Microsoftは、Windows 11向けのMS Paintに搭載されているAI機能の提供地域を拡大し、これまで利用できなかったユーザーにも「Image Creator」機能を解放した。これにより、Bingの技術を活用した画像生成がより多くの環境で使用可能になる。

「Image Creator」は、OpenAIのDALL-Eを用いた画像生成ツールであり、ユーザーが入力したテキストに基づいてリアルなビジュアルを作成できる。スタイル選択機能も備え、生成した画像はPaint上で直接編集が可能だ。ただし、フル機能を利用するにはMicrosoft 365のサブスクリプションやCopilot Proの契約が必要となる。

さらに、「Generative Erase(生成的消去)」機能も同時に拡張され、画像の不要な部分をAIが自動で補完する機能が追加された。これらのアップデートにより、MS Paintは単なるお絵描きツールから、AIによる高度な画像処理機能を備えたアプリへと進化を遂げつつある。

Paintの「Image Creator」はどこまで使えるのか 実用性と制限を検証

Microsoft Paintの「Image Creator」は、AIを活用した画像生成機能として注目を集めているが、その実用性と制限を把握することが重要である。

基本的な使い方はシンプルで、ユーザーがテキストで指示を入力し、スタイルを選択すればAIが3種類の画像を生成する仕組みになっている。このプロセスはPhotoshopのような高度なツールと比較すると直感的であり、専門知識がなくても扱いやすいのが特徴だ。

しかし、一方で「Image Creator」には明確な制約も存在する。まず、生成できる画像のクオリティはOpenAIのDALL-E技術に依存するため、細かいディテールを調整する自由度は限られている。また、完全にオリジナルなアートを作成するというよりは、AIが提示する選択肢の中から適したものを選ぶ形になるため、思い通りのビジュアルを作成するには試行錯誤が必要になる。

加えて、「AIクレジット」システムの存在も見逃せない。画像生成ごとにクレジットを消費し、無料の範囲では利用回数が限られるため、頻繁に使う場合はMicrosoft 365やCopilot Proの契約が事実上必要になる。

これらの点を考慮すると、気軽な創作ツールとしては優秀だが、プロ向けの画像編集ソフトには及ばない部分も多い。今後、AI技術の進化とともに、より細かいカスタマイズが可能になるかが焦点となるだろう。

「Generative Erase」がもたらす編集の自由度 AI補完の精度はどこまで進化したか

今回のアップデートで利用可能地域が拡大した「Generative Erase」機能は、画像編集の新たな可能性を切り開く技術のひとつだ。従来の消しゴムツールとは異なり、単に画像の一部を削除するだけでなく、その部分をAIが補完し、自然な仕上がりを実現する。

この技術はPhotoshopの「コンテンツに応じた塗りつぶし」に近いものだが、Microsoft PaintのシンプルなUIの中で実装されている点が特徴的である。

では、実際の使い勝手はどうか。まず、簡単な背景の除去や、不要なオブジェクトの削除には十分に対応できる。ただし、補完の精度は状況によって異なり、複雑な背景や細かいディテールが求められるケースでは、必ずしも自然な仕上がりになるとは限らない。また、編集後の画像が完全に意図通りになるわけではなく、場合によっては何度かやり直す必要がある点も考慮すべきだ。

それでも、無料の画像編集ソフトでこれほどのAI機能を利用できることは画期的である。特に、簡単な写真加工やカジュアルな用途では、従来の手動編集と比べて作業時間を大幅に短縮できる。今後のアップデートで補完精度がさらに向上すれば、より本格的な編集ツールとしての活用も期待できるだろう。

Microsoft Paintはどこへ向かうのか AI機能の進化がもたらす未来

長年、Microsoft Paintは「シンプルなお絵描きツール」としての立ち位置を維持してきた。しかし、今回のAI機能拡充により、その役割が大きく変わりつつある。特に「Image Creator」や「Generative Erase」のような高度な機能が標準搭載されることで、Paintは単なる落書きツールではなく、創作ツールとしての側面を強化している。

ただし、AI機能の拡張はユーザー層を広げる一方で、新たな課題も生じる。例えば、AI生成画像の著作権問題や、生成内容の倫理的な制約などが今後の議論の対象となる可能性がある。また、AIを利用するためにはサブスクリプション契約が必要な点を考えると、無料ツールとしての利便性はやや後退している印象も受ける。

とはいえ、MicrosoftがAI技術を積極的にPaintへ導入していることは、今後の方向性を示唆する重要な動きである。これまでPhotoshopやGIMPといったプロ向けツールが担っていた役割の一部を、よりカジュアルなツールで実現しようとする流れは、多くのユーザーにとって歓迎すべき変化といえるだろう。今後のアップデートでは、さらに多様なAI編集機能が追加されるかもしれない。

Source:Windows Latest