AMDは、AM4プラットフォーム向けに新たなAPU「Ryzen 5005G」シリーズを発表した。Zen 3アーキテクチャを採用し、Ryzen 7、Ryzen 5、Ryzen 3の3モデルにそれぞれ2種類のSKUを展開。TDP 65WのGバリアントと、35Wの省電力GEバリアントが用意され、エントリー向けPC市場に適した構成となる。

新シリーズは既存のRyzen 5700G、5600G、5300Gとほぼ同等のスペックを持ちながら、価格競争力を高める可能性がある。統合GPUはVegaを採用し、ゲーミング性能は限定的だが、A520やB450などの普及価格帯マザーボードと組み合わせることで、低コストPCの選択肢として有力となるだろう。

発売日や価格は未発表だが、すでにRyzen 8000Gシリーズが市場に投入されていることを考慮すると、Ryzen 5005Gシリーズは在庫活用を目的とした戦略的なラインナップとなる可能性が高い。特に低価格帯のシステムを構築したいユーザーにとって、注目すべき選択肢となるだろう。

AMDがAM4向けに6つの新APUを追加 Ryzen 5005Gシリーズのスペックと特徴

AMDは、Zen 3アーキテクチャを採用したRyzen 5005Gシリーズを発表し、AM4プラットフォーム向けのCPUラインナップを拡充した。今回追加されたのは、Ryzen 7 5705G、Ryzen 5 5605G、Ryzen 3 5305Gの3モデルと、それぞれの省電力バージョンであるGEバリアントを含む計6つのSKUとなる。これらは既存のRyzen 5700G、5600G、5300Gと同様の構成を持ち、TDPは65Wと35Wの2種類が用意されている。

各APUのコア数とスレッド数は、Ryzen 7が8コア16スレッド、Ryzen 5が6コア12スレッド、Ryzen 3が4コア8スレッドという構成だ。統合GPUにはVegaアーキテクチャを採用し、Ryzen 7はVega 8、Ryzen 5はVega 7、Ryzen 3はVega 6を搭載する。

GEバリアントは省電力仕様のためベースクロックがやや低めに設定されているが、ブーストクロックはGバリアントと同一で、パフォーマンスを維持しながら消費電力を抑えた設計となっている。

これらのAPUは、グラフィックカードを搭載しないエントリー向けのデスクトップPCに適しており、基本的なPC作業や軽量なアプリケーションには十分な性能を発揮する。しかし、統合GPUの性能は最新のエントリークラスGPUには及ばず、AAAタイトルの快適なプレイには向かない。一方で、AM4マザーボードが依然として市場に多く流通しているため、低コストで構築できる点は大きなメリットといえる。

Ryzen 5005Gシリーズの投入はAM4プラットフォームの延命措置なのか

AM4プラットフォームは2017年に登場して以来、Ryzen 1000シリーズからRyzen 5000シリーズまで長期間にわたり活用されてきた。しかし、すでにAMDは次世代プラットフォームであるAM5を展開し、Ryzen 7000シリーズや8000Gシリーズが市場に投入されている。そんな中で、AMDが再びAM4向けに新たなAPUを追加したことは意外な動きといえる。

その背景には、AMDが依然としてZen 3のシリコン在庫を抱えていることが考えられる。新たな製造コストを抑えつつ、既存の資産を活用できる点はメーカーにとって大きな利点となる。また、AM4マザーボードが今も広く流通しており、アップグレード需要が一定数存在することも要因の一つだ。

特に、B450やB550などの普及価格帯のマザーボードを利用しているユーザーにとっては、手頃な価格でパフォーマンス向上を図る選択肢となる可能性がある。

ただし、Ryzen 5005Gシリーズは新しい技術を採用したものではなく、既存モデルとほぼ同等のスペックである点は注意が必要だ。大幅な性能向上を期待するユーザーにとっては物足りなさを感じるかもしれない。一方で、グラフィックカードを必要としないエントリー向けのデスクトップPCや、省電力仕様のホームオフィス用PCには適した選択肢となるだろう。

ゲーム用途には不向き それでも低予算PCには最適な選択肢

Ryzen 5005Gシリーズの統合GPUはVegaアーキテクチャを採用しており、エントリー向けのグラフィック性能を提供する。しかし、現在のエントリークラスGPUであるRadeon RX 6400やIntel Arc A380と比較すると性能面では大きく劣る。例えば、最新の3DゲームをフルHD解像度で快適にプレイするのは難しく、多くのタイトルでは設定を大幅に落とす必要がある。

ただし、統合GPUでも軽量なゲームやeスポーツタイトルであれば十分に動作する。たとえば、League of LegendsやCounter-Strike 2、Minecraftなどのゲームは、設定次第でプレイ可能なフレームレートを確保できるだろう。また、動画再生やクリエイティブ用途では一定のパフォーマンスを発揮し、動画編集ソフトの軽量な作業であればスムーズに動作する可能性がある。

Ryzen 5005Gシリーズの強みは、AM4マザーボードを利用することで低コストなシステム構築が可能な点にある。特にA520チップセットを搭載したマザーボードは現在も手頃な価格で流通しており、メモリやストレージと組み合わせれば、500ドル以下のPCを構築することも可能だ。コストパフォーマンスを重視するユーザーにとっては、依然として魅力的な選択肢といえるだろう。

Source:Wccftech