Windows 11の標準アプリ「フォト」に、新たにAIを活用した「生成消去(Generative Erase)」機能が追加された。これにより、写真内の不要なオブジェクトを選択し、周囲と違和感なく馴染ませながら削除できる。

背景に写り込んだ不要な人物を消したり、機密情報を隠したりする用途に適しており、手順もシンプルだ。編集モードで「消去」ツールを選択し、ブラシで消したい部分をなぞるだけで自動的に適用される。

ただし、複雑な背景では違和感が残る場合もあり、完璧な仕上がりには限界がある。より高度な編集が必要なら、Photoshopなどのプロ向けツールが依然として有力な選択肢となるだろう。

AIでどこまで自然に消せるのか フォトアプリの「生成消去」を検証

Windows 11の「フォト」アプリに搭載された「生成消去(Generative Erase)」は、画像内の不要なオブジェクトを削除し、周囲と違和感なく馴染ませることができる。しかし、実際の使用感はどうなのか。

テストの結果、シンプルな背景ではほぼ完璧な消去が可能だった。例えば、白い壁や青空など、均一な色の背景では削除後の違和感がほとんどなく、元から何もなかったかのような仕上がりになる。

一方で、背景に模様や複雑なオブジェクトが含まれている場合、消去した部分に歪みや不自然な塗りつぶしが発生しやすい。特に、影や光のグラデーションが含まれる写真では、消去後の補完がうまくいかず、不自然なぼやけが目立つことがあった。

また、複数回にわたって調整を加えることで精度が向上するケースもある。例えば、人物が密集したグループ写真の一部を削除する場合、一度では不自然な歪みが生じることが多かったが、何度か試すことで馴染みやすくなる傾向があった。とはいえ、完全に違和感をゼロにするのは難しく、用途によっては別の編集ソフトと併用する必要がありそうだ。

「ペイント」との違いは細かい調整機能 AI編集ツールとしての立ち位置

「フォト」アプリの「生成消去」と似た機能は、Windows 11の「ペイント」アプリにも搭載されている。どちらもAIを活用したオブジェクト削除が可能だが、細かい操作性に違いがある。

「ペイント」アプリのオブジェクト消去機能は、自由なブラシツールを用いることで、より細かい範囲の調整が可能となっている。例えば、髪の毛や布のシワといった複雑な部分を慎重になぞりながら編集する場合、「ペイント」の方が適している。一方、「フォト」アプリの「生成消去」はシンプルな操作性を優先しており、ブラシツールの選択肢が限られる。

また、「フォト」アプリでは基本的にワンクリックで修正が適用されるが、「ペイント」では消去後にさらに手動で修正を加えることができる。そのため、より精密な調整を求める場合は「ペイント」が有利だ。しかし、「フォト」アプリは閲覧と編集が一体化しており、日常的な写真整理の中で手軽に消去機能を使える点が強みとなる。

両者の使い分けとして、短時間で簡単に編集したいなら「フォト」、細かい修正をしたいなら「ペイント」という選択が適している。

「生成塗りつぶし」との違い 高度な編集には制約も

「生成消去」とよく比較される機能として「生成塗りつぶし(Generative Fill)」がある。この機能は、単にオブジェクトを消すだけでなく、削除後のスペースをより自然な形で補完する技術だ。しかし、現時点で「生成塗りつぶし」はWindows 11の標準アプリでは利用できず、一部の「Copilot+ PC」限定の機能となっている。

例えば、人物が持っているグラスを削除する場合、「生成消去」ではグラスの輪郭をぼかして処理するだけのため、不自然な手の形が残ることが多い。しかし、「生成塗りつぶし」を使えば、手の形を考慮した自然な補完が可能となる。そのため、より精度の高い編集を求める場合、「生成塗りつぶし」の方が適しているが、利用には制限がある点に注意が必要だ。

また、「Photoshop」の「生成塗りつぶし」はより高度なAI補完を行い、消去した部分に適切な質感や光の加減を再現できる。そのため、プロフェッショナルな用途では「フォト」の「生成消去」ではなく、「Photoshop」などの専用ツールを利用する方が望ましい。

とはいえ、無料で手軽にオブジェクトを消去できる「フォト」アプリの進化は、Windows 11の標準ツールとして大きなメリットをもたらしている。今後、さらに精度が向上すれば、「フォト」だけで完結できる場面も増えていくだろう。

Source:YTECHB