AMDは、クラウド、エンタープライズ、人工知能(AI)向けに設計された次世代のEPYCサーバーCPUを発表した。この新しいプロセッサーはZen 5コアアーキテクチャを採用し、最大192コアを搭載しており、AI推論や高性能コンピューティングにおいて大幅な性能向上を実現する。AMDは、このCPUによりインテルを含む競合企業との競争力をさらに高める狙いを持っている。

AMDが最新EPYCサーバーCPUを発表、Zen 5コアアーキテクチャ搭載

AMDは、10月10日に開催された「Advancing AI」イベントで、新しいEPYCサーバーCPUを発表した。この新型CPUは、Zen 5コアアーキテクチャをベースに設計されており、最大192コアを搭載する高性能プロセッサーである。クラウドやエンタープライズ向けの汎用ワークロードに対応するだけでなく、AI推論や高度な計算処理にも適している点が大きな特徴だ。Zen 5は、4ナノメートルプロセスで製造され、前世代のZen 4と比較して、最大17%の命令実行効率(IPC)向上を実現している。

AMDのデータセンターソリューション事業の副社長であるフォレスト・ノロッド氏は、「新型EPYCプロセッサーはパフォーマンスの大幅な世代交代を象徴している」と述べ、競合他社に対しても優位性を強調した。この新しいCPUは、AIモデルの処理に特化したAMD Instinct GPUシリーズと組み合わせることで、さらなる性能向上が期待できる。AMDはこの製品により、AI時代に向けた市場でのリーダーシップをさらに強化していく構えである。

AIとエンタープライズ向けに192コアの性能を実現

新しいEPYCサーバーCPUは、特にAIとエンタープライズワークロードをターゲットに設計されている。最大192コアを搭載したZen 5cコアアーキテクチャは、並列処理やスループットを最適化しており、大規模なデータ処理やAI推論において高い効率を発揮する。特に、大量のAIモデルを同時に処理するデータセンターにとって、この高性能なプロセッサーは重要な役割を果たす。

従来のEPYCプロセッサーと比較して、新型のEPYC 9005シリーズは、AIや高性能コンピューティング(HPC)向けのワークロードに対して、最大37%のIPC向上を提供している。これにより、企業や研究機関がより迅速かつ効率的にAIソリューションを導入できるようになる。また、AMDは、データセンターの消費電力を削減し、コスト効率を大幅に改善することで、企業がAIやエンタープライズシステムに投資する際のリスクを低減できる点も強調している。

データセンターのコスト削減と効率向上への期待

AMDの新しいEPYCプロセッサーは、データセンター運用の効率を劇的に向上させる可能性がある。具体的には、従来のインテル製プロセッサーを搭載した7台のサーバーを、1台の新型EPYCサーバーで代替することができるとされている。これにより、データセンターの消費電力を削減し、総所有コスト(TCO)を60%以上削減することが可能である。さらに、エンタープライズ向けソフトウェアライセンスのコストも軽減され、企業は6か月から12か月の短期間で初期投資を回収できる見込みだ。

AMDのCEO、リサ・スー氏は、新しいEPYCプロセッサーの導入により、企業がデータセンターの近代化を迅速に進めることができると述べている。これにより、エネルギー効率が向上し、持続可能な運用が可能になるだけでなく、AIや高度なワークロードへの対応力も大幅に強化される。データセンターの最適化を図る企業にとって、この新型プロセッサーはコストパフォーマンスの面でも極めて魅力的な選択肢となるだろう。

GPU、DPU、ネットワークソリューションも強化

AMDは新しいEPYCサーバーCPUの発表に加え、AIと高性能コンピューティング(HPC)向けに設計された最新のGPUおよびネットワークソリューションも同時に発表した。特に注目されるのは、AMD Instinct MI325Xという新しいGPUであり、256GBのHBM3Eメモリと6TB/sのメモリ帯域幅を誇る。この新GPUは、2025年第1四半期にDellやHPなどのサーバーメーカーから提供される予定である。

さらに、AMDはデータ処理ユニット(DPU)としてPensando Salina DPUを発表。これは、ネットワーキングやセキュリティといったデータ処理タスクを担うことで、CPUのリソースを解放する役割を果たす。これにより、AIアプリケーションのパフォーマンスと効率が向上する。加えて、次世代ネットワークインターフェースカード(NIC)であるPollara 400 NICも発表され、AI向けに最適化された低遅延、高スループットのネットワークソリューションを提供する予定だ。これにより、AMDはAI時代における包括的なインフラソリューションを提供する体制を整えている。