リモートアクセスソフトウェアのTeamViewerにおいて、Windows向けクライアントのバージョン15.62未満に重大なセキュリティ脆弱性(CVE-2025-0065)が発見された。
この脆弱性により、ローカルアクセスを持つ攻撃者がシステムレベルの権限を取得し、機密情報の漏洩やシステムの制御奪取といった深刻な影響を及ぼす可能性がある。ユーザーは直ちにソフトウェアを最新バージョンに更新し、適切なセキュリティ対策を講じることが推奨される。
この脆弱性は、TeamViewer_service.exeコンポーネントにおける引数デリミタの不適切な無害化(CWE-88)に起因する。攻撃者は、特権のないローカルアクセスを利用して、細工した引数をサービスに注入し、システムレベルの権限でコマンドを実行できる。これにより、システムの機密性、完全性、可用性が損なわれる恐れがある。
この問題は、Trend MicroのZero Day Initiativeと協力する匿名の研究者によって発見された。TeamViewerは、バージョン15.62でこの脆弱性を修正するパッチをリリースしており、ユーザーに対して直ちにソフトウェアを更新するよう強く推奨している。
CVE-2025-0065は、CVSS v3.1スコア7.8の高リスク脆弱性であり、悪用にはターゲットシステムへのローカルアクセスが必要だが、ユーザーの操作を必要としないため、比較的簡単に実行可能である。成功すれば、機密情報の漏洩、データの改ざん、システムの制御奪取といった深刻な影響をもたらす。
ユーザーは、公式TeamViewerウェブサイトから最新バージョンをダウンロードするか、組み込みのアップデート機能を使用して更新することが推奨される。また、TeamViewerを実行しているシステムへの物理的およびリモートアクセスを制限し、ファイアウォールを設定して不正な通信を制限するなど、セキュリティベストプラクティスの実施も重要である。
定期的なシステムの監視と監査、ログの確認、疑わしいアクティビティの監視、セキュリティ監査の実施も推奨される。CVE-2025-0065は、ソフトウェアの最新状態を維持し、適切なセキュリティ対策を実施する重要性を示している。ユーザーは、TeamViewerを最新版に更新し、システムのセキュリティを積極的に監視することで、攻撃のリスクを軽減できる。
TeamViewerの脆弱性CVE-2025-0065の技術的背景と影響範囲
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今回発見されたCVE-2025-0065は、TeamViewer_service.exeの引数デリタの不適切な無害化に起因する問題であり、CWE-88(引数インジェクション)に分類されている。この脆弱性は、悪意のある引数を適切に処理できないことが原因であり、攻撃者はこれを利用してシステムレベルの権限を取得できる。
この問題の核心は、TeamViewerがサービスとして実行される際に、特権を持つプロセスがどのように引数を処理するかにある。通常、引数の適切なエスケープ処理やサニタイズが行われていれば、不正な入力を排除できる。しかし、今回の脆弱性では、TeamViewer_service.exeが不適切に引数を解釈し、攻撃者が特定のコマンドを特権レベルで実行できる状態となっていた。
影響範囲はWindows版のTeamViewer Full ClientおよびHostのバージョン15.62未満に及び、ローカルアクセスを持つ攻撃者によって悪用される可能性がある。特に、組織のIT管理者が遠隔操作に利用する環境では、TeamViewerがサーバーや業務システムへのアクセス手段として使用されている場合も多いため、この脆弱性が悪用されれば業務に深刻な影響を与える可能性がある。
なぜユーザーの操作なしで攻撃が成立するのか
CVE-2025-0065の特徴として注目すべき点は、攻撃者がユーザーの操作なしで権限昇格を実行できることにある。一般的なマルウェア攻撃では、ユーザーに対して不審なリンクをクリックさせたり、悪意のあるファイルを開かせる手口が多い。しかし、この脆弱性はユーザーのアクションを必要とせず、ローカル環境にアクセスできる攻撃者が直接権限昇格を行えることが大きな問題となる。
このような脆弱性は「ローカル特権昇格(LPE: Local Privilege Escalation)」と呼ばれ、システム管理者レベルのアクセス権を獲得する手段として広く利用される。特に、社内ネットワークに物理的またはリモートでアクセスできる攻撃者がいれば、まず低い権限のアカウントで侵入し、その後この脆弱性を利用してシステムレベルの完全な制御を得ることができる。
さらに、TeamViewerは企業や個人ユーザーに広く利用されているため、管理者権限を奪取されることで、別のシステムやネットワーク全体に攻撃が波及する可能性がある。企業では、ひとつの端末の脆弱性が組織全体のセキュリティを危険にさらすリスクがあるため、ただちに対応が求められる。
TeamViewerのセキュリティ課題と今後の対策
今回の脆弱性は、リモートアクセスソフトウェアが持つセキュリティ上の課題を改めて浮き彫りにした。TeamViewerは利便性の高いリモート操作ソフトとして人気があるが、過去にもさまざまな脆弱性が報告されている。特に、認証機構の不備や、暗号化通信に関する問題が指摘されたこともあり、サイバー攻撃の標的になりやすいアプリケーションのひとつといえる。
今回の問題は、引数の無害化処理に関するものであり、今後のセキュリティアップデートでは、より厳密な入力検証が求められる。また、ゼロトラストの原則に基づくアクセス管理を強化し、リモートアクセスソフトを利用する環境では、最小権限の原則を適用することが重要となる。
TeamViewerを使用するすべてのユーザーは、脆弱性の影響を最小限に抑えるために、定期的なソフトウェア更新、強力な認証設定の導入、ネットワーク内のアクセス管理の強化を徹底すべきである。特に企業のIT管理者は、リモートアクセス環境のセキュリティポリシーを見直し、侵害の可能性を最小限に抑える対策を講じる必要がある。
CVE-2025-0065のような脆弱性は、今後も発生する可能性がある。ユーザーは常に最新の情報をチェックし、ソフトウェアを適切に管理することが、サイバー攻撃から身を守る最善の方法である。
Source:Cyber Security News