Intelの最新デスクトッププロセッサシリーズ「Core Ultra 200S」がついに登場した。新たに採用されたArrow Lake-Sアーキテクチャは、従来の一枚岩設計から脱却し、タイル構造を採用することで大幅な効率向上を実現している。

特に、Intelのデスクトッププロセッサとして初めてNPUを統合した点が注目されており、これによりクリエイティブな作業やAI関連の処理性能が向上している。

Arrow Lake-Sアーキテクチャの概要と特徴

Intelの新しいCore Ultra 200Sシリーズは、Arrow Lake-Sアーキテクチャを採用した点が最大の特徴である。従来のモノリシックな設計を廃し、5つのタイル構造を採用することで、効率性と性能の向上を図っている。このタイル構造により、CPUの性能を柔軟に調整できるとともに、消費電力の最適化が進んでいる。

特に注目すべきは、Core Ultra 200SシリーズがIntelのデスクトッププロセッサとして初めてNPU(Neural Processing Unit)を統合した点である。これにより、AI関連のタスクや機械学習の処理が大幅に高速化され、クリエイティブな作業や最新のアプリケーションにも対応しやすくなっている。GPUタイルも搭載されており、グラフィックス処理も可能だが、主にディスクリートGPUとの併用を想定している。

また、タイル間を高速インターコネクトで結び、3D Foverosパッケージング技術を活用することで、物理的なレイアウトの効率も向上している。これにより、より多くのコアや機能を小型化されたプロセッサ上に搭載することが可能となっている。従来のCPUとは一線を画す新しいアプローチが導入されたことで、今後のIntelプロセッサの方向性を示す重要な製品と言えるだろう。

新CPU「Core Ultra 5 245K」と「Ultra 9 285K」の詳細

IntelのCore Ultra 200Sシリーズには、ハイエンドモデル「Core Ultra 9 285K」とミドルレンジモデル「Core Ultra 5 245K」がラインアップされている。これらのCPUは、どちらもPコア(高性能コア)とEコア(省電力コア)のハイブリッド構造を採用しており、特にマルチスレッド処理において優れたパフォーマンスを発揮する。

「Core Ultra 9 285K」は、8つのPコアと16のEコアを搭載し、合計24スレッドに対応している。L3キャッシュは36MB、L2キャッシュは40MBで、最大動作クロックは5.7GHzに達する。一方、「Core Ultra 5 245K」は、6つのPコアと8つのEコアを持ち、14スレッドに対応しており、L3キャッシュは24MB、L2キャッシュは26MB、最大クロックは5.2GHzである。

両モデルとも、熱設計電力(TDP)は125Wであるが、負荷状況に応じて最大250Wまで上昇する設計となっている。また、「K」モデルは統合GPUを持ち、ディスクリートGPUなしでもグラフィックス処理が可能だが、主に外部GPUとの併用が推奨される設計となっている。価格帯は、ハイエンドモデルが589ドル、ミドルレンジモデルが約300ドルである。

性能テストと競合製品との比較

IntelのCore Ultra 200Sシリーズは、前世代のRaptor Lakeシリーズと比較して大幅な性能向上を果たしている。特に、シングルスレッド性能の向上が顕著であり、Pコアのアーキテクチャ改善により、一般的なタスクやゲームでのレスポンスが向上している。また、Eコアの効率性も高まり、マルチタスクや軽量な処理においても省電力で優れた性能を発揮する。

しかし、競合製品であるAMDのRyzenシリーズと比較すると、マルチスレッド性能においてはやや劣る部分がある。これは、Intelがシンメトリック・マルチスレッディング(SMT)を廃止し、単純なスレッド数ではRyzenに劣るためである。一方で、Intelはこれに対してシングルスレッド性能の強化を図り、実際の使用シナリオにおいては総合的なパフォーマンスが向上することを目指している。

また、GPU性能に関しては、統合GPUが搭載されているものの、ゲーマーやクリエイター向けにはディスクリートGPUとの併用が推奨されており、特に高性能なグラフィックス処理には外部GPUが必要である。全体として、ゲームやクリエイティブ用途において優れたバランスを保ちつつ、競合製品に対抗する力を持っていると言える。

新世代のデスクトップCPUにおけるゲーム性能とクリエイティブ向けパフォーマンス

Core Ultra 200Sシリーズは、ゲーム性能とクリエイティブ向けパフォーマンスにおいても進化を遂げている。シングルスレッド性能の向上により、最新のAAAタイトルでも高フレームレートを維持しやすく、特にGPUとの併用によって、4K解像度でのゲームプレイも快適に行える。

また、クリエイター向けには、映像編集や3Dレンダリング、AI処理などで強力なパフォーマンスを発揮する。特にNPUの搭載により、AI関連の処理が高速化され、ディープラーニングや画像認識、動画編集などの作業が効率よく行えるようになっている。複数の4Kモニターを同時に接続できる点も、クリエイティブ作業における利便性を高めている。

ただし、マルチスレッド性能に関しては、スレッド数の減少が一部の重たいマルチタスクや複数の同時作業において影響を与える可能性がある。総合的には、ゲームユーザーやクリエイターにとってバランスの取れた選択肢であり、競合製品に対しても強力なポジションを築いている。