2024年第4四半期のPC向けGPU出荷台数は7,800万台を超え、前四半期比で6.2%増加した。しかし、デスクトップ向けGPUは3%減少し、市場全体の成長には陰りが見える。Jon Peddie Researchの調査によると、2028年までにGPU市場は年間1%ずつ縮小し、2030年には単体GPU搭載システムが全体の15%にとどまると予測されている。
市場の停滞にはNvidiaの供給不足が大きく影響している。Nvidiaはハイエンドからミドルレンジまで幅広い需要に応えきれず、多くのモデルが品薄状態だ。さらに、2025年にかけての関税問題も売上に悪影響を及ぼす可能性がある。
Nvidiaのシェアはやや低下し、AMDとIntelが微増。Nvidiaの生産調整やIntelの新型Arc B580の登場が市場に影響を与えている。今後、AMDの新モデルRX 9070 XTの供給状況にも注目が集まる。
Nvidiaの供給不足が招くGPU市場の停滞

2024年第4四半期のGPU市場は前年同期比でわずか1%の成長にとどまり、特にデスクトップ向けGPUの販売が3%減少した。最大の要因はNvidiaの供給不足であり、RTX 5090からRTX 5070 Tiに至るまで、世界各地の販売店で品切れが相次いでいる。Jon Peddie Researchの調査では、Nvidiaが市場で最大のシェアを持つにもかかわらず、需要に十分応えられていないと指摘されている。
Nvidiaの供給不足は、一部のゲーマーやクリエイターにとって深刻な影響を及ぼしている。最新のグラフィックカードを求めても手に入らず、価格が高騰しているため、購入を諦めるケースも少なくない。
特に新世代のBlackwell GPUシリーズを控えた状況では、Nvidiaが旧モデルの生産を抑制しており、市場全体の在庫が限られている。この状態が続けば、ゲーミングPCの構成を見直すユーザーや、他社製品への乗り換えを検討する動きが加速する可能性もある。
また、ミドルレンジ帯のGPU不足も問題だ。RTX 4070やRTX 4060 Tiといった、価格と性能のバランスが取れたモデルの供給が安定しないことで、コストパフォーマンスを重視するユーザーの選択肢が狭まっている。Nvidiaがこの状況を打開できるかどうかは、2025年の市場動向を大きく左右するだろう。
GPU関税の影響と今後の市場展開
2025年にかけて、関税の影響がGPU市場に及ぶとみられている。Jon Peddie Researchの調査では、NvidiaとAMDが2025年第1四半期に強いバックログを抱えるものの、関税の影響で追加の成長は見込めないと分析されている。特に、中国から輸入される製品にかかる関税が高まれば、価格の上昇につながり、最終的に消費者の購入意欲を削ぐ要因となる可能性がある。
関税の影響を最も受けやすいのはエントリーからミドルクラスのGPUだ。高性能なハイエンドモデルは限られた層に向けた製品であり、価格の上昇を受け入れるユーザーも多い。しかし、コストパフォーマンスを重視する層にとっては、数千円から数万円の価格上昇が購買判断を大きく左右する。特に、ゲーミングPCやクリエイティブ用途に使われるミドルレンジGPUの市場は、関税の影響を大きく受ける可能性が高い。
このような状況下で、AMDやIntelの動向が注目されている。AMDはRadeon RX 9070 XTなどの新モデルを市場投入し、需要に応える戦略を取るとみられる。一方、IntelのArcシリーズもエントリー層向けに展開されており、供給が安定すれば一定の市場シェアを獲得する可能性がある。関税の影響が続く中で、消費者にとって最適な選択肢がどこにあるのかが問われる局面となる。
ディスクリートGPU市場の縮小が進行する理由
Jon Peddie Researchの調査によると、2024年から2028年にかけてGPU市場は年間1%ずつ縮小し、2030年にはディスクリートGPU搭載システムが全体の15%にまで減少すると予測されている。この背景には、ノートPCの内蔵GPUの進化や、ペーパー・ローンチと呼ばれる供給不足、転売ヤーによる価格の高騰などの複数の要因が絡んでいる。
近年、ノートPCの統合型GPUの性能が向上し、多くのユーザーにとって外部GPUが必須ではなくなりつつある。特に、IntelのArcシリーズやAMDのRDNA 3アーキテクチャを搭載した統合GPUは、軽いゲームやクリエイティブ作業には十分な性能を発揮するため、デスクトップPCにディスクリートGPUを搭載する必要性が薄れている。これが市場縮小の大きな要因の一つとなっている。
さらに、近年のグラフィックカードの発売においては、ペーパー・ローンチの問題も顕著だ。RTX 5090やRTX 5070 Tiといった最新モデルが発表されても、実際に手に入る数が限られており、転売ヤーの介入によって価格が吊り上げられるケースが後を絶たない。これにより、本来GPUを購入しようと考えていたユーザーが市場から離れ、結果的に市場全体の成長を妨げる要因となっている。
今後、ディスクリートGPU市場が大きく回復するには、供給の安定化と価格の適正化が鍵を握る。特に、エントリーからミドルレンジの価格帯で安定供給が行われなければ、より多くのユーザーが内蔵GPUへと移行し、市場の縮小が加速する可能性もある。
Source:Tom’s Hardware