GIGABYTEが新たに公開した製品マニュアルにより、次世代メモリ規格「CAMM2」を搭載するZ890マザーボードの存在が明らかになった。従来のDIMMに代わる規格として開発されたCAMM2は、CPUソケットのようにスクリューで固定される設計を持つ。
この新規格はDellが発案し、JEDECにより標準化されたもので、特にノートPCでの省スペース効果が期待されている。デスクトップ市場では、CUDIMMの登場がCAMM2の優位性をやや覆したものの、GIGABYTEのTACHYONシリーズがもたらす高クロック性能への期待は依然として高い。
CAMM2メモリの特徴とデスクトップ導入の意義
CAMM2(Compression Attached Memory Module)は、従来のDIMMやSO-DIMMとは異なる新しい取り付け方式を採用するメモリ規格である。この技術の開発はDellによって始まり、現在ではJEDECが公式規格として認定している。CAMM2の特徴としては、従来のDIMMのようなスロット挿入型ではなく、CPUソケットに近い「ネジ留め式」の取り付け方法が挙げられる。
これにより、メモリモジュールの安定性が向上するほか、設計の自由度が高まる。特にノートPC向けに開発されたLPCAMM2は、筐体内部のスペースを大幅に削減することができ、モバイルデバイスでの普及が見込まれている。
ただし、デスクトップPC市場においては、CUDIMM(Clock Driver DIMM)が登場したことで、CAMM2の優位性が必ずしも決定的とは言えない状況となっている。とはいえ、今後、メモリ規格の共通化が進む中で、CAMM2の採用が拡大する可能性もあり、その動向に注目が集まっている。
GIGABYTE AORUS TACHYON ICEモデルに搭載される新技術
GIGABYTEのAORUS TACHYONシリーズは、特にオーバークロック性能を重視したモデルであり、エンスージアスト向けに高い評価を得ている。そのTACHYONシリーズに、新たなCAMM2メモリを搭載した「ICE」モデルが加わる見込みである。
このICEモデルは、通常のDIMMメモリの代わりにCAMM2を採用し、高クロック動作と安定性の向上を狙った設計が施されている。CAMM2はネジ固定式のため、従来のスロット型メモリと比較して接続部の不安定さが減少し、長時間にわたる高負荷処理にも耐える性能が期待できる。
また、TACHYONシリーズが提供する冷却性能とCAMM2の省スペース設計が組み合わさることで、システム全体の温度管理が改善され、さらなるオーバークロック性能の引き出しに貢献するだろう。GIGABYTEのICEモデルの登場は、今後のデスクトップPC市場におけるCAMM2の普及において一つの試金石となり得る。
CAMM2とCUDIMM、デスクトップにおける競争の行方
CAMM2はその新しい設計によって注目を集めているが、CUDIMMとの競争が激化している。CUDIMMは、メモリクロックを制御するための専用クロックドライバを内蔵しており、従来のDIMMモジュールに比べて高いクロック性能を実現する。そのため、CAMM2が持つ「高クロック対応」という利点がCUDIMMの登場によって薄れたとの指摘もある。
しかし、CAMM2はCUDIMMにはない構造上の利点を持っている。特に、ネジ留め式の固定方式は、物理的な接触不良を防ぎ、長期間にわたる安定動作を保証する。また、今後JEDEC規格に基づく新たなバージョンのCAMM2が登場すれば、CUDIMMとの差別化がさらに進む可能性がある。エンスージアスト層からの支持を受けているTACHYONシリーズのようなモデルが普及することで、CAMM2の地位が確立されるかどうかが今後の焦点となる。
デスクトップとノートPCでのCAMM2採用動向と将来展望
CAMM2はその省スペース設計から、ノートPC市場での普及が見込まれているが、デスクトップ市場への導入も徐々に進行している。MSIの「Z790 Project Zero Plus」など、一部のメーカーはすでにCAMM2を搭載したモデルを発表しており、今後GIGABYTEのような大手メーカーが追随する可能性がある。
デスクトップ環境では、スペースの制約がノートPCほど厳しくないため、CAMM2が即座に主流になるとは限らない。しかし、将来的には、メモリ規格の統一化や冷却性能の向上に伴い、CAMM2の採用が標準化される可能性がある。特に、省スペースが求められる小型PCや高性能なオーバークロック対応モデルにおいて、CAMM2の有用性が示されるだろう。最終的には、OEM各社が新規格のメリットをどれだけ活用できるかが、普及の鍵を握ることになる。