AMDはCEOリサ・スー氏の指導のもと、AI市場でのリーダー企業としての地位を確立しようとしている。同社の新型GPU MI325およびMI350シリーズは、NVIDIAの製品群に対抗し、データセンターおよびAI分野でのシェア拡大を図る重要な武器とされる。
第3四半期の業績も良好で、AI関連収益は5億ドルを突破し、市場が「AIスーパーサイクル」に突入したとの認識を示した。さらに、オープンソースソリューションROCmスタックやRyzen AI Proシリーズの投入により、柔軟性とコストパフォーマンスの高さで顧客にアピールしている。
今後のAI市場拡大の中で、AMDはパートナーシップや買収を通じたエコシステムの強化も進めており、NVIDIAとの競争が激化していく見通しである。
MI325とMI350シリーズがもたらすAMDのAI市場での戦略的転換点
AMDの新型GPU MI325とMI350シリーズは、AI市場でのNVIDIAに対する戦略的武器とされている。CEOリサ・スー氏が「ゲームチェンジャー」として強調するMI325は、NVIDIAのH200シリーズと直接競合する製品として注目を集めているが、その背景にはAMDが長年強化してきたデータセンター向けの技術がある。
AI向けGPU市場は、推論とトレーニングワークロードの両方で高性能化が求められており、AMDはこれに対応するために急速に製品開発を進めている。
アンドリュー・ディックマン氏が述べたように、MI325やMI350シリーズは特に特定のソリューションに最適化された場合、NVIDIAを上回る可能性を秘めている。この最適化の柔軟性は、ROCmスタックといったオープンなソフトウェアエコシステムの活用が鍵である。
閉じたエコシステムのNVIDIAに対し、AMDはオープンな選択肢を提供することで、AI開発者に幅広いアプローチを提示している。今後、これらの製品が市場でどのように受け入れられるかが、AMDのAI分野での成長を左右する重要な要素となるだろう。
AIスーパーサイクルがもたらす市場の変革とAMDの成長機会
リサ・スー氏は、AI市場が「スーパーサイクル」に突入したとの見解を示している。第3四半期の決算では、AI関連収益が5億ドルを超え、同社がAI分野でのさらなる成長を見込んでいることを示した。
AI需要の増加は、計算リソースの拡大を求められる市場全体のトレンドであり、AMDのEPYCとInstinctデータセンター製品が主力となっている。特にデータセンター市場での収益は前年比122%増となっており、これはAI計算に対する企業の需要が急速に拡大していることを示している。
しかし、この成長が持続するためには、市場競争が激化する中でどのようにシェアを獲得し続けるかが重要な課題となる。AI市場での成長機会に自信を見せるAMDであるが、スー氏は四半期ごとの売上予測が難しいことを認めている。これはAI需要の不確実性を伴う成長分野においては避けられない現象であり、AMDが柔軟に対応できるかどうかが今後の鍵となると考えられる。
パートナーシップと買収が支えるエコシステム拡充の戦略
AMDは、AI分野での市場競争力を強化するため、さまざまな企業とのパートナーシップと戦略的買収を積極的に進めている。同社はMetaやMicrosoft、Oracleなどと提携し、AMDのGPUを活用したAI開発支援を行っている。たとえば、Metaのオープンソースモデル「Llama 3.2」への技術提供や、MicrosoftのCopilot+がAMD搭載PCで利用できるようにする取り組みが挙げられる。
さらに、AMDはZT Systemsの買収を発表し、これによりデータセンター向けのAIコンピューティングインフラを強化する見込みである。加えて、x86エコシステムの拡大を目的としたIntelとの協力も重要な取り組みである。リサ・スー氏は、Dell、HP、Lenovoなどが参加するアドバイザリーグループの設立を通じて、x86アーキテクチャが今後も主要な計算プラットフォームとして成長を続けるための土台を築こうとしている。
このようにAMDは、パートナーシップと買収を組み合わせることで、AI市場での長期的な競争力の向上を図っている。