インテルは、新たな製造プロセス「18A」を採用する次世代ラップトップ向けCPU「Panther Lake」の2024年後半リリースを予定通り進めていると発表した。しかし、デスクトップ向け「Nova Lake」については、外部の製造プロセスと組み合わせる可能性が高く、戦略が複雑化している。
Panther Lakeは、インテルの自社ファウンドリを活用し18Aプロセスで製造されるが、Nova Lakeは自社製造とTSMCのN2ノードを併用する方針とされる。これは、インテルがすべてのCPUを自社製造へ完全移行するのではなく、製品ごとに最適な製造戦略を選択していることを示している。
同社の決算発表では、EUVリソグラフィを活用した製造プロセスの普及が遅れている現状も明らかになった。特に「Intel 4」や「Intel 3」への移行が進まず、Meteor LakeやLunar Lakeの一部がTSMCに委託されたことが影響している。
インテルは18Aを「会社の未来を担う技術」と位置付けており、CEOのパット・ゲルシンガー氏も「18Aの成功がインテルの将来を決める」と強調している。しかし、現時点でEUVを活用した製造割合がわずか5%強にとどまっていることを考えると、今後の展開には不安要素も残る。今後、Panther Lakeの市場投入が順調に進むかどうかが、インテルの製造戦略の成否を占う重要なポイントとなるだろう。
18Aプロセスの鍵を握るEUVリソグラフィの現状と課題
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インテルが掲げる18Aプロセスの実現には、EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術の普及が不可欠だ。しかし、最新の決算発表ではEUVを活用したウエハーの生産割合がわずか5%強にとどまっており、インテルの製造技術の移行が想定よりも遅れていることが明らかになった。この遅れは、Meteor LakeやLunar Lakeの一部プロセスをTSMCへ委託する要因にもなっている。
EUVリソグラフィは従来の深紫外線(DUV)リソグラフィよりも波長が短く、より微細な回路を形成できるため、次世代の半導体製造には不可欠な技術とされる。しかし、EUV露光装置はオランダのASMLが独占的に供給しており、その価格は数百億円規模に達する。また、EUVに対応したフォトレジストやマスク技術も成熟には時間がかかるとされる。
こうした課題の影響を受け、インテルは従来のIntel 4やIntel 3を完全に置き換える前に、18Aへと急速に移行しようとしている。しかし、EUVの普及が進まない中で18Aプロセスがどこまで実用的な生産体制を確立できるかは依然として不透明だ。過去のプロセス技術でも遅れを経験してきたインテルが、今回は計画通りに進められるのか注目される。
Nova LakeがTSMC製造を採用する理由とインテルのファウンドリ戦略
Nova LakeがTSMCのN2ノードとインテルの18Aを併用する理由は、単なる製造能力の問題ではなく、性能とコストのバランスを取るための戦略とも考えられる。TSMCのN2ノードは、最先端の3Dトランジスタ技術「GAAFET(Gate-All-Around FET)」を採用し、電力効率とトランジスタ密度の向上が見込まれる。
一方、インテルの18AもGAAFET技術を取り入れているが、プロセスの成熟度や歩留まりを考慮すると、TSMCの技術を併用するメリットがあると判断した可能性がある。
過去のLunar Lakeでも、インテルはTSMCへ一部の製造を委託しつつ、自社ファウンドリの開発を継続してきた。これは、すべての製品を単一のプロセスに依存させない柔軟な製造戦略を採る意図があると見られる。特に、TSMCの製造能力は業界内でもトップクラスであり、インテルが自社技術の進捗を見ながら適宜TSMCを利用することは合理的な選択とも言える。
また、インテルのファウンドリ事業は、外部顧客を増やすことで成長を目指しているが、TSMCやサムスンの先行する技術に対抗するには時間が必要だ。Nova Lakeにおける製造プロセスの分散は、そうした状況を踏まえたうえでの現実的なアプローチとも考えられる。今後、インテルのファウンドリがどこまで競争力を高められるかが、完全自社生産へとシフトできるかどうかの鍵を握るだろう。
インテルの18Aプロセスは次世代CPU市場で成功を収められるのか
18Aプロセスを採用したPanther Lakeが市場に投入されることで、インテルの製造技術が次のステージへ進むかどうかが試される。しかし、過去のプロセス移行の歴史を振り返ると、必ずしも計画通りに進むとは限らない。Intel 10nm(現Intel 7)の量産が遅れたことや、Intel 4への移行がスムーズに進まなかったことを考えると、18Aも一定の課題に直面する可能性がある。
一方で、18Aが順調に量産体制へ移行すれば、Intel Coreシリーズの性能向上に大きく寄与することは間違いない。特に、モバイル向けのPanther Lakeは省電力性が求められるため、GAAFET技術を採用した18Aの恩恵を受けやすい。一方で、デスクトップ向けのNova Lakeが18Aを完全に採用しない点は、消費電力やコストの面で慎重に判断された結果とも考えられる。
インテルの製造技術の進化は、競合であるAMDやApple、さらにはArm系プロセッサを採用する企業にとっても影響を及ぼす。Panther Lakeが市場でどのような評価を受けるか、そしてNova LakeがTSMCとインテルのハイブリッド戦略のもとでどのように展開されるのか、次世代CPU市場の動向を左右する重要なポイントとなるだろう。
Source:PC Gamer