かつてサイバーパンク作品に描かれていた「サイバーデッキ」の夢が、現実の技術によって実現しようとしている。上海守界科技の子会社が開発した『Lunar』は、折りたたみ式のメカニカルキーボードと高性能Ryzen 7 8840Uを搭載したミニPCを融合させた革新的なデバイスだ。手のひらサイズのこのポケットPCは、15Wの低消費電力設定ながら、50Wまでの性能を引き出すことが可能となっている。

サイバーデッキの夢が現実に:新しい形のポータブルPC

かつてサイバーパンク作品の中で描かれた「サイバーデッキ」というコンセプトが、現実世界で具現化されようとしている。『Neuromancer』の世界では、ポータブルなコンピュータ「デッキ」は主人公たちが仮想空間を駆け巡るための必須ツールだった。そのビジョンを踏襲する形で登場したのが、上海守界科技が手掛ける「Lunar」だ。折りたたみ式のメカニカルキーボードにハイパフォーマンスなRyzenプロセッサを搭載したこのデバイスは、従来のPCやラップトップとは一線を画す。

Lunarは、ミニPCの市場に新たな風を吹き込む存在である。これまでミニPCは、コンパクトなボディでありながら、どこか性能が限られていた。しかし、この折りたたみ式キーボードPCは、コンパクトさと高性能を両立させ、持ち運びやすさとデスクトップ並みのパワーを提供する。ユーザーは、手のひらサイズの機器で、本格的なPC作業をこなせるため、技術的な進化の象徴とも言える。

従来のノートパソコンやミニPCの限界を打破し、より自由度の高いコンピューティング環境を提供するこのデバイスは、新しい世代のポータブルPCの標準となる可能性を秘めている。

Ryzen 7 8840U搭載で高性能を実現

Lunarの核心にあるのが、Ryzen 7 8840Uという強力なSoC(システム・オン・チップ)である。この「Hawk Point」世代のプロセッサは、8コアを搭載し、最大50Wの性能を発揮することが可能だ。通常は省電力モードで15Wの消費電力に抑えられているが、必要に応じて性能を引き上げることができる点が魅力である。

このRyzen 7 8840Uは、AMDの最新アーキテクチャ「Zen 4」を採用しており、モバイルデバイス向けのSoCとしては非常に高いパフォーマンスを持つ。グラフィック面でも優れており、統合されたRadeon GPUが内蔵されているため、軽めのゲームや3Dモデリングなどもこなすことができる。このため、Lunarは仕事やエンターテインメントの両面で非常に優れたデバイスとして機能する。

パフォーマンスを求めるユーザーにとって、このRyzen SoCの搭載はLunarの大きな強みだ。従来のモバイルデバイスでは難しかった高度な処理を、ポータブルな形で実現している点は、技術の進歩を強く感じさせる。

ミニPCとキーボードの融合:折りたたみデザインの利便性

Lunarの最もユニークな特徴は、ミニPCとキーボードが一体化した折りたたみ式デザインにある。閉じた状態では手のひらサイズに収まるコンパクトな筐体であり、持ち運びやすさが際立っている。このデザインは、従来のノートパソコンやタブレットとは異なる新しい体験を提供する。

Lunarは、折りたたむとキーボード部分がシザースイッチ式のメカニカルキーボードとして使用可能となる。さらに、内蔵のトラックパッドも搭載されており、外部デバイスを接続せずに基本的な操作が完結する点も利便性が高い。持ち運び時にかさばることなく、必要に応じてすぐに使用できるデバイスは、モバイルワーカーやノマドライフを実践するユーザーにとって理想的な選択肢となるだろう。

また、キーボード自体の使用感も高く評価されている。しっかりとした打鍵感があり、タイピングに優れた快適性を提供する。持ち運びやすさと作業効率を両立させるこのデザインは、まさにモダンな働き方に対応した新しい形のコンピューティングツールだと言える。

圧倒的なスペックと価格設定のバランス

Lunarはその先進的なデザインやハードウェアにもかかわらず、非常に競争力のある価格設定を実現している。ベースモデルは、16GBのLPDDR5Xメモリと512GBのNVMe SSDを搭載して579ドルという価格で提供されており、これは市場の他の競合デバイスと比較しても十分に魅力的だ。

さらに、ストレージは最大1TB、メモリは最大32GBまで拡張可能であり、スペックに応じた幅広い選択肢が用意されている。高性能を追求するユーザーはもちろん、コンパクトさを求めるユーザーにも手の届く価格帯であることが大きな強みだ。

この価格設定は、ハードウェアの性能やポータビリティと見合ったものだと言える。競合機種に比べ、Lunarは外部接続性にも優れており、USB Type-CやUSB4に対応したポートを複数備えているため、様々な周辺機器との連携も容易である。バッテリー容量も59Whと十分であり、長時間の使用にも耐えうる仕様となっている。