AMDの最新APU「Ryzen AI Max+ 395」がASUSのROG Flow Z13ゲーミングタブレットに搭載される。このAPUは16コア32スレッドのZen 5 CPUと40基のRDNA 3.5コンピュートユニットを統合し、ベンチマークでIntelのCore i9-13900HおよびNVIDIA RTX 4060を超える性能を記録した。
Geekbenchのテスト結果では、Ryzen AI Max+ 395がシングルコア「2849」、マルチコア「20,708」という高スコアをマークし、AMDの従来の最上位Ryzen 9 7945HX3Dすら上回る実力が示されている。
Ryzen AI Max+ 395のアーキテクチャと革新性
Ryzen AI Max+ 395は、AMDが投入する次世代APUとして、その設計に革新的な要素が多数盛り込まれている。Zen 5アーキテクチャを採用し、16コア32スレッドを備えるCPU性能はデスクトップ向けプロセッサにも匹敵するレベルである。
また、40基のRDNA 3.5コンピュートユニットを統合したRadeon 8060Sは、GPU性能においても既存のラップトップ製品を凌駕する。これにより、従来のノート型デバイスが抱える性能面の制約を大幅に克服している。
特筆すべきは、Ryzen AI Max+ 395が最大96GBのDDR5 RAMをサポートする点である。これは、Intelの「Lunar Lake」が提供する最大32GBの制限を大きく超えており、プロ仕様のクリエイティブ作業やマルチタスク性能において競合他社製品に対して大きなアドバンテージをもたらす。これらのスペックは、ゲーミングにとどまらず、映像編集やAI開発などの負荷の高い用途にも対応可能な柔軟性を示している。
こうした性能向上は、モバイルデバイスの可能性を拡張するだけでなく、従来のラップトップとデスクトップの境界線を曖昧にする。ROG Flow Z13のようなデバイスにこのAPUが搭載されることで、ユーザー体験は飛躍的に向上する可能性が高い。
Geekbench結果が示す性能の進化と課題
Ryzen AI Max+ 395のGeekbenchスコアは、現時点でのモバイルプロセッサとしては驚異的な数値を示している。シングルコアスコアは「2849」、マルチコアスコアは「20,708」に達し、従来のAMD製Ryzen 9 7945HX3DやIntel Core i9-13900Hを大幅に上回る。この結果は、APUの統合設計が性能を最大限に引き出す成功例といえる。
しかし、こうした高いパフォーマンスには課題も潜む。高性能なZen 5コアとRDNA 3.5 GPUユニットを搭載することで消費電力の増加が懸念されており、効率的な冷却設計が求められる。ASUS ROG Flow Z13のような薄型デバイスでは、これらの熱処理が性能を発揮する鍵となる。これに対し、AMDはStrix Haloシリーズが新しいプロセス技術を採用しており、これが熱効率と電力効率の両面で改善をもたらすと発表している。
また、Geekbenchスコアは一定のテスト条件下での結果であり、実際の使用状況でのパフォーマンスがどこまで再現されるかは未知数である。この点については、今後の実機レビューや長期使用データの蓄積が必要となる。
AMDの戦略とモバイル市場への影響
AMDがStrix Haloシリーズを市場に投入する狙いは明確である。IntelやNVIDIAが優位性を持つモバイルデバイス市場において、CPUとGPUを統合したAPUで新たな基準を確立しようとしている。この戦略により、モバイルゲームデバイスやクリエイティブ向けノートPC市場における競争がさらに激化するだろう。
特に注目すべきは、AIワークロードへの対応力である。Ryzen AI Max+ 395は名前の通り、AI関連処理において優れた性能を発揮するよう設計されている。これは、今後ますます需要が高まる機械学習やリアルタイム処理などにおいて大きな武器となる。TweakTownの報道によれば、AMDはStrix Haloを通じて「次世代ノートPCの標準」を目指すとしている。
一方で、競合他社の反応も無視できない。Intelは「Lunar Lake」で低電力かつ高効率な設計を掲げており、NVIDIAもGPU性能で依然として市場の中心を占める存在だ。AMDのアプローチが市場で受け入れられるには、性能だけでなく価格や供給体制、エコシステム全体の進化が重要な要素となる。
結果として、Strix Haloシリーズがモバイルデバイス市場に与える影響は大きい。消費者にとっては選択肢の広がりを意味し、業界全体にとってはさらなる技術革新を促す原動力となるだろう。