Microsoftは、Windows 11のアップグレードに厳しいハードウェア要件を設け、多くのPCで新OSへの移行をブロックしている。しかし、この制限を回避するツール「Rufus」が再び注目されている。最新バージョンのRufus 4.6は、互換性チェックを自動的に回避し、古いPCでもWindows 11へのアップグレードを可能にする。この動きにより、Microsoftとユーザーコミュニティとの間で再び攻防が繰り広げられることが予想される。
Microsoftのハードウェア制限の強化
Windows 11のリリース時、Microsoftは新しいオペレーティングシステムに厳格なハードウェア要件を導入した。特に、2018年以前のプロセッサを搭載したPCに対しては、アップグレードがブロックされることが一般的である。この要件は、セキュリティ向上やパフォーマンスの最適化を理由にしているが、多くのユーザーがこの制限に不満を抱いている。
Windows 10が稼働しているPCでさえ、Windows 11のハードウェア基準を満たさないことがあるため、新しいPCの購入を促すかのような制約となっている。特に、TPM(Trusted Platform Module)2.0の要求や、SSE4.2やPOPCNT命令セットに対応していない古いCPUに対してはアップグレードが不可能である。この制限により、多くのPCユーザーが自身のデバイスの寿命が人工的に短縮されたと感じている。
Microsoftは定期的に互換性チェックの基準を見直し、さらに厳しい基準を導入することがある。その一例として、最近のWindows 11のバージョン24H2のアップデートでは、以前に使用されていた一部の回避方法が無効化された。このように、同社はアップグレードのルールを固めつつ、ユーザーに対して常に新しいPCを求める姿勢を示している。
Rufusツールによる互換性チェックの回避
しかし、ユーザーコミュニティはこうした制限に対して独自の対策を講じている。特に人気のあるツールが「Rufus」である。オープンソースのこのツールは、Windows 11のハードウェア互換性チェックを回避し、古いPCでも問題なくインストールできるインストールメディアを作成する機能を持っている。
Rufusは、2021年のWindows 11リリース当初から利用されており、互換性チェックをバイパスする手段として広く知られている。Windows 11のセットアップに含まれる「Appraiserres.dll」ファイルを0バイトのファイルに置き換えることで、互換性チェックを無効化する技術を採用している。
最近のアップデートで、Microsoftはこの手法に対しても制約を強化したが、Rufusの開発者はこれにすぐに対応した。新しいバージョンのRufus 4.6では、さらに高度な技術が導入され、Microsoftの新たな制限を回避できるようになっている。このような動きにより、ユーザーは引き続き古いPCで最新のOSを利用することが可能である。
新バージョンRufus 4.6の仕組みと懸念点
Rufus 4.6の最大の新機能は、Microsoftが強化した24H2バージョンの制限を回避する方法である。具体的には、Windowsの公式セットアッププログラムである「Setup.exe」を「Setup.dll」にリネームし、新たに作成された「Setup.exe」を使用する。この新しいファイルは、セットアップをラップする役割を果たし、互換性チェックを回避するために必要なレジストリ変更を自動的に行う。
しかし、このプロセスには潜在的なリスクもある。Rufusは、GitHubで公開されているコードを使っているが、ファイルの置き換えやレジストリの自動編集は一部のユーザーにとって不安材料となる可能性がある。特に、ファイルが改ざんされていないかどうかの確認が必要な点や、マルウェアの感染リスクが完全に排除できない点が懸念されている。
開発者であるPete Batardは、RufusがあくまでMicrosoftが公式に提供しているバイパス方法を使用していると強調している。このため、バイパスが将来的に無効化される可能性は低く、安全性が担保されているとしている。しかしながら、一部のユーザーはこのアプローチに対して慎重な姿勢を示している。
古いPCでもWindows 11を実行可能に
Rufus 4.6の登場により、古いPCでも再びWindows 11のインストールが可能となった。これにより、Microsoftのハードウェア要件を満たさないPCを所有しているユーザーは、引き続きWindows 11を利用できる選択肢を得たことになる。
実際に、多くのユーザーがこの新バージョンのRufusを使用して、成功裏にWindows 11の24H2バージョンへのアップグレードを完了させている。一部のユーザーからは、古いプロセッサやTPMがないPCでも、アップグレードが問題なく進行したという報告が寄せられている。
ただし、全てのPCがアップグレード可能というわけではない。特に、Intelの古いCore2 DuoやAMD A6シリーズなど、SSE4.2やPOPCNT命令に対応していないCPUでは、依然として互換性の問題が残っている。また、非常に古いハードウェアや特殊な構成のデバイスについては、この回避策でも解決できないケースがある。
それでも、大半のWindows 10を実行しているPCであれば、Rufusを使用してWindows 11にアップグレードすることができる。Microsoftが今後どのように対応するのか、ユーザーコミュニティの注目が集まっている。