではRX 9070 XTが599ドルと予想通りの設定だが、50ドル安い無印RX 9070との差が小さく、コストパフォーマンスへの疑問も上がっている。一方、AMD擁護派からは「レイトレーシングが全てではない」との意見もあり、発売後の実ゲームパフォーマンスが評価の鍵を握ることになりそうだ。
RX 9070シリーズのパストレーシング技術 期待と現実のギャップ

AMDが発表したRX 9070シリーズは、パストレーシング技術を強化した最新GPUとして注目を集めた。特に「ToyShop」デモでは、進化した光の表現技術が披露された。しかし、実際の映像では、Nvidia RTX 50シリーズと比較して画質の乱れやアーティファクトの多さが目立ち、期待通りの仕上がりとは言えなかった。
このデモでは、動的なシーンでの描画が課題となった。例えば、車両が通過する場面では、パストレーシング特有の光の反射や影の表現が十分に活かされていないだけでなく、背景のテクスチャがぼやけるなどの問題が発生していた。AMDが導入したニューラルスーパーサンプリングによるデノイズ処理も、特定の場面ではノイズを抑えきれず、新たな映像の乱れを生じさせる要因となっている。
RTX 50シリーズと比較すると、光の表現に大きな差があると指摘されている。特にNvidiaのDLSS 4との比較では、AMDのFSR 4はアップスケーリングの精度が劣るとの声が多い。AMDはこれまで、価格と性能のバランスを強みとしてきたが、パストレーシングがゲーム体験に与える影響を考慮すると、単なるコストパフォーマンスの良さだけではNvidiaとの差を埋めるのは難しいだろう。
RX 9070とRTX 5070 Tiの価格差に見合う性能はあるのか
RX 9070 XTの価格は599ドルとされ、RTX 5070 Tiと同等のスペックを持つとされている。一方で、RX 9070は50ドル安いだけで、性能面で大きな違いがないことが議論を呼んでいる。これにより、ユーザーにとって「どちらを選ぶべきか」という問題が生じている。
価格差が小さいにもかかわらず、無印RX 9070を選ぶメリットがどこにあるのかは明確ではない。通常、同じシリーズ内での価格差は、VRAM容量やクロック速度の違いによって正当化されるが、RX 9070とRX 9070 XTではその差が大きくない。加えて、RX 9070のパストレーシング性能がRTX 50シリーズに及ばないとすれば、価格と性能のバランスを重視するユーザーにとっては厳しい選択となる。
また、RTX 50シリーズはDLSS 4により、より高度なアップスケーリング技術を提供している。これに対し、RX 9070シリーズはFSR 4を搭載しているものの、DLSSと比較した際の優位性が示されていない。FSRはオープンソースであることが利点だが、純粋な画質やパフォーマンスの向上に関してはNvidiaに一歩譲る形となっている。
価格設定が適正であったとしても、最終的な購入判断はレイトレーシングの品質とアップスケーリング技術の成熟度に左右されることになりそうだ。
AMDはNvidiaに追いつけるのか レイトレーシングの未来
AMDとNvidiaのレイトレーシング技術の差は、数世代にわたって指摘されてきた。今回のRX 9070シリーズのデモにより、その差が依然として埋まっていないことが明確になった。従来のレイトレーシングに加え、より高度なパストレーシング技術が主流になりつつある現在、AMDのアプローチが問われることになる。
レイトレーシングは、リアルな光のシミュレーションを実現する技術であり、特に反射や影の表現が強化される。しかし、従来のレンダリング技術に比べて膨大な演算処理を必要とするため、高性能なハードウェアが不可欠だ。
NvidiaはDLSSを活用し、処理負荷を軽減しながらも高画質を維持する手法を確立している。対してAMDは、FSR 4によるアップスケーリングを提供するものの、画質や安定性の面でまだNvidiaに追いついていないと評価されている。
今後、AMDがどのように技術革新を進めるかが鍵となる。価格競争だけでなく、実際のゲーム体験におけるパフォーマンス向上が求められるため、ドライバーの最適化や新たなレンダリング技術の導入が必要になるだろう。レイトレーシングが標準機能となりつつある今、AMDがどのような戦略で競争力を確保するのか、次の世代のGPU開発に注目が集まる。
Source:Notebookcheck