System76は、128コアのARMベースプロセッサ「Ampere Altra」を搭載したデスクトップPC「Thelio Astra」を発表した。主に自動車ソフトウェア開発向けに設計されており、Linuxをベースとした開発環境を提供する。従来のx86アーキテクチャとは異なり、ARMベースのワークステーションを採用することで、ソフトウェアの開発とテストがネイティブ環境で行えるため、エミュレーションに頼る必要がなくなる。Thelio Astraは11月12日に発売予定で、価格は3,299ドルからとなっている。
System76初のARM搭載デスクトップ「Thelio Astra」とは
System76は、これまでLinux専用のデスクトップやノートPCを提供してきたが、今回初めてARMベースのデスクトップワークステーション「Thelio Astra」を発表した。このPCは、128コアの「Ampere Altra」プロセッサを搭載しており、従来のIntelやAMDのx86アーキテクチャを使用したプロセッサとは一線を画す設計である。最大512GBのDDR4メモリやNVIDIA RTX 6000 Ada GPU、さらに8GBのNVMeストレージを搭載できるため、圧倒的な性能を誇る。
Thelio Astraは、従来のARMデバイスと異なり、CPUとGPUを一体化したシステムではなく、専用のGPUを備えることが特徴である。このため、ハードウェアのモジュール性や拡張性を維持しつつ、ARMアーキテクチャの優位性を最大限に活かすことができる。AppleのMac StudioやMac Proが同じくARMベースのプロセッサを採用しているが、これらはmacOSを使用しており、Linux環境を好む開発者にとってはThelio Astraの方が適していると言える。
自動車ソフトウェア開発に最適化された性能
Thelio Astraの最大の特徴は、主に自動車ソフトウェア開発向けに設計されている点である。多くの自動車メーカーは、ARMベースのシステムを採用しているが、これに対応する開発環境が整っていないケースが多い。Thelio Astraでは、ネイティブなARM環境でソフトウェアの開発およびテストが可能となり、エミュレーションを使用する必要がないため、効率的な作業が実現できる。
特に、ARM向けのコードはクロスコンパイルを必要とせず、直接的なコンパイルが可能であるため、開発時間の短縮が期待できる。これは、特に大規模なプロジェクトにおいて大きな利点となる。また、Linuxベースの環境を使用することで、開発者は従来から慣れ親しんだツールやワークフローを活用しつつ、ARMの性能を最大限に引き出すことができる。これにより、自動車業界におけるソフトウェアの開発とテストのプロセスが大きく変革されるだろう。
ARMプロセッサがもたらす未来の可能性
Thelio Astraは、ARMプロセッサを搭載したデスクトップPCとして、その将来性を示す重要な製品である。現在、ARMベースのPCは少数派であり、その多くはシステムオンチップ(SoC)設計を採用しているため、モジュール性や拡張性に限界がある。しかし、Thelio Astraは専用GPUを搭載することにより、デスクトップPCとしての柔軟性を維持しつつ、ARMアーキテクチャのメリットを享受することが可能である。
このような設計は、今後ARMプロセッサがx86アーキテクチャに代わる技術として広く採用される可能性を示唆している。特に、AppleのMシリーズチップが成功を収めたことで、ARMベースのコンピューティングが注目されているが、System76のThelio Astraは、それをLinuxベースで実現する最初の一歩であると言える。将来的には、さまざまな分野でARMがx86に代わる存在として台頭していく可能性がある。
発売日と価格の詳細
Thelio Astraは、2024年11月12日に発売される予定である。基本価格は3,299ドルからスタートし、オプションによってさらに価格が上昇する。特に、最大512GBのメモリや高性能なNVIDIA RTX 6000 Ada GPUなど、ハイエンドな構成にカスタマイズする場合、価格は大幅に上がる可能性がある。System76の公式サイトでは、詳細な仕様や構成を選んで購入することができる。
また、Thelio AstraにはSystem76の独自LinuxディストリビューションであるPop!_OSではなく、Ubuntu Linuxがプリインストールされる点も興味深い。Pop!_OSはまだARMに対応していないため、Ubuntuが採用されているが、将来的にはPop!_OSのARM対応版が登場する可能性も示唆されている。