AMDが発表したRyzen AI 9 HX 370が、ゲーミング性能においてIntel Core Ultra 7 258Vを最大75%上回ると主張し、注目を集めている。ベンチマーク結果では、『Call of Duty』や『Forza Horizon 5』など高負荷なゲームでフレームレートの大差を示したが、背後にはFSR 3やHYPR-RXといったAMD独自の性能向上技術が影響している。

純粋な性能比較では互角であり、両者の得意分野が分かれる形となった。モバイルゲーミング市場における競争が激化する中、次なる革新がどのような形で訪れるのか期待が高まる。

AMD独自の技術が生んだRyzen AIの「圧倒的性能」の秘密

Ryzen AI 9 HX 370がゲーミング性能で突出した結果を出した背景には、AMDが持つ高度な性能向上技術がある。その中でも特筆すべきはFSR 3(FidelityFX Super Resolution 3)である。

これはAIを活用したフレーム生成技術で、フレームレートを大幅に向上させることが可能であり、多くのゲームタイトルで標準機能として採用されている。この技術は、特にGPUやCPUへの負荷が高い状況で効果を発揮し、ゲーマーに滑らかな映像体験を提供する。

さらにHYPR-RXやAFMF 2などの技術も、AMDの戦略を支える柱となっている。これらはリアルタイムで解像度を調整し、動的にパフォーマンスを最適化する仕組みである。一方、Intel Core Ultra 7 258Vが持つ技術は主にXeSS(Xe Super Sampling)に限定されており、対応ゲームの範囲が狭いという弱点がある。結果として、AMDは技術の幅広い互換性と実用性で優位に立っているといえる。

こうした技術の活用による性能向上が「純粋な性能比較」に影響を与えている点は否定できない。ただし、これを「実際のCPUの能力」とみなすかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれる。ハードウェアそのものの実力に加え、ソフトウェア技術が競争の要因となる時代が訪れていると考えられる。

純粋性能での比較は「ほぼ互角」だが用途に違い

性能向上技術を除いた場合、AMD Ryzen AI 9 HX 370とIntel Core Ultra 7 258Vの性能はほぼ同等である。両者とも最新の製造プロセスを採用しており、エネルギー効率や処理速度で一定の基準を満たしている。実際に、複数のゲームタイトルにおけるベンチマークでは、CPUごとに得意とする場面が異なり、単一の勝者を決めることは難しい。

たとえば、『Call of Duty』ではRyzenが優れた結果を見せたが、Intelは処理効率を生かした戦略ゲームやシミュレーションゲームで効果的なパフォーマンスを発揮することがある。このような違いは、各CPUが持つアーキテクチャや処理設計の違いに起因している。AMDはAI技術による並列処理を強化する一方、Intelは特定のタスクでの最適化に注力している。

そのため、ユーザーは自分が主に利用するアプリケーションやゲームの種類に応じてCPUを選ぶべきである。AMDとIntelの競争が進むことで、よりユーザーの選択肢が広がる可能性がある点は歓迎すべき変化といえる。

モバイルゲーミング市場が迎える技術競争の新局面

Ryzen AI 9 HX 370の登場は、単なる性能向上以上にモバイルゲーミング市場全体に変革をもたらしている。これまでモバイル向けCPUは、省電力や発熱管理といった基本性能が重視されてきた。しかし、近年のモバイルゲーミング需要の高まりにより、デスクトップ並みの性能を要求される場面が増えている。

AMDの戦略は、グラフィックスのアップスケーリングやAIを活用したフレーム生成など、最新の技術を積極的にモバイルプラットフォームに導入する点にある。一方、Intelも今後、新技術を採用したモデルを発表する可能性があり、市場競争はさらに激化することが予想される。

現時点では、AMDが性能向上技術の分野でリードしているように見えるが、最終的な勝敗を決するのはユーザー体験である。より滑らかでリアルな映像体験を提供できる企業が市場を制するだろう。この競争が、新たなイノベーションを生み出す起点となることに期待したい。