WindowsおよびOfficeのアクティベーションツール「MAS(Microsoft Activation Scripts)」が、最新バージョン3.0にアップデートされた。このバージョンでは、新たに「TSforge」と呼ばれる強力なエクスプロイトが追加され、Windows 7以降のすべてのエディションとOffice 2013以降の全バージョンのアクティベーションが可能になった。

TSforgeの特徴は、MicrosoftのDRMシステム「Software Protection Platform(SPP)」を直接ターゲットにする点にある。従来の手法と比較して、より広範囲のWindowsエディションやライセンス向けアドオンのアクティベーションが実現され、これまでの制限を大きく超えた。

MASはオープンソースであり、技術的な学習にも役立つが、Microsoftのライセンスモデルを回避する手法であるため、使用に関しては慎重な判断が求められる。Microsoftは今のところMASに対して明確な対策を講じておらず、同ツールがGitHub上でホストされ続けている点も興味深い。

TSforgeが可能にする新たなアクティベーションの仕組み

MAS v3.0に搭載されたTSforgeは、これまでのアクティベーション手法と一線を画す技術だ。従来の方法では、Windowsのライセンス認証プロセスに介入し、MicrosoftのKMS(Key Management Service)を模倣することで一時的なアクティベーションを可能にする手法が主流だった。

しかし、TSforgeは「Software Protection Platform(SPP)」そのものを直接ターゲットにし、より深いレベルでアクティベーションを実行する。

このアプローチにより、Windowsの各エディションやOfficeのライセンス制御の一部を迂回し、商用ライセンス向けのアドオンまでも適用できるようになった。たとえば、「Extended Security Updates(ESU)」のような有償サービスも利用可能になるため、通常ではサポートが終了している古いOSを延命できる。これは、特にWindows 7やWindows 8.1を使い続けたいユーザーにとって重要な要素となる。

ただし、この技術が広まることでMicrosoftが対応に乗り出す可能性も否定できない。TSforgeの仕組みが公式に修正されるか、今後のWindowsアップデートで封じ込められるかは不明だ。しかし、現時点ではMAS v3.0が多くのWindows環境で正常に動作しているという報告がある。

MicrosoftがMASを放置する理由とその影響

MASがオープンソースで公開され、GitHub上でホストされているにもかかわらず、Microsoftはこれを積極的に取り締まっていない。この状況は一見不可解に思えるが、いくつかの要因が考えられる。

第一に、MASのユーザー層の多くが個人レベルの使用にとどまっている点がある。企業向けのライセンス販売がMicrosoftの主要な収益源であり、個人ユーザーによるアクティベーション回避はビジネスモデルに大きな影響を与えにくい。

また、MASがMicrosoftの従業員によっても利用されているという報道もあり、社内でも完全には無視できないツールとなっている可能性がある。

たとえば、正規のアクティベーションキーが入手困難な場合、技術検証のためにMASを活用するケースがあるのかもしれない。このような事情から、MicrosoftはMASを完全に封じ込めるよりも、むしろ市場全体の動向を見守る姿勢を取っていると考えられる。

しかし、MASがこれ以上広く普及し、Microsoftのライセンス戦略に直接的な影響を与え始めた場合、同社の対応が変わる可能性は高い。GitHub上でのプロジェクト削除や、TSforgeの動作を阻止するパッチの導入などが考えられるが、現時点では具体的な対策は取られていない。今後のMicrosoftの動向次第で、MASの未来は大きく変わることになるだろう。

MASの技術的な学習価値とその倫理的側面

MASが単なるアクティベーションツールとしてだけでなく、技術的な学習教材としても注目されている点は見逃せない。Massgraveチームは、エクスプロイトのプロセスを詳細に文書化しており、ソフトウェア保護技術の脆弱性や、それに対するアプローチ方法を理解するうえで貴重な資料となっている。

特に、WindowsのSPPがどのように動作し、どこに突破口があるのかを学ぶことは、セキュリティ研究の観点からも興味深い内容だ。

一方で、MASの利用には倫理的な問題がつきまとう。オープンソースとして提供されているとはいえ、Microsoftのライセンスシステムを回避する手段であり、合法性の問題もある。この点を考慮すると、技術学習の目的でコードを研究することと、実際にMASを使用することには大きな違いがあるといえる。

また、MASの存在がMicrosoftのライセンスモデルに影響を与え、正規のソフトウェア購入が減少することで、将来的にWindowsの開発やサポートに悪影響を及ぼす可能性もある。こうした倫理的な側面を考慮しながら、技術の進化とその影響について冷静に向き合うことが求められるだろう。

Source:Android Authority