ValveのSteam Deckは、携帯型ゲーミングPC市場で依然として圧倒的なシェアを誇る。しかし、市場全体の成長は鈍化しており、2024年の販売台数は前年比で50%減少。2025年も回復の兆しはあるものの、2023年のピークには及ばない見込みだ。

IDCのデータによると、Steam Deckを含む主要な携帯型ゲーミングPCの累計販売台数は400万台程度にとどまり、デスクトップPCやゲーム専用機とは比較にならない小規模市場となっている。特にNintendo Switchが年間約2,000万台売れるのに対し、携帯型ゲーミングPCは2024年の予測で約150万台。今後、市場が拡大するには、専用チップなどの革新的な技術が鍵を握るだろう。

市場全体が停滞する中、Steam Deckのような特別設計のハードウェアが成長のカギとなるのか、それともこの市場はニッチなまま終わるのか。今後の動向が注目される。

Steam Deckの販売台数は400万台超 しかし市場全体は縮小へ

Steam Deckは2022年の登場以来、携帯型ゲーミングPC市場で圧倒的なシェアを誇る。IDCのデータによると、2022年の販売台数は約162万台、2023年には286万台まで増加した。しかし、2024年には約148万台と大幅に落ち込み、市場全体の縮小が明らかになった。

このデータをもとにすると、Valveは2024年時点で累計400万台以上のSteam Deckを販売した計算になる。これは携帯型PC市場において高い実績と言えるが、デスクトップPC向けのゲーミングGPUが年間3500万~5000万台売れるのと比べると、その市場規模は非常に小さい。

また、携帯型ゲーミングPC市場全体を見ても、Steam Deck以外のデバイスの影響力は限定的だ。Asus ROG AllyやLenovo Legion Goなどの競合製品は登場したものの、2024年の販売シェアはSteam Deckが48%を占めており、依然として市場を支配している。つまり、この市場は「Steam Deckの市場」と言い換えても過言ではなく、他のデバイスが広く普及するには至っていない。

さらに、IDCの予測では、2025年の市場規模は約192万台とされており、2024年よりは回復するが、2023年のピーク時には届かない見込みだ。この傾向を踏まえると、携帯型ゲーミングPCが今後も市場を拡大するかどうかは不透明な状況が続いている。

携帯型ゲーミングPCの普及が進まない理由とは

携帯型ゲーミングPCは、スペックと携帯性を両立するデバイスとして注目されている。しかし、販売台数が伸び悩んでいるのにはいくつかの要因が考えられる。

まず、デバイスの価格が高いことが挙げられる。例えば、Steam Deckの標準モデルは約6万円から、OLEDモデルは約8万円からと、一般的なゲーム専用機に比べて割高だ。加えて、Asus ROG AllyやLenovo Legion Goなどの競合機種も10万円前後と、コストパフォーマンスの面でハードルが高い。

次に、バッテリー駆動時間の問題もある。Steam Deckを含む携帯型ゲーミングPCは、フルスペックで動作させるとバッテリー持続時間が2~3時間程度にとどまり、長時間のプレイには不向きだ。特にNintendo Switchのような長時間駆動が可能なゲーム機と比較すると、ユーザーにとっての利便性に欠ける部分がある。

また、携帯型PCであるがゆえに、ゲーム体験の快適さがデスクトップPCや据え置き型ゲーム機に劣ることも影響している。画面サイズが小さく、操作性が限定される点や、高負荷時の発熱によるパフォーマンス低下など、プレイ環境に妥協を強いられるケースが多い。これらの要因が、普及の妨げとなっている可能性がある。

今後の携帯型ゲーミングPC市場はどうなるのか

IDCの予測では、2025年の携帯型ゲーミングPC市場は約192万台と、2024年より回復すると見られている。しかし、2023年のピーク時である286万台には及ばず、成長が鈍化していることは否めない。

今後、市場を拡大するためには、専用設計のハードウェアが重要な役割を果たす可能性がある。例えば、Steam DeckはAMDと共同開発したカスタムAPU(Aerith、Sephiroth)を搭載しており、最適化されたハードウェアが強みとなっている。一方で、他のメーカーの携帯型PCは汎用APUを採用していることが多く、パフォーマンスや電力効率の面で差が出ている。

また、バッテリー技術の進化も重要な課題となる。現在の携帯型ゲーミングPCは高性能を追求するあまり、消費電力が大きく、駆動時間の短さがネックとなっている。今後、より省電力で高性能なAPUの開発や、大容量バッテリーの搭載が進めば、普及の障壁を取り除くことができるかもしれない。

それでも、携帯型ゲーミングPC市場は、デスクトップPCやゲーム専用機に比べると規模が小さく、ニッチな存在であることに変わりはない。今後も特定のユーザー層に支持される市場として続くのか、それとも新たな技術革新によってより広い層に受け入れられるのか、今後の動向が注目される。

Source:PC Gamer