AMDは2024年、デスクトップおよびノートPC向けのCPU市場で着実にシェアを伸ばし、サーバー市場では市場シェアが25%を超えた。Mercury Researchのデータによれば、消費者向けCPUの収益シェアは前年同期比で4.5%増の24.6%に達し、サーバー向けCPUの収益シェアも前年同期比で3.7ポイント増の35.5%となった。
特にデスクトップ向けでは、AMDの販売台数シェアが前年同期比で7.4%増の27.1%に達し、エンスージアスト向けの「Ryzen 9000」シリーズが高い人気を博している。一方、インテルは「Raptor Lake」CPUの安定性問題や在庫調整の影響でシェアを落とした。
ノートPC市場でも、AMDの販売台数シェアは前年同期比で3.4%増の23.7%となり、性能向上や省電力性の向上が評価されている。サーバー市場では、AMDの販売台数シェアが前年同期比で2%増の25.1%に達し、高性能・高利益率の市場で確固たる地位を築いている。
AMDのデスクトップCPU市場での台頭とその要因
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AMDは2024年、デスクトップ向けCPU市場で着実にシェアを拡大し、27.1%に達した。前年同期比で7.4%増という大幅な成長を遂げた背景には、複数の要因がある。まず、Ryzenシリーズの高性能化が挙げられる。
「Zen 4」および「Zen 5」アーキテクチャを採用した最新モデルが、ゲームやクリエイティブ用途において優れたパフォーマンスを示し、多くのユーザーから支持を得た。また、AMDは価格面でも柔軟な戦略を採り、競争力のある製品を市場に投入したことが影響している。
加えて、競合であるインテルの「Raptor Lake」シリーズで発生した安定性の問題も、AMDのシェア拡大に寄与した。特に、インテル製CPUを搭載した一部のマザーボードでの互換性問題や、電力消費の増加が指摘され、ユーザーの間で懸念が広がった。これに対し、AMDのCPUは相対的に安定性が高く、電力効率にも優れていたことが、買い替えの選択肢として支持されたと考えられる。
この動向は、ゲーミングPCやワークステーション市場にも影響を与えている。特に、ハイエンドPC向けの「Ryzen 9000」シリーズは、シングルスレッド性能やマルチスレッド処理において優れたパフォーマンスを発揮し、プロフェッショナル用途でも需要を伸ばした。一方で、インテルは「Arrow Lake-S」プロセッサを投入し、シェア回復を狙っているが、その効果がどこまで続くかは不透明である。
ノートPC市場でのAMDの成長とインテルの優位性
ノートPC市場では、AMDのシェアが23.7%まで拡大したものの、依然としてインテルが優勢を維持している。2024年第4四半期時点で、インテルのノートPC向けCPUの販売台数シェアはAMDの3倍に及んでおり、市場の大部分を占めている。しかし、AMDの成長は着実に進んでおり、その背景には性能向上と省電力性の向上がある。
AMDは「Phoenix」や「Hawk Point」などの最新APU(Accelerated Processing Unit)を導入し、特にバッテリー駆動時間の改善に注力した。これにより、従来はインテルの独壇場であった薄型・軽量ノートPC市場にも食い込むことができた。
また、統合GPU性能の向上により、エントリークラスのゲーミングノートPC市場でも存在感を強めている。これらの要素が組み合わさり、AMDのノートPC市場でのシェア拡大を後押しした。
一方で、インテルは「Arrow Lake」や「Lunar Lake」シリーズを投入し、性能向上とAI機能の強化を進めている。特に「Lunar Lake」では、専用のAIアクセラレーターを搭載し、動画編集や画像処理などのクリエイティブ用途において競争力を持たせている。
さらに、インテルはOEMメーカーとの関係が強固であり、大手ノートPCブランドとの協業を通じて市場の優位性を維持している。このため、AMDがインテルのシェアを大幅に奪うには、さらなる技術革新やブランド戦略の強化が必要となる。
サーバー市場におけるAMDの躍進と今後の展望
サーバー向けCPU市場では、AMDが25.1%の市場シェアを獲得し、収益シェアに至っては35.5%に達した。これは、エンタープライズ市場やクラウドデータセンター向けの「EPYC」シリーズの採用が拡大していることを示している。
特に、「Bergamo」や「Genoa-X」といった高コア数のプロセッサが、データセンター事業者やクラウドプロバイダーに高く評価され、インテルの「Xeon」シリーズに対抗する形でシェアを奪っている。
AMDのサーバー市場での成功の要因の一つは、性能と消費電力のバランスの良さにある。高密度なコア設計と最新の製造プロセスにより、同じ電力消費量でもより高い計算能力を提供できる点が、データセンター運営者にとって魅力となっている。また、価格面でも競争力があり、コストパフォーマンスの面でもインテル製品より優れていると評価されている。
一方で、インテルは「Emerald Rapids」や「Sierra Forest」などの新型Xeonプロセッサを発表し、シェアの巻き返しを狙っている。特に、「Sierra Forest」は効率コア(E-Core)を搭載した設計で、クラウド向けワークロードの最適化が進められている。
しかし、AMDは次世代EPYC「Turin」シリーズを控えており、さらなるシェア拡大の可能性を秘めている。サーバー市場では、AIやHPC(高性能計算)向けの需要が拡大する中で、AMDとインテルの競争が今後も激化していくことは間違いない。
Source:Tom’s Hardware