MicrosoftがWindows 11のPaintアプリに新たな画像編集機能「Generative Erase(生成消去)」を追加した。これはAIを活用し、選択したオブジェクトを自然に削除し、周囲に馴染むように補完するツールである。従来、このような機能はPhotoshopや専用アプリが必要だったが、Paint単体で手軽に利用できるのが特徴だ。

この機能はWindows 11のすべてのユーザーが使用可能で、インターネット接続も不要。Microsoft Photosアプリで先行提供されていたが、Paintにも導入されたことで、より多くのユーザーが簡単に写真編集を楽しめるようになった。

実際に試した結果、単純な背景では優れた消去性能を発揮するが、複雑なオブジェクトの削除では違和感が生じる場合があった。今後の改善に期待しつつも、無料の標準アプリでAI編集を体験できるのは大きな利点といえる。

PaintのGenerative Eraseはどのように動作するのか 仕組みを詳しく解説

Generative Eraseは、選択した部分を削除しながら周囲のピクセルを分析し、違和感のない形で自動補完するAI画像編集技術である。この機能はローカルのスモール・ランゲージ・モデル(SLM)を利用し、インターネット接続なしで動作する。

処理の流れはシンプルだ。まず、ユーザーが削除したい領域を選択する。次に、Generative Eraseが周囲のテクスチャやパターンを参照し、不自然にならないよう新たなピクセルを生成する。最終的に、元の画像に馴染む形で修正が適用される仕組みとなっている。

一般的な背景削除機能とは異なり、Generative Eraseは「消した後の見栄え」まで考慮されている。そのため、背景がシンプルな場合は非常に精度の高い結果を生み出すが、複雑なオブジェクトや重なり合う要素がある場合には不自然な補完が発生しやすい。特に、人物の服や細かい模様の入った背景では、補完処理がうまくいかず、不明瞭な仕上がりになることがある。

また、Generative Eraseのアルゴリズムは、Photoshopの「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能と似た仕組みを持っている。ただし、Photoshopでは細かい調整が可能なのに対し、Paintの機能は完全自動のため、結果が思い通りにならない場合もある。ユーザーにとっては、どのようなシチュエーションで効果的に使えるのかを試しながら理解していくことが重要になる。

実際に使ってみた感想と改善が期待されるポイント

実際にPaintのGenerative Eraseを使用すると、簡単な背景やシンプルなオブジェクトの削除には非常に便利であることが分かった。特に、単色の背景や明確な境界を持つオブジェクトであれば、ほぼ完璧に近い仕上がりが得られる。

一方で、テストでは複雑なシーンにおいていくつかの問題点も浮かび上がった。例えば、登山者のハーネスを消去する際、背景に入り組んだ要素が多いため、うまく馴染ませることができなかった。また、スケートボーダーの削除テストでは、スケートボードを消した後の床のタイル模様がぼやけてしまい、違和感のある結果となった。

これらの結果から、Generative Eraseは「単純な背景での削除には強いが、複雑なシーンでは再現性に課題がある」と言える。Microsoftが今後この機能を改良し、補完精度を向上させることで、より幅広い用途に対応できる可能性がある。たとえば、ユーザーが補完パターンを選択できる機能や、削除範囲を細かく調整できるオプションが加われば、より実用的なツールへと進化するだろう。

それでも、無料のPaintアプリでこれだけのAI機能を利用できるのは大きな魅力だ。オンラインサービスに画像をアップロードすることなく、オフライン環境でも簡単に編集できる点は、プライバシーの観点からもメリットが大きい。今後のアップデートによる進化に期待が高まる。

他の無料ツールと比較してPaintのGenerative Eraseを選ぶ理由

画像編集ソフトには、無料で使えるAI消去ツールがいくつか存在する。たとえば、FotorやCleanup.picturesなどのオンラインサービスは、画像の不要部分を消す機能を提供している。これらのツールは強力なAI処理を活用できるが、インターネット環境が必要であり、プライバシー面での懸念が残る。

一方、Windows 11のPaintに搭載されたGenerative Eraseは、完全にオフラインで動作する。このため、ネットワークに接続しなくても利用可能であり、個人情報を外部サーバーに送る必要がない。特に、企業や個人でプライバシーを重視するユーザーにとっては、安全性の高い選択肢となる。

また、Photoshopの「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能と比べると、PaintのGenerative Eraseは手軽に利用できる点が大きな利点だ。Photoshopは高度な編集機能を備えているものの、有料ソフトであり、初心者には操作が難しい。これに対し、Paintはシンプルな操作で直感的に使えるため、特別なスキルがなくてもすぐに編集を開始できる。

このように、PaintのGenerative Eraseは完全無料かつオフライン動作が可能で、初心者でも扱いやすいという点で他のツールと差別化される。編集精度ではまだ改良の余地があるものの、標準アプリとしてAI画像編集の入門ツールとしての価値は十分に高い。今後のアップデートによってどこまで改善されるかが注目される。

Source:YTECHB