インテルは、新たなXeon Wシリーズ「Granite Rapids-W」を発表し、W890マザーボードの導入を予定している。この新プラットフォームでは、最大128レーンのPCIe Gen5と8チャンネルメモリのサポートが特徴となる。
Granite Rapids-Wは「メインストリーム」と「エキスパート」の2つのセグメントに分かれ、それぞれ異なるメモリとPCIe構成を採用。メインストリーム向けモデルは4チャンネルメモリと80レーンのPCIe Gen5を、エキスパート向けモデルは8チャンネルメモリと128レーンのPCIe Gen5を提供する。
さらに、新しいW890チップセットは、24レーンのPCIe Gen4に加え、DMI接続用の8レーンのPCIe Gen4を搭載し、高速なデータ転送を実現する。
CPUソケットには、新たにLGA 7529とLGA 4710が採用され、従来のW790プラットフォームとは異なる構成となる可能性がある。また、Granite Rapids-SPは最大86コアを搭載し、従来のSapphire Rapids-SPよりもコア数が大幅に増加。AMDのThreadripper 7000シリーズと比較しても、競争力のある仕様となっている。
正式な発売時期は明言されていないが、2024年後半から2025年初頭にかけて市場投入される可能性が高い。ワークステーションやHEDT向け市場において、Granite Rapids-WとW890プラットフォームがどのような影響を与えるのか、今後の展開に注目が集まる。
Granite Rapids-Wが採用する新ソケット LGA 7529とLGA 4710の違いとは
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Granite Rapids-Wでは、新たにLGA 7529とLGA 4710の2種類のソケットが採用される。これにより、従来のLGA 4677を用いたSapphire Rapids世代とは異なる構成となる。LGA 7529はより多くのピンを持つことで、高コア数のプロセッサ向けに設計されており、ハイエンドワークステーション向けのXeon 6900Pシリーズに対応するとされる。
一方、LGA 4710はエントリー~ミドルレンジ向けのXeon 6700Pシリーズに使用される予定で、従来のプラットフォームからの移行を考慮した設計になっている可能性がある。
この2種類のソケット採用により、インテルはユーザーの用途に応じた選択肢を提供することになる。しかし、これまでのXeon Wシリーズは単一のソケットで広範な製品ラインナップを展開していたため、今回の変更がユーザーにとってどのような影響を与えるのかは注目すべき点だ。
特に、LGA 7529を搭載するW890マザーボードが既存のXeon Wシリーズの流れをどのように変えるのか、多くのユーザーが気にする部分だろう。
また、LGA 7529は最大86コアを搭載するGranite Rapids-SPプロセッサとの互換性も考慮されているとみられる。これは、データセンター向けのラインナップと共通のインフラを持つ可能性があることを示唆する。一方で、LGA 4710はより小型でコストを抑えた設計になっていると考えられるため、ワークステーションユーザーにとって手頃な価格で新世代の性能を享受できる選択肢となるかもしれない。
このように、新たなソケットの導入は単なる物理的な変更にとどまらず、インテルの製品戦略やプラットフォームの進化にも影響を及ぼす。特に、これまでのXeon Wシリーズと異なり、用途ごとに異なる基盤が求められることになるため、今後の対応マザーボードやBIOSの仕様など、さらなる情報が待たれる。
W890チップセットの特徴とW790との違い 進化したI/O機能に注目
新たなW890チップセットは、前世代のW790と比べてI/O機能が強化されている。最も大きな違いは、PCIe Gen4のレーン数が増加し、DMI用途のレーンも強化されている点だ。W890は24レーンのPCIe Gen4に加え、DMI接続用の8レーンを搭載し、より高速なデータ転送を実現する。これは、ストレージや外部GPU、高速ネットワークカードの接続を想定した設計になっていると考えられる。
従来のW790チップセットでは、PCIe Gen5のサポートは限られていたが、W890では128レーンのPCIe Gen5がエキスパート向けモデルで提供されるため、より大容量のデータ処理やAIアクセラレーター、ストレージソリューションとの親和性が向上する。
また、USB4やThunderboltの対応についても、W890では追加のチップを介することなく標準対応する可能性があるとみられる。これにより、高速データ転送や外部ディスプレイの接続が容易になるだろう。
さらに、電力管理や発熱対策の面でも改良が加えられている。次世代のHEDTおよびワークステーション向けプロセッサは、より高い消費電力と発熱が予想されるが、W890は電力効率の向上や冷却機構の最適化が図られると考えられる。特に、ハイエンドモデルではTDP350WクラスのCPUが搭載されることを前提に設計されている可能性が高く、VRM(電圧レギュレーター)の強化も必須となるだろう。
こうしたW890の進化により、従来のXeon Wプラットフォームと比べて、より柔軟な構成が可能となる。特に、最新のGPUやストレージソリューションを活用するユーザーにとっては、より大きな恩恵を受けられる設計になっている。今後、各マザーボードメーカーがW890をどのように活用し、どのような製品が登場するのか注目される。
Granite Rapids-WのパフォーマンスはAMD Threadripper 7000とどう比較されるのか
Granite Rapids-Wの最大コア数は86コアとされており、AMDのThreadripper 7000シリーズの最大96コアには届かない。しかし、単なるコア数の比較ではなく、アーキテクチャの違いやキャッシュ構成、電力効率を考慮することで、どのような特性を持つのかが明らかになる。
AMDのThreadripper 7000は、Zen 4アーキテクチャを採用し、チップレット設計によってスケーラビリティを確保している。一方、インテルのGranite Rapids-Wは、Meteor LakeのRedwood Coveコアをベースにしており、より高クロックで動作する可能性がある。
また、メモリ構成についても、AMDは8チャンネルメモリを搭載するが、Granite Rapids-Wのエキスパート向けモデルでは同様に8チャンネル構成となるため、帯域幅の面で大きな差は生じないとみられる。
パフォーマンス面では、シングルスレッド性能が重要となる場面ではインテルが優位に立つ可能性がある。特に、AVX-512やAMX(Advanced Matrix Extensions)といったインテル独自の拡張機能に対応しているため、AIワークロードや科学技術計算の分野では大きな恩恵を受けることが期待される。一方、マルチスレッド性能ではコア数の多いThreadripper 7000が優位に立つ可能性があり、レンダリングやエンコードなどの用途ではその強みが発揮されるだろう。
また、消費電力についても重要な比較ポイントとなる。AMDのThreadripper 7000シリーズはTDP350Wのモデルが存在するが、Granite Rapids-Wでも同等の電力制限が設けられる可能性がある。ただし、電力効率の向上が図られていれば、より低い消費電力で同等以上のパフォーマンスを発揮できるかもしれない。
このように、Granite Rapids-WとThreadripper 7000はそれぞれ異なる強みを持つ。用途に応じてどちらが最適かは変わるが、高クロックとインテル独自の拡張機能を活かした性能が求められる場合はGranite Rapids-Wが優位に立つ可能性があり、マルチスレッドを活かした処理ではThreadripper 7000が有利になるだろう。両者の詳細なベンチマーク結果が待たれる。
Source:Wccftech