Microsoftが発表したシンクライアントPC「Windows 365 Link」の実機写真が公開された。通常のWindows PCとは異なり、このデバイスはWindows 11をローカルで動作させるのではなく、クラウド経由でストリーミングすることを前提として設計されている。
このデバイスの最大の特徴は、データをローカルに保存せず、クラウド上のWindows 365 PCと接続することで、ハードウェアの性能に依存せずに利用できる点だ。セキュリティ向上や電子廃棄物削減などの利点を持ち、企業向けの新たな選択肢として注目されている。
スペックはIntel N250プロセッサ、8GB RAM、64GBストレージと低めだが、クラウドPCの性能に依存するためローカルのスペックは重要ではない。価格は349ドル(約52,000円)で、4月に発売予定。ただし利用にはWindows 365のサブスクリプションが必要で、現時点では企業向けに限定されている。
Windows 365 Linkの実機デザインとハードウェア仕様 すでに判明している特徴とは

Windows 365 Linkの実機写真が公開され、そのデザインやハードウェア仕様が明らかになった。本体はコンパクトで、片手で持てるほどのサイズ感となっており、「Windows Dev Kit 2023」に似たプラスチック製の筐体を採用。シンプルなデザインながらも、必要なインターフェースを備えている。
前面にはUSB-Aポートと3.5mmオーディオジャックを配置し、背面にはUSB-A×2、USB-C、イーサネット、DisplayPort、HDMIポートを搭載。シンクライアントPCとしては十分な接続性を持ち、外部モニターや周辺機器との連携も容易だ。
内部スペックはIntel N250プロセッサ、8GB RAM、64GBストレージを搭載。通常のPCと比較するとスペックは低めだが、これはクラウドPCへのアクセスに特化した設計のため、ローカルでの処理能力を最小限に抑えている。OSも軽量化されたWindows 11が動作し、基本的な操作のみを受け持つ仕様となっている。
Microsoftはこのデバイスを「Windows 365 PCの新カテゴリ」として位置づけ、クラウドストリーミングによるWindows環境の提供を主軸にしている。そのため、従来のPCのようにソフトウェアをローカルで動かす使い方は想定されていない。
クラウドPC専用の新たな選択肢 Windows 365 Linkの活用シーンとは
Windows 365 Linkは従来のPCとは異なり、クラウドPCへのアクセス専用デバイスである。そのため、用途も通常のPCとは大きく異なり、主に安定したネットワーク環境がある場所での利用を前提としている。
企業においては、従業員のPC管理を容易にする手段として期待されている。デバイス自体にはデータを保存せず、すべてクラウド上のWindows 365 PCで処理するため、情報漏洩のリスクを大幅に低減できる。また、端末の性能に依存しないため、古いデバイスでも最新のクラウドPC環境を利用でき、ハードウェアの更新頻度を減らすメリットもある。
個人利用に関しては、現在のところWindows 365が企業向けサービスであるため制限がある。しかし、リモートワークの増加やデジタルノマドのライフスタイルの広がりを考慮すると、将来的に個人向けプランが登場する可能性は十分にある。クラウドPCなら、どこにいても同じ環境を利用できるため、旅行先やカフェなど場所を選ばず作業ができるという利点がある。
一方で、クラウドPCに依存する設計のため、インターネット接続が不可欠であり、オフライン環境では利用できない点は注意が必要だ。ネットワーク環境が不安定な場所では、パフォーマンスが低下する可能性もある。そのため、安定したWi-Fiや有線接続が可能な環境での使用が前提となる。
価格と販売時期 Windows 365 Linkは本当にお得な選択肢なのか
Windows 365 Linkの価格は349ドル(約52,000円)と発表されており、4月に発売予定となっている。この価格設定は、Mac mini M4や一般的なミニPCと比較すると安価に見えるが、Windows 365のサブスクリプション費用を考慮すると、総コストは異なってくる。
Windows 365は現在企業向けサービスとして提供されており、最も安価なプランでも月額数千円以上のコストがかかる。そのため、Windows 365 Linkの導入には、ハードウェアコストだけでなく、継続的なクラウドPCの維持費が必要となる。この点を考慮すると、一度購入すれば数年使える従来のPCとどちらがコストパフォーマンスに優れるかは用途によって異なる。
また、現時点では個人向けのWindows 365プランが存在しないため、企業利用が前提となる。Microsoftは個人向けプランを計画しているとされるが、具体的な提供時期は不明。個人ユーザーがこのデバイスを使えるようになるには、今後のサービス展開を待つ必要がある。
とはいえ、クラウドPCが普及すれば、ローカルのスペックに依存しない新たなPCの形として、Windows 365 Linkのようなシンクライアントデバイスの需要は拡大する可能性がある。今後、Microsoftがどのように個人市場へ展開していくかが、このデバイスの成功を左右する重要なポイントとなりそうだ。
Source:Windows Central