Asusの最新マザーボードに搭載された「Q-Release Slim」機能が、GPUのPCIeコネクタに摩耗を引き起こす可能性が指摘されている。特に、頻繁にGPUを取り外すユーザーから、コネクタ側面の摩耗や損傷の報告が上がっている。Asusはこれらの報告を受け、内部テストでは機能や性能に影響を及ぼす損傷は確認されなかったと述べつつ、ユーザーには公式の取り外し手順に従うよう推奨している。

また、問題が発生した場合はカスタマーサービスを通じてサポートを提供すると表明している。この問題は、主にレビュー目的でGPUを頻繁に着脱するユーザーに影響を及ぼしていると考えられるが、一般ユーザーにも注意が必要である。他社製マザーボードでも同様の機能が導入されており、今後の動向が注目される。

Q-Release Slimの仕組みと摩耗が生じる理由

Asusが導入した「Q-Release Slim」は、従来のPCIeロック機構を改良し、ワンタッチでGPUを取り外せる設計になっている。この機構の最大の特徴は、レバーを押すことでGPUをスライドさせながら取り外す仕組みであり、大型GPUの着脱を容易にする目的で設計された。

特に、最近のハイエンドGPUはサイズが大きく、PCIeスロット周辺のコンポーネントが密集しているため、従来のロック機構では物理的に手が届きにくいという問題があった。

しかし、この「Q-Release Slim」を使用した際、GPUのPCIeコネクタ部分に摩耗が生じるケースが報告されている。その主な理由は、取り外しの際に発生するスライド動作とコネクタの摩擦によるものと考えられる。

従来のロック解除方法では、GPUを上方向に持ち上げる動作が主体だったが、新機構ではI/Oポート側へのスライドも伴う。この動きが、コネクタの端子部分に負荷をかけ、結果として摩耗が生じやすくなる可能性がある。

さらに、Asusは「60回程度の着脱を繰り返せば、どのマザーボードでもある程度の摩耗が発生する」としており、耐久性の問題ではないと主張している。しかし、頻繁にGPUを交換するユーザーにとって、この摩耗が性能や接触不良につながる可能性がある点は、今後さらなる検証が求められるだろう。

ユーザーからの報告とAsusの対応

今回の問題が明るみに出たのは、中国の動画プラットフォーム「BiliBili」のユーザーや、ドイツのハードウェア専門メディア「Hardwareluxx」のアンドレアス・シリング氏が、Asusの最新IntelおよびAMD 800シリーズマザーボードでGPUの取り外しに問題があると報告したことが発端となっている。

具体的には、GPUがPCIeスロットに引っかかって外れにくくなったり、取り外し時にPCIeコネクタが摩耗するケースが確認されている。

Asusはこの問題に関して、「Q-Release Slim」のメカニズムに欠陥はないとしながらも、影響を受けたユーザーに対してサポートを提供すると発表した。社内テストの結果、通常の使用環境ではコネクタの摩耗が性能に影響を与えることはないと説明しているが、ユーザーが実際に問題を経験した場合は、カスタマーサポートを通じて対応するという姿勢を示している。

現時点では、どの程度のユーザーが影響を受けているのかは不明であり、Asusが言うように「非常に少数の事例」にとどまるのか、それとも今後さらに報告が増えるのかが注目される。

一方で、Asusの対応が迅速であった点は評価できる。特に、PC自作市場においてAsusの製品は高い人気を誇るため、この問題の今後の展開次第では、他社のマザーボードメーカーがどのような対応を取るかも重要なポイントとなる。

他社の動向と今後の展望

Asusと競合するMSIも、PCIeスロットのロック機構に新しい設計を取り入れている。MSIのQ-Releaseシステムは、ボタンを押すことでGPUを簡単に取り外せる仕組みになっており、Asusの従来モデルと同様のアプローチを採用している。このように、PCIeスロットのロック機構は、近年のハイエンドGPUの大型化に伴い、各社が改良を加えているポイントの一つである。

また、GPUだけでなく、M.2 SSDの固定方法についても、各メーカーが新たな機構を開発している。従来、M.2 SSDの固定にはネジが必要だったが、現在ではツールレスで簡単に装着できる機構が一般化しつつある。この流れを考えると、PCIeスロットのロック機構も今後さらに進化し、より使いやすい設計が登場する可能性が高い。

今回の「Q-Release Slim」の摩耗問題が今後どのように展開するかは不透明だが、ユーザー側としては、取り外し時の手順を慎重に行うことや、摩耗の進行をチェックすることが重要となるだろう。今後、独立した第三者機関による検証が進めば、より正確な実態が明らかになる可能性がある。

Source:TechSpot