NVIDIAの新世代GPU「GeForce RTX 5090」が、DeepSeekのR1 AIモデルにおいて驚異的な推論性能を発揮し、AMDの「Radeon RX 7900 XTX」を大幅に凌駕する結果を示した。新たな第5世代Tensorコアの技術が、この圧倒的な性能向上に寄与しているとされる。
DeepSeek R1は、最新の大規模言語モデル(LLM)の一つであり、ローカル環境でのAI推論処理の高速化を目指すユーザーにとって重要な指標となる。
今回のベンチマークテストでは、GeForce RTX 5090が「Distill Qwen 7b」や「Distill Llama 8b」といったモデルにおいて1秒あたり最大200トークンを処理し、Radeon RX 7900 XTXの約2倍の性能を発揮した。特に、AI推論を多用するアプリケーションや開発環境において、NVIDIAの優位性が際立つ結果となった。
また、NVIDIAはDeepSeek R1の利用をより簡単にするために「NVIDIA NIMマイクロサービス」を提供。開発者向けには、6710億パラメータを持つDeepSeek-R1モデルのプレビュー版が公開されており、ローカル環境でのAI活用がこれまで以上に容易になる可能性がある。
これにより、高性能なAI処理がクラウド依存なしで実行可能になり、セキュリティやデータプライバシーの観点からも利便性が向上すると考えられる。
今後、「RTX on AI」技術の進化とともに、NVIDIAのAI推論能力はさらに強化される可能性が高い。ローカル環境でのAI推論を求めるユーザーにとって、GeForce RTX 5090は有力な選択肢となるだろう。
NVIDIA GeForce RTX 5090の推論性能を支える第5世代Tensorコアの技術革新

GeForce RTX 5090の圧倒的な推論性能の背景には、第5世代Tensorコアの技術革新がある。従来のAmpere世代やAda Lovelace世代と比較して、RTX 5090に搭載されたBlackwellアーキテクチャでは、AI推論に最適化された新しい処理構造が採用されている。
特に、Tensorコアのスループット向上が鍵となる。従来の世代では、混合精度演算やスパース行列演算によってAI処理の高速化が図られていたが、第5世代ではさらに最適化され、より低い消費電力で高いパフォーマンスを発揮する設計となっている。
加えて、新しいメモリ圧縮技術により、GPUメモリの帯域幅をより効率的に活用できるようになった。この改良が、DeepSeek R1のようなLLMの推論処理で1秒あたりのトークン処理数を飛躍的に向上させる要因となっている。
また、RTX 5090では、AI向けの「ダイナミック電力管理機能」が強化されており、推論負荷に応じて動的に電力配分を最適化することが可能になった。これにより、高負荷時でも安定した推論性能を維持できるだけでなく、低負荷時の省電力化も実現される。NVIDIAはこうした技術を通じて、エッジAIやローカル環境での推論処理をより快適に行えるようにしている。
この技術革新によって、RTX 5090は単なるゲーミングGPUにとどまらず、高速なAI処理を求める開発者やクリエイターにとっても魅力的な選択肢となっている。今後、AIアクセラレーション技術のさらなる進化により、GPUの活用範囲が一層広がることが期待される。
DeepSeek R1モデルが示すAI推論環境の進化と課題
DeepSeek R1モデルの成功は、ローカル環境でのAI推論の実用性が大きく向上していることを示している。しかし、一方で、GPU性能の向上が求められる場面も増えている。今回のベンチマーク結果を見る限り、RTX 5090の処理能力は目覚ましいが、これは最新のハードウェアを持つユーザーに限られる点も考慮しなければならない。
特に、大規模言語モデルの推論では、メモリ容量と帯域幅がボトルネックとなることが多い。DeepSeek R1のようなモデルは、パラメータ数が膨大であり、より多くのVRAMを必要とする。
RTX 5090はこの要求に十分応えられる設計となっているが、前世代のRTX 4090やAMDのRX 7900 XTXでは限界が見えてきている。つまり、AI推論の進化とともに、ハードウェアの世代交代がさらに加速する可能性がある。
また、AIモデルをローカル環境で動作させるためには、ソフトウェアの最適化も不可欠だ。NVIDIAは「NVIDIA NIMマイクロサービス」を通じて、よりシンプルにAIモデルを実行できる環境を提供しているが、これがどの程度普及するかは今後の開発者コミュニティの動向次第である。
DeepSeek R1のようなモデルを扱う場合、単にGPU性能が高いだけではなく、最適なソフトウェア環境を整えることが重要になる。
現在のAI推論環境の進化は目覚ましいが、それに伴いハードウェア要件も高まっている。RTX 5090の成功は、NVIDIAの技術力の高さを示しているが、これが一般ユーザーにどれだけ浸透するかは、今後の市場動向に左右されるだろう。
ローカルAI推論の未来 NVIDIAとAMDの競争がもたらす新たな選択肢
今回のベンチマーク結果は、NVIDIAがローカルAI推論の分野でリードしていることを示しているが、AMDも対抗策を打ち出す可能性がある。特に、AI推論向けの新たなアーキテクチャを開発し、次世代の「RDNA 4」や「MI300シリーズ」で巻き返しを狙う可能性がある。
AMDは、オープンソースのAIエコシステムへの貢献を強化しており、特にROCm(Radeon Open Compute)を活用したAIワークロード最適化に力を入れている。この流れが続けば、NVIDIAのCUDAに依存しない選択肢が増え、AI推論のハードウェア市場はより競争が激しくなるだろう。
一方で、NVIDIAは「RTX on AI」というコンセプトのもと、コンシューマー向けGPUでもAI処理を簡単に実行できる環境を整えつつある。RTX 5090の高い推論性能は、その一環としての成果といえるが、今後はAI専用チップとの競争も激化する可能性がある。特に、AppleのMシリーズチップやGoogleのTPUなど、専用AIハードウェアが増える中で、汎用GPUの優位性がどこまで続くのかも注目されるポイントだ。
このように、AI推論環境はNVIDIAとAMDの競争だけでなく、専用AIチップを含めた複数の勢力が絡み合う複雑な状況へと発展している。RTX 5090の成功が示すのは、AI推論の未来がGPUの進化とともに急速に変化していることだ。今後の技術革新によって、より多くのユーザーがローカル環境で高性能なAI処理を実行できる時代が来る可能性がある。
Source:Wccftech