NVIDIAのCEO、ジェンセン・フアンは、次世代GPU「ブラックウェル」の生産が遅れた原因となった設計ミスについて「100%我々の責任である」と初めて公に認めた。製造を担当していたTSMCが設計上の欠陥を発見したため、NVIDIAは急遽設計を修正し、生産再開に向けた対応を強化した。TSMCとの関係悪化を示唆する噂について、フアンはこれを完全に否定し、むしろ協力関係が生産回復に貢献したと強調している。

設計ミスの原因とその影響

NVIDIAの次世代GPU「ブラックウェル」において生産が遅れた最大の要因は、プロセッサダイに関連する設計ミスである。この設計上の欠陥は製造段階での歩留まりを大きく低下させ、生産効率が大幅に下がった。この問題を発見したのは、NVIDIAの主力製造パートナーである台湾のTSMCであり、欠陥が見つかったことでNVIDIAは生産ラインの全面的な見直しを余儀なくされた。

この設計ミスによってブラックウェルGPUの量産スケジュールは大幅に後退し、市場への供給が遅れる結果となった。特に、NVIDIAが期待を寄せていたAI向けの高性能GPU市場において、この遅延は競争相手とのシェア争いに影響を与える可能性がある。しかしながら、NVIDIAは迅速に設計を修正し、量産へ向けた再起を図った。この設計ミスがどのような技術的側面で発生したのかは詳細には明らかにされていないが、プロセッサダイの複雑さが一因であったことが推測される。

設計ミスが直接的にNVIDIAの製品ライン全体に及ぼす影響は限定的であるが、この問題は同社の技術的信頼性に疑問を投げかけるものとなっている。

修正作業と量産再開までの経緯

ブラックウェルGPUの設計ミスが発覚した後、NVIDIAは直ちに問題を修正するための措置を講じた。同社は、複数のチップを同時に設計し直し、量産までのプロセスを迅速に進める必要があった。ジェンセン・フアンCEOは、ブラックウェルの設計を最初からやり直すことで、この問題に対処したと説明している。

NVIDIAは設計上の問題を2024年8月末に解決し、その後の生産プロセスを急ピッチで進めた。修正された設計は、従来の製品と比べて生産効率が向上し、歩留まりが改善されたとされる。この変更によって、同社はAI市場向けの需要に対応することができるようになった。

修正作業が完了したにもかかわらず、ブラックウェルGPUの供給は依然として需給ギャップが生じており、2025年まで本格的な出荷が始まらない見通しである。修正後の設計が市場でどの程度の成功を収めるかは、これからの販売実績と顧客の評価によって明らかになるだろう。

TSMCとの連携とCEOの反論

TSMCが設計ミスを発見したことを受け、一部メディアではNVIDIAとTSMCの関係に緊張が走っているとの報道があった。しかし、ジェンセン・フアンCEOはこの報道を「フェイクニュース」と一蹴し、TSMCとの関係は非常に良好であると明言した。実際、TSMCはNVIDIAの製造問題を迅速に解決するために協力を惜しまなかったとされる。

フアンCEOは、TSMCがNVIDIAに対して大きな貢献をしたことを強調し、特にブラックウェルGPUの製造回復において重要な役割を果たしたと語っている。TSMCはNVIDIAのcuLithoプラットフォームを活用して製造プロセスを最適化し、チップ構造のシミュレーションを迅速化することで生産速度を大幅に向上させた。

この協力関係により、ブラックウェルGPUの生産再開が早まった一方で、設計ミスによる初期の遅れは完全には解消されていない。それでも、両社のパートナーシップは今後も継続し、技術面での課題を克服するための重要な要素となり続けるだろう。

ブラックウェルGPUの需要と未来展望

ブラックウェルGPUは、特にAI市場において圧倒的な需要を集めている。この新しいGPUは、従来のH100に比べてAIモデルを25倍効率的に実行できるため、GoogleやMicrosoft、Metaといったテクノロジー企業が積極的に導入を進めている。Oracleは、そのZettascaleスーパーコンピュータ向けに131,000個のブラックウェルGPUを注文している。

しかし、ブラックウェルGPUの供給は生産遅延の影響を受け、2025年まで本格的な出荷が見込まれていない。この需給ギャップがどの程度のビジネスチャンスを逸失させるかは不明だが、NVIDIAはTSMCと協力し、生産効率を高めることでこの課題に対応しようとしている。

また、データセンターの運営を行うネビウスも、フィンランドのデータセンターにブラックウェルGPUを導入する計画を立てており、今後さらに需要が拡大する見込みである。NVIDIAがこの強い需要に応えることができれば、同社の市場シェアはさらに拡大することが予想される。