インテルは、データセンター向け次世代Xeonプロセッサ「Clearwater Forest」の発売を2026年上半期に延期すると発表した。当初は2025年のリリースが予定されていたが、1~2四半期の遅延となる。一方、同じ18Aプロセス技術を採用するクライアントPC向けの「Panther Lake」は、2025年下半期の発売予定を維持している。

この発表は、2024年第4四半期の決算報告と同時に行われ、同社は巨額の損失を報告している。さらに、AI向けGPU「Falcon Shores」の開発中止も明らかにされ、急成長するAI市場における競争力に影響を及ぼす可能性がある。

18Aプロセスの進捗と課題 Clearwater Forestの延期に影響を与えた要因

インテルが次世代データセンター向けプロセッサ「Clearwater Forest」の発売を2026年上半期に延期した背景には、18Aプロセスの進捗と技術的課題が影響している。18Aプロセスは、インテルが独自に開発を進めている1.8nmクラスの半導体製造技術であり、業界でも注目されている。しかし、同プロセスの量産に向けた歩留まりやコストの最適化が依然として課題となっている。

特に、Clearwater Forestは18Aプロセスを採用する最初のデータセンター向け製品であり、チップの構造としてFoveros 3D技術を活用したパッケージングが求められる。このパッケージング技術は、チップレットの統合を可能にするが、設計の複雑さが増し、製造の難易度が上がる。今回の延期により、インテルはパッケージング技術の成熟を待つ必要があると判断した可能性が高い。

また、同じ18Aプロセスを使用する「Panther Lake」の開発は予定通り進んでいるものの、これはクライアントPC向けの製品であり、データセンター向けプロセッサと比較するとチップの構造が単純である。

サーバー向けチップは、電力効率やコア数、メモリ帯域など、多くの要素を最適化する必要があるため、プロセス技術の成熟度がより強く求められる。これらの要因が、Clearwater Forestの延期に影響を与えたと考えられる。

競争が激化するデータセンター市場 インテルの遅れがもたらす影響

データセンター向けプロセッサ市場では、インテルの競合であるAMDやNVIDIAが急速にシェアを拡大している。特にAMDは、「EPYC」シリーズのプロセッサで高性能かつ電力効率の優れた製品を提供しており、データセンター事業者の支持を集めている。

また、NVIDIAはAI分野に特化したHopperアーキテクチャのGPUを市場に投入し、クラウド企業やAI研究機関からの需要を獲得している。

今回のClearwater Forestの延期により、インテルは競争が激化する中でさらなるシェアの低下を招く可能性がある。特に、AIワークロードの増加により、データセンター事業者がより性能の高いプロセッサを求めている現在、発売の遅れはインテルにとって大きな痛手となる。

一方、AMDやNVIDIAは、2025年以降も新製品を予定しており、技術的な優位性を維持しながら市場拡大を進めるだろう。

また、インテルの顧客であるクラウド事業者や企業ユーザーにとっても、Clearwater Forestの延期は影響が大きい。データセンターの運用計画は通常、数年単位で設計されるため、プロセッサの遅延は導入計画の見直しを迫る。

結果として、代替製品としてAMDのEPYCやNVIDIAのGrace Hopperなどが採用される可能性も高まる。インテルが2026年上半期までにClearwater Forestを市場に投入できなければ、競争力のさらなる低下が避けられない状況になるだろう。

インテルの今後の戦略と18Aプロセスの成否が鍵を握る

Clearwater Forestの延期は、インテルの長期的な技術戦略にも影響を与える。現在、インテルは「ムーアの法則」を維持するために、新しいトランジスタ技術である「RibbonFET」や、電力効率を向上させる「PowerVia」を18Aプロセスに導入している。

これにより、従来のプロセス技術と比較して、高密度かつ低消費電力のチップを製造できるようになる。しかし、これらの技術が実際に量産可能なレベルに達するかどうかが、インテルの今後の競争力を左右する。

さらに、インテルはファウンドリー事業「Intel Foundry Services(IFS)」を推進しており、18Aプロセスを外部企業にも提供する計画を進めている。

もしClearwater Forestの量産が成功すれば、インテルは18Aプロセスの信頼性を証明できることになり、他の半導体企業からの受託製造契約を獲得する可能性がある。しかし、量産が遅れたり、コスト競争力が確保できなければ、インテルのファウンドリー戦略にも影響を及ぼすことになる。

インテルは今回の延期を発表したものの、18Aプロセスの進捗については楽観的な見方を示している。暫定共同CEOであるデビッド・ジンスナー氏は、「新しいプロセスには常に課題があるが、私たちは競争力のある技術を提供できると確信している」とコメントしており、Clearwater Forestの成功に向けた取り組みを続ける姿勢を示している。

今後、インテルが18Aプロセスを安定した歩留まりで量産できるかが、同社の競争力を維持する上での重要なポイントとなる。

Source:Tom’s Hardware