AMDはサンフランシスコで開催された「Advancing AI 2024」イベントにおいて、次世代GPU「Instinct MI325X」や新EPYCデータセンター向けCPUを発表した。AI需要の急増に応じ、同社の市場機会は年間60%以上の成長が見込まれ、2028年には5,000億ドルに達する見通しだ。

この発表により、AMDはNvidiaのH200 GPUに対抗し、より高い性能を備えた新しいGPUを提供することで、市場シェア拡大を狙う。

AMD、AIアクセラレーション市場での拡大を目指す

AMDは、AIアクセラレーション分野での拡大を積極的に進めている。2024年10月に開催された「Advancing AI 2024」において、同社CEOリサ・スーが次世代GPU「Instinct MI325X」と新しいEPYCプロセッサの出荷計画を発表した。これにより、AMDはAIアクセラレータ市場においてNvidiaに対抗する意志を明確に示している。

スーは、このイベントで、2028年までに同社のデータセンター向けAIアクセラレータ市場の規模が年間60%以上の成長率で拡大し、5,000億ドルに達する見通しを示した。この成長は、AI需要の急速な増加に後押しされている。特に、AMDは既にAIアクセラレータである「Instinct MI300X」の出荷を進めており、今年中に50万枚の出荷を見込んでいる。

これに加えて、同社は新たなGPU「Instinct MI325X」を発表し、CDNA 3アーキテクチャをベースにしていることを強調した。AMDは、この製品がNvidiaのH200 GPUに匹敵する性能を持つことを自社テストで示し、Nvidiaに対する競争力を高めている。

次世代GPU「Instinct MI325X」とその性能

「Instinct MI325X」は、AMDが発表した次世代GPUであり、AIアクセラレータ市場における競争力を強化するために設計された。CDNA 3アーキテクチャをベースにし、256GBのHBM3Eメモリを搭載しており、最大6.0 Tbpsの帯域幅を提供する。この性能は、NvidiaのH200 GPUと比較して、1.8倍のメモリ容量と1.3倍の帯域幅を持つことがAMDのラボテストで確認されている。

さらに、「Instinct MI325X」は推論性能においても優れており、Mistral 7BやLlama 3.1 70BなどのAIモデルに対して、H200と比較して最大1.4倍の推論性能を発揮する。AMDは、この製品がAI推論の領域で重要な役割を果たすと考えており、今後の出荷が期待されている。

「Instinct MI325X」は、データセンター向けの大規模なAIワークロードに最適化されており、Dell TechnologiesやLenovoなど複数の企業から、2024年第4四半期から2025年第1四半期にかけて出荷される予定である。この製品により、AMDはNvidiaに対抗する強力な競争力を獲得する見込みである。

Zen 5アーキテクチャ搭載の新EPYCプロセッサ

AMDは、新しいデータセンター向けCPU「EPYC 9005シリーズ」を発表した。このシリーズは、同社の最新アーキテクチャであるZen 5を採用しており、クラウドやエンタープライズ向けのワークロードにおいて優れた性能を発揮する。Zen 5は、前世代のZen 4と比較して、最大で37%の性能向上を実現しており、特にAIや高性能コンピューティング(HPC)の分野での効果が顕著である。

「EPYC 9005シリーズ」のCPUは、最大192コアを搭載しており、特に192コア版は競合他社のCPUと比較して最大2.7倍の性能を誇る。また、GPUを利用したAIソリューション向けに特化した64コア版「EPYC 9575F」も登場しており、ホストCPUとして最高の能力を提供する。これにより、データセンター向けのAIアクセラレータと連携した高性能なシステム構築が可能となる。

この新しいEPYCシリーズは、エンタープライズやクラウド分野での広範な利用が期待されており、今後数年間にわたりAMDのAI関連ビジネスの成長を牽引する役割を担うと見込まれている。

Ryzen AIプロセッサでPC市場に新たな動き

PC市場でも、AMDはAIを活用した新たな動きを見せている。同社は、Ryzen AI PRO 300シリーズを発表し、AI処理能力において前世代と比較して最大で3倍の性能向上を実現している。特に、ビジネス向けのAI機能に焦点を当てた製品であり、ライブキャプションや言語翻訳、AI画像生成といった機能を提供する。

Ryzen AI 9 HX PRO 375は、このシリーズの最上位モデルであり、IntelのCore Ultra 7 165Uと比較して、最大40%の性能向上を実現している。また、XDNA 2アーキテクチャを採用し、AI処理専用のNPUを搭載していることも特徴である。これにより、AIワークロードに対する効率的な処理が可能となっている。

AMDは、AIを活用したPC市場でもIntelとの競争を激化させる狙いを持っており、今後もこの分野での革新を続けていく方針である。これにより、ビジネスユーザーにとって、より生産性の高いAI搭載PCが今後主流となる可能性が高い。