NetEaseが手掛ける「Marvel Rivals」で、macOSやLinuxなど非公式プラットフォームからエミュレーションソフトを利用してプレイしていたユーザーに課された100年の禁止措置が撤回されることとなった。同社はDiscordでの発表を通じ、今後のアップデートで誤判定を修正し、禁止を解除すると表明した。
この決定は、プレイヤーや開発者コミュニティからの強い反発を受けた結果であり、CodeWeaversのジェームズ・レイミーCEOによる直接的な働きかけもその背後にあった。NetEaseは今後、アンチチートシステムの改善を図るとし、非公式プラットフォームでのプレイ環境を取り巻く課題に向き合う姿勢を示している。
エミュレーションソフト利用者を巡るアンチチートの誤作動とは
「Marvel Rivals」で問題となったのは、macOSやLinux、Steam Deckといった非公式プラットフォームでのエミュレーションソフト利用を、NetEaseのアンチチートシステムが不正行為と誤認したことである。特にWindows環境を再現するソフトウェアであるProtonやParallelsが利用された場合、システムがチート行為と判断し、100年という極端な禁止措置が課された。この誤作動により、正規の購入ユーザーもゲームアクセスを失う事態が発生した。
NetEaseは公式Discordを通じて、この事象についてアンチチートシステムの「意図しない挙動」であると説明し、プレイヤーからの報告を受けて改善策を講じると発表した。同様の問題は他のゲームでも見られるが、「Marvel Rivals」のケースでは、禁止期間の長さが特に大きな議論を呼んだ。技術的背景としては、エミュレーション環境が一部の不正ツールに似た動作をすることが、誤認の原因とされる。
この事実を踏まえ、アンチチートシステムの設計には、広範な利用環境への配慮が必要である。今後、NetEaseが提示したアップデート内容によって、この課題がどの程度解消されるかが注目される。
CodeWeaversの働きかけと多様なプラットフォームへの対応
CodeWeaversのジェームズ・レイミーCEOがNetEaseに直接抗議を行ったことは、エミュレーション技術の普及とゲーム開発企業の対話の重要性を浮き彫りにした。CodeWeaversは「Crossover」というエミュレーション環境を提供し、macOSやLinuxでWindowsゲームを可能にする技術を開発している。レイミー氏の主張は、正規のエミュレーション利用が「チート行為」と見なされることが、不公平であるという点にあった。
現在、多くのゲーマーがエミュレーション環境を利用する理由には、非公式プラットフォームへの対応不足がある。特にmacOSやLinuxは、一部のユーザーにとって性能やコスト面で魅力的な選択肢だが、ゲーム開発側がネイティブ対応を行わないケースが多い。この現状が、エミュレーション利用を助長していると言える。
NetEaseが今後のアップデートでセキュリティメカニズムを改善すると発表したことは、多様なユーザー層への配慮として評価されるべきだ。ただし、すべてのエミュレーション環境を公正に評価することは技術的に難しく、ゲーム業界全体で対応策を模索する必要がある。
エミュレーション利用の増加とゲーム業界の未来
今回の問題は、エミュレーションソフトの利用が拡大する中で、ゲーム開発側の対応が不十分である現実を露呈したと言える。プレイヤーが公式に提供されるプラットフォーム以外でゲームを楽しむ理由は多岐にわたり、技術的制限だけでなく、ゲーム提供国やデバイスの選択肢に依存するケースも多い。
特にmacOSやLinuxでのゲーム環境が限られている現状において、エミュレーションは重要な選択肢となっている。これを受け、NetEaseの対応は業界全体の課題解決に向けた一歩となる可能性がある。だが、アンチチート技術がエミュレーションを正確に判断できるようになるには、さらなる技術革新が必要である。
ゲーム業界が多様なプラットフォームに対応することは、新規プレイヤー層の拡大にもつながる。NetEaseの動きはその好例であり、今後、他の開発企業がどのように対応していくかが問われるだろう。プラットフォームの壁を越えたゲーム体験の実現は、業界の次なる大きなテーマとなりそうだ。