Intelは新たに発表したArrow Lake-Hチップセットで、ノートパソコンの性能とバッテリー寿命を大幅に向上させた。このプロセッサーは、Lion CoveとSkymontのコアアーキテクチャを採用し、合計16コア(パフォーマンスコア6つ、効率コア8つ、低消費電力効率コア2つ)を搭載している。基本電力は45Wだが、短期間で最大115Wまでブースト可能である。

ベンチマークテストでは、Cinebench R24やGeekbench 6などで競合製品を上回る結果を示し、特にシングルコア性能での優位性が際立っている。さらに、MSI Prestige 16でのローカルビデオ再生テストでは約21時間のバッテリーライフを記録し、Snapdragon X Elite搭載のHP Omnibook Xに匹敵する効率性を実現している。

この成果は、Intelが性能と省電力性の両立を達成したことを示しており、同社にとって大きな前進となるだろう。

Intel Arrow Lake-Hの新アーキテクチャがもたらす進化

Arrow Lake-Hチップは、IntelのLunar Lakeアーキテクチャを受け継ぎながらも、さらなる改良が加えられた点が特徴だ。特に、Lion CoveとSkymontという2種類のコア構成により、高いパフォーマンスと電力効率を両立している。16コア構成の内訳は、6つのパフォーマンスコア、8つの効率コア、そして2つの低消費電力効率コアという珍しい組み合わせで、用途に応じたリソースの最適配分を可能にしている。

また、このプロセッサーはIntelのBattlemageアーキテクチャに基づいた統合グラフィックスを採用しており、従来の内蔵GPUと比べてゲームパフォーマンスやグラフィック処理能力が大幅に向上している。これにより、専用GPUを搭載しないノートパソコンでも、快適なクリエイティブ作業や軽めのゲームプレイが可能になった。

電力管理の面でも、Arrow Lake-Hは特筆すべき進化を遂げている。基本の消費電力は45Wながら、短期間で最大115Wまでブーストできる設計となっており、高負荷時の瞬間的な性能向上が期待できる。一方で、低負荷時には効率コアと低消費電力コアが機能し、消費電力を抑える仕組みになっている。

このような設計の恩恵を受け、動画編集やゲームプレイなどの負荷の大きなタスクではパワフルな性能を発揮しつつ、アイドル時にはバッテリー寿命を最大限に伸ばすことができる。

ベンチマーク結果から見る競合との差

実際のベンチマークテストでは、Arrow Lake-HはAMDのRyzen AI 9 365やRyzen AI 9 HX 370といった競合製品と比較され、その優位性が明確に示された。特にCinebench R24では、IntelのCore Ultra 9 285Hがシングルコア128、マルチコア918というスコアを記録し、AMDの同等モデルを上回った。

また、Geekbench 6のシングルコア性能でもIntelがリードしており、シングルスレッド処理が求められるタスクでは強みを発揮している。

一方で、マルチスレッド性能ではAMDのRyzen AI 9 365が14,059、Core Ultra 9 285Hが15,773と僅差となった。AMDのプロセッサーはSMT(Simultaneous Multithreading)を採用しているため、スレッド数の多さでは有利な点もある。しかし、PCMark 10の総合スコアでは、Intelが7,508とわずかに上回っており、一般的なタスクにおけるバランスの良さを示している。

クリエイティブ用途では、PhotoshopやPremiere ProのベンチマークでIntelが優位に立った。特にPremiere Proでは、IntelのQuickSync技術とBattlemage GPUの組み合わせにより、エンコード時間の短縮が顕著だった。これにより、動画編集やコンテンツ制作を行うユーザーにとって、Intelの新プロセッサーが実用的な選択肢となる可能性がある。

省電力設計がもたらすバッテリー持続時間の向上

Arrow Lake-Hのもう一つの重要なポイントは、電力効率の向上によりノートパソコンのバッテリー寿命を大幅に伸ばしたことだ。実際のテストでは、MSI Prestige 16を用いたローカルビデオ再生で約21時間のバッテリー持続時間を記録しており、これまでのIntel製プロセッサーを搭載したノートパソコンと比べても飛躍的な進化を遂げている。

比較対象として、Ryzen AI 9 365を搭載したAcer Swift 14 AIは18時間36分、MacBook Air M3は19時間29分、Snapdragon X Eliteを搭載したHP Omnibook Xは22時間4分といった結果が出ている。Snapdragon X Eliteがわずかに最長のバッテリー寿命を記録したものの、Arrow Lake-Hは16コアを備えた高性能チップであるにもかかわらず、これに匹敵する省電力性を示したことが特筆に値する。

この電力効率の向上は、低消費電力コアの活用やIntelの電源管理技術の進化によるものと考えられる。特に、アイドル時や軽作業時には低消費電力コアが動作し、電力を最小限に抑えることで、バッテリーの持ちを大幅に向上させている。この結果、長時間の外出時でも電源を気にせずノートパソコンを使用できるため、実用性の面でも大きなメリットとなる。

IntelのArrow Lake-Hは、これまでの同社製プロセッサーと比べても明らかに進化しており、高性能と省電力性を両立させた点で大きな成功を収めたと言えるだろう。今後のノートパソコン市場で、このチップがどのように採用されていくかが注目される。

Source:Digital Trends